[官能小説レビュー]

『耳の端まで赤くして』から読み解く、女子校=官能的な場所として描かれる理由

2015/09/28 19:30
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『耳の端まで赤くして』(幻冬舎)

■今回の作品
『耳の端まで赤くして』(館淳一、幻冬舎)

 今も昔も、官能小説の舞台に取り上げられやすいのが女子校である。筆者も高校時代は女子校に在学していたことから、女子校と官能が直結することは容易に想像できる。

 女子だけの秘密の園である校内には、在学生だけにしか理解しあえない“不可思議な関係性”が存在していた。バレンタインや誕生日に、名物のモテる先輩にチョコレートを送るのはよくある方で、実は「2人はレズビアンでは?」と感じさせる生徒が多くいた。

 例えば筆者の学校には、お互いに男性の恋人がいるにもかかわらず、校内では恋人同士のように振る舞う同級生がいた。彼女たちは共に昼食を食べ、手をつなぎ、図書館ではぴったりと体を密着させて何かを囁き合っていた。キスをしていた、休日に郊外のラブホテルから出てきた、なんていううわさが立ったこともある。また、女子校では、生徒と男性教員との関係がうわさされることはしょっちゅうだが、女性教員とのうわさもちらほら流れることがあった。

 これらは全てうわさで、校内で都市伝説化していた部分もあるが、まだ10代と若く、恋愛対象が曖昧だった頃を振り返ると、あながちうわさだけでもなかったのかもしれないと思う。そして不思議なのが、こうしたうわさが立つ女生徒の大半は、美少女だったのだ。

 今回ご紹介する『耳の端まで赤くして』(幻冬舎)に登場する主人公・絵梨子は、お嬢様女子校に通うまっすぐな黒髪がトレードマークの美少女だ。
 
美しい絵梨子は、さまざまな人物から性の標的にされる。親友のユカとは抱き合ったりキスをしたり、お互いの性器に触れ合ったりする仲。夜になると、毎晩のように兄がベッドに潜り込んできて、寝たふりをしている絵里子の体を撫で回し、彼女の体を「検査」するのだ。

 絵梨子を狙う者はほかにもいる。校内でユカといちゃついていた絵里子は、保健室の先生である美雪先生に呼び出されて「お仕置き」を受ける。また男性教員、学園のマドンナなど、老若男女が入り乱れながら、絵梨子にセックス直前の行為をしたり、「我慢」という名目のプレイを繰り広げている。

 美少女・を主軸に、レズビアンや近親相姦などのシチュエーションてんこ盛りな物語。一見、定番スタイルの官能小説であるが、読み進めるたびに深く魅了されてしまうのは、人それぞれの性的指向とは別に、私たち女が一度は通ってきた若さゆえの「曖昧な性の境界線」を垣間見るからではないだろうか。特に女性は、無意識のうちに柔らかくて可愛いものに惹かれてしまう。だからこそ、男性よりも簡単に性別の境界線を飛び越えることができるのかもしれないと思うのだ。

『耳の端まで赤くして(幻冬舎アウトロー文庫)』
傍観者からすると女子校の結束感も眩しい
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