女性器は卑猥なものなのか。これからの「まんこ」の話をしよう

テレビ番組で「まんこ」と発言したタレントが降板させられますが、「ちんこ」は、露出してもそれほど問題視されません。「ちんこ!」で騒ぐ子供は見かけても、「まんこ!」と叫ぶ子供はあまり見かけないように思います。messyで行った調査によれば、子供の頃に「まんこ」の存在を知らなかったという人もいたどころか、「まんこ」を「ちんこ」と呼んでいた人までいました。そして自身のまんこを3Dスキャンし配布した美術家のろくでなし子さんの逮捕は、「ちんこ」や「まんこ」の模型が溢れる中で、なぜ彼女の作品であるまんこの模型データがNGだったのかという問いを発しました。

社会には、「まんこ」と「ちんこ」の非対称な関係があります。なぜ「まんこ」がタブー視されるのか。語るのに躊躇しがちな「まんこ」の話を、現代美術家の柴田英里さんと文筆家の牧村朝子さんに思う存分お話いただきました。これからの「まんこ」の話をしよう!

◎わかりやすい「ちんこ」とわかりにくい「まんこ」

牧村 いまインターネットでは女性器のことを「まんこ」とか「ま~ん(笑)」とか女性の蔑称として呼ぶ人がいるでしょ? 自分の性器をなんて呼んでいるかを調べたmessy調査の回答では「(まんこのことを)なんて呼べばいいかわからなかった」「自分にはないものだと思っていた」と答えている方もいるのね。小さい頃、自分についている女性器を「ちんちん」と呼んでいた人も結構いる。それに、自身のまんこを3Dスキャンして、そのデータを支援者に配布したろくでなし子さんも逮捕されちゃいました。「いったい私についているコレって、なんなんだ!」って思うんです。思うんだけど、やっぱりまんこの話ってなかなかできないじゃないですか。躊躇なくそういうお話をするmessyだからこそ、まんこの話を柴田さんとしたいと思って、今回の対談を提案しました。

柴田 ありがとうございます。まんこのことを「なんて呼べばいいかわからなかった」って話ですけど、実は90年代に埼玉教育委員会が「性教育の際に『おちんちん』に対応する『まんこ』のあだ名が必要だ」ということで「女性器愛称審議会」を開いて、「まんこ」の公式愛称を決めてるんですよ。

牧村 えー、知らなかった! なんてあだ名になったんですか?

柴田 おぱんぽん。

牧村 おぱんぽん……。

柴田 「ワレメちゃん」とか「だいじだいじ」とかいろいろ候補はあったみたいなんですけど、最終的には「おぱんぽん」になったみたいです。

牧村 正直、定着してないですよね。

柴田 まんこの形状をみて、「おぱんぽん」って言葉は出てこないじゃないですか。

牧村 出てこない出てこない(笑)。由来は?

柴田 よくわからないんですよね。審議の途中までは「ワレメちゃん」優勢で、最終的に「おぱんぽん」に決定されたそうなのですが、どのような経緯で「おぱんぽん」が逆転したのか謎です。ただ審議会と同じくして、中島らもが朝日新聞の「明るい悩み相談室」という連載で、「おちんちんに対応する女性器の名前ってなに?」という相談に「おぱんぽん」って答えているんですよ。女性器愛称審議会と中島らものどちらが先なのかわからないんだけど。

牧村 らもさんが「おぱんぽん」って言っているのはイメージしやすいですね。真面目な顔して「よし、これからまんこはおぱんぽんって呼ぼう!」って会議しているのも面白いけど(笑)。真面目に議論したのに定着しなかったのは残念ですね。教育の現場では必要になりますよね。おしっこをした後の拭き方とか指導するときに。

下戸山 すみません、ちょっといいですか? messy編集部の下戸山です。私、いま4歳の娘を育てているんですけど、娘は「おちんちん」ってフレーズに大爆笑するんですよ。通園している保育園のクラスで「ちんちんぶらぶらソーセージ」って言葉が大流行したみたいで。

柴田 ちんちんとうんこは、小学校2年生くらいまで流行りますよね。

牧村 まんこは出てこないんですか?

下戸山 不思議と出てこないですね。

牧村 「まんこっていうのがあるんだよ~」って教えてもダメなんですかね。

下戸山 うちでは「ちんちん」に対抗して「おまんちゃん」って言っているんですけど、勝てないですね。楽しそうだけど大爆笑にはならない。

牧村 「おまんちゃん」が何なのかは説明したんですか?

下戸山 「ソレ、あなたがおしっこをするソコだよ」って言いました。おしっこの拭き方を教えるときとかは「おまた」。

牧村 あー、私も「おまた」って呼んでました。自分に女性器があることを知らなかったんですよね。親からは「男の子にはおちんちんがついているものよ。女の子はおまたって呼びなさいね」って言われていたので、おトイレするときに上から見える部分しか知らなかった。お尻の穴と尿道の間にもうひとつ穴があるなんて思いもしなかった。「おまた」だとどこを指してるのかわからないですよね。

柴田 ちんこより構造が複雑ですからね、人によって形も全然違いますし。子供が理解するのは難しい。

◎非実在まんこ問題

牧村 「まんこ」もどこからどこまでを指すのかよくわからないですよね。外陰部だけなのか、大陰唇や小陰唇、クリトリスは含まれているのか……大人の私たちですら、「まんこ」の意味範囲が人によって違うかもしれない。柴田さんはいつ自分にまんこがあるって気付きました?

柴田 小学生のときかなあ、たぶん保健体育の教科書で。

牧村 わ、すごく健全な感じがする(笑)。

柴田 私は4歳くらいまで自分のことを男だと思っていたから、ちんちんって呼んでたんですよ。

牧村 でもちんちんはないですよね?

柴田 「人より生えてくるのが遅いだけでいつかにょきにょき出てくるものだ」って思ってた。でも保育園に入ったときに親から「男のフリをしていたらいじめられるよ!」って言われて。

牧村 うーん。

柴田 保育園は年中から入ったので、他の子はみんなすでに友達なんですね。だから親も心配したんだと思います。それで男の子をやめて、次は「魔法使いサリー」ちゃんみたいなぶりっ子になりました(笑)。当時、手近に「女の子」のサンプルが、アニメしかなかったんですよ。

牧村 極端(笑)。

柴田 話を戻すと、「まんこ」という言葉は、保健の教科書を読む前から知ってました。でもそれが何を意味するのかはわかっていなかった。自分と女性器がなんだか結びついていなかったんですよね。

牧村 わかる!

柴田 小学校2年生くらいだと「ちんことまんこが合体してセックス!」みたいなことを言う、ませた子がいるじゃないですか。それがエロいことだって分かるから、一緒になって笑ってはいたけど、自分には関係ない、漫画とかそういう別の世界の話だって思ってた。

牧村 まんこの実在しなさ……「非実在まんこ」……。

柴田 この「まんこ」の非実在感が、まんこがタブー視されている一番の問題だと思うんですよね。ちんこと違って物体として認識されにくいし教育過程でもうやむやになっているから、「都市伝説」のように事実無根のことや、誇張された情報に惑わされやすい。「ジェムリンガによってまんこは浄化されます」とか「まんこはちんこよりもエロくて恥ずかしい性器です」とか、根拠がないことに対して、「よくわからないけど(よくわからないから)、そんなこともあるのかもしれないわね?」「よくわからないから、別にタブーのままで良いんじゃないの?」と思考停止してしまいやすいのかもしれません。

◎まんこのタブー視は、ちんこの秘密を暴かれないため?

柴田 アメリカだと「プッシー」ってワードが歌なんかで結構使われるけど、日本語で「おまんこ」って歌う歌手ってあんまりいないじゃないですか。「じゃあなんて歌っているんだろう」って考えてみたら、子宮や生理について歌ってることがわかったんです。ちょっと表を作ってきたのでホワイトボードに書きますね。

牧村 すごい(笑)。ちなみに子宮や生理について歌っている人ってどんな人?

柴田 (書きながら)生理だったら、戸川純の「玉姫様」が有名ですよね。最近だと日本マドンナという10代のガールズバンドが「生理」って曲を作ってPVでナプキンを投げていました。

牧村 そういえば椎名林檎も昔ライブでナプキンを投げたことがあるらしいですね。

柴田 書き終わりました。「まんこ」「子宮」「ちんこ」「睾丸」にわけて考えますね。原則として、女性は生殖に繋がらない快楽のためのセックスが禁じられています。そして「まんこ」はそこに通じている。「ヤリマン」って言葉があるくらいですからね。だから「まんこ」と言わせないようにしている。反対に「ちんこ」は紅白歌合戦でゴールデンボンバーが「ちんこ、ちんこ」連発しても問題にならないくらい許されている。

牧村 ふむふむ。

柴田 でもこの「ちんこ」って実は竿の部分だけを意味している気がするんです。睾丸、つまりキンタマは含まれていない。そしてキンタマは、1992年までゴールデンタイムまで放送禁止用語だったんです。でも「まんこ」のように、快楽のためのセックスが理由じゃないし、下品だからでもない。おそらくキンタマが「精子」に関係するからかもしれない。

牧村 どういうことですか?

柴田 竿の部分を指す「ちんこ」っていうのは、男権の象徴だと思うんですね。「とにかく体液をばらまけ!」みたいな(笑)。でも、無精子症だと「産めよ、殖やせよ」はできない。男権を壊すのは、あえてこういう言い方をしますが「種無しの精子」なんだと思うんです。妊娠に至らないということは、家父長制が存続できないということですから。キンタマを語らないのは、精子の状態を問わないことで、男権を神格化しようとしているってことなんじゃないかな、と。

牧村 すごい話になってきた……。

柴田 不妊の原因は女性だけとは限らず、男性に原因があることもあります。しかし、男性が不妊治療に行くことはまだまだ数が少なく、女性が治療を受けることが多いらしいんですね。妊娠できない女性は昔から「石女(うまずめ)」と呼ばれて差別されてきましたけど、その原因の一端には、男性は自分が「種無し」であることに対する不安があるように思えるんです。

牧村 快楽のためのセックスを行う「まんこ」は駄目。男権の象徴である「ちんこ」はオッケー。そしてちんこの神格性を破壊する可能性がある「睾丸」はNGになっている……?

柴田 そうそう。だから「ちんこ」を受け入れて子供を作る「子宮」は問題ないわけですよ。だから子宮は歌になる。生理も快楽と関係ないから問題ない。川上未映子の『乳と卵』(文藝春秋)も子宮・卵管・生理の話だけど、問題視されてないですよね。もしかしたらこれまでの日本のフェミニズムは子宮的なフェミニズムが中心的だったのかもしれないなあと思いました。あとは、「まんこ」だけが唯一、男権に対する女権として、「ちんこ」に対抗する権力になりえるんですよね。構造的に、デコとボコだから、まんこは、ちんこを測ることができるわけですよ。「ちんこにまんこで勝つぞ!」みたいな。個人的にはこうした考え方自体嫌いですが。そう考えてみると、まんこをタブーとすることは、要するに、「ちんこの秘密を暴かないでくれ!」ってことなんだと思うんですよね。

◎フランスでもちんこはカジュアル

牧村 「ちんこ」はオッケーで「まんこ」はNG問題がある。先日、テレビ局の方と放送禁止用語についてお話をしてきたときに「放送禁止用語って自主規制に過ぎない」と教えていただきました。各局で共通のルールがあるわけじゃないし、同じ局でも番組によって判断基準が違う可能性があるらしいんです。私がお話を聞いた局だと、どの言葉を放送禁止用語にするか話し合う担当の部署があるみたい。

柴田 基準は?

牧村 「人権」と「公序良俗」。

柴田 まんこは「公序良俗」でしょうね。

牧村 「いやいや、でもコレがないと、私はいないんだけど……それを公序良俗って(笑)」って思っちゃいますけどね。放送禁止用語リストもないから、出演者側が気をつける術もないね。

柴田 松本明子さんと西原理恵子さんは、テレビで「まんこ」と発言して番組を降板されていますよね。

牧村 うん、でも別に放送禁止用語が決められているわけじゃない。それに西原さんが降ろされたときって降板の理由ははっきりわかっていないですよね。「まんこが駄目だったらしいよ」くらい。

柴田 ちんこをテレビで出しちゃっても干されないのにね。

牧村 そうそう!

柴田 牧村さんがお住まいのフランスのテレビはどうですか?

牧村 そんなに長くフランスに住んでいるわけじゃないのでわからないですけど、テレビで「まんこ」はあんまり聞かない気がするなあ……そもそもフランスだと、「スタジオでタレントがキャッキャする」みたいなバラエティ番組がないんですよね。そもそもタレントって職業もない。

柴田 「ちんこ」は?

牧村 「ジジ」って言うんですけど、わりとカジュアルに言って良い雰囲気がありますね。お酒で「ジジコワンコワン」って名称のレモンリキュールがあるんですけど、日本語で言うと「ちんこガーガー」。「コワンコワン」ってアヒルの鳴き声なのね。

柴田 レモンリキュールだとおしっこっぽいですね(笑)。

牧村 そうそう。その商品がショーウィンドウにずらっと並んでるくらいカジュアル。

柴田 「まんこ」みたいな女性器の愛称ってありますか?

牧村 そういえば知らないですね。「愛の泉(la fontaine d’amour)」とか?

柴田 絵画のタイトルみたい(笑)。

牧村 「おまんまん」「おぱんぽん」みたいな愛称は知らないです。「子ねこちゃん(la chatte)」「穴(le trou)」みたいな言い換え表現はしますけど。あと、文学表現系もいろいろありますね、「秘密の庭(le jardin secret)」とか「垂直の微笑(le sourire vertical)」とか。

面白かったのが、2013年にパリの同性婚賛成デモで使われた「芝生(le gazon)」って表現です。これは単に「もじゃもじゃ生えてるから」っていう例えじゃなくて、同性婚反対デモ参加者をからかった表現でもあるのね。どういうことかっていうと、反対デモ参加者達は、以前エッフェル塔周辺の芝生をめちゃくちゃに踏み荒らして賠償請求されているんです。それを受けて賛成デモ参加者のレズビアン達が、「私たちレズビアンは芝生を愛しています!」ってプラカードを出したわけ。

◎濡れていないまんこはセクシャルじゃない

柴田 逆に「ちんこ」って恥ずかしくないんですかね? 「ちんこちんこうるさい! もうちんこのことは言うな!」ってならないのかな。アンガールズの田中卓志はちんこがデカいってしょっちゅういじられてますよね。「や~め~て~よ~」って言ってる。

牧村 あれは、ああいう返答を求められているっていうのもあるんでしょうね。

柴田 あと大小で言ったら、テレビドラマ『トリック』(テレビ朝日系)が深夜放送だったときって、阿部寛のちんこが巨根だって設定でしたよね。この設定、ゴールデンの時間帯に移った時はうやむやになっちゃいましたけど。

牧村 なにそれー! 仲間由紀恵の貧乳設定はなくなっていないのに!

柴田 そうそう。巨根と貧乳だったら、巨根のほうが性的でタブーなのかもしれない。

牧村 「ちんちん」だとカジュアルだけど、巨根って表現すると、勃っている状態を想起して性的になっちゃうのかもしれない?

柴田 性的かどうかが、ろくでなし子さんのまんこ裁判で一番問題になるところです。ご本人がどう思っているのかを私が代弁することはできないのであくまで私の考えに過ぎませんが、ちんこもまんこも猥褻になることは絶対にあると思うんですね。セクシャルな部分を公的な空間に露出するのは犯罪とされているのだから、それを取り締まることに問題はない。でもろくでなし子さんのまんこ作品って濡れていないし、クリトリスも勃起していないし、エロいというイメージや視覚演出からほど遠くて、ぜんぜんセクシャルじゃない。だからろくでなし子さんのまんこ作品は女性器の模型だと言えると思うんですよ。理科室にある人体模型と同じ。

牧村 人体模型は問題ないのに、ろくでなし子さんのまんこはなんで駄目なのか、ってことですね。

柴田 そうそう。ろくでなし子さんの騒動、牧村さんはどう思っているんですか?

牧村 「すごい国で生きているんだな……」って思いました。

あの騒動によって明るみになったことはたくさんあって。私は柴田さんと違って、あれは猥褻だから問題だったのではなく、公然とやったことが問題とされたんだと思うんですね。露出狂と同じ扱い。

柴田 ああ、最初の逮捕はそうだと思います。あのときろくでなし子さんは活動資金を募るために、クラウドファンディングで寄付してくれた人に対して自らのまんこの3DスキャンデータをダウンロードできるURLを教えていたわけですけど、3Dデータを規制したいと考えていた警察が、猥褻物頒布罪で捕まえたんですね。3Dスキャンのことも、クラウドファンディングのこともよく知らないまま。

牧村 怖い……それだけで対談のトピックになるようなヤバいことですよね(笑)。

柴田 そうですよね。不特定多数にまんこの画像を配布したって名目で逮捕されてますけど、実際は支援してくれた特定の人に対して、データがダウンロードできるURLを送っただけで、不特定多数ではない。スキャンデータだって座標がプロットされてるだけで、「性欲を興奮又は刺激せしめ」るような画像とは言い難いと思うんですよね。逮捕の後に、ろくでなし子さんの弁護側が出した「準抗告」という滅多に通らない申請が通って無事釈放されたのは、思った以上に世間の反応が大きかったからなんだろうと思います。

牧村 でも、もう一度逮捕されちゃっていますよね。

柴田 二度目の逮捕は、釈放の後にろくでなし子さんが「週刊金曜日」(金曜日)に逮捕の一部始終を描いた漫画の連載を始めたり、ツイッターやFacebookで警察を煽るような文章を書いたから、公安が怒ったんだと思います。例えばアダルトショップが陳列されている商品で捕まったときって、「これで見逃して下さい」というわけではないけど、罰金を納めて書類送検で済ませることがほとんどなんですけど、ろくでなし子さんはそうじゃなく、自分の表現で戦う道、作家としての責任を選んだ。そのことが気に入らなかったというか、相容れないでしょうね。

牧村 気に入らないのは人間だからしかたないけど、権力がそれをやったらいけないですよね。そっか、そういう国なのか……大人になりたくなかったな……子宮に還りたい……。

◎ゲイバーで発せられる「まんこ」の意味

牧村 とはいえ子宮に還らないで、駄目なことは駄目ってちゃんと言うのが大人ですよね。大人にならなくちゃ(笑)。柴田さんって女性が「ま~ん(笑)」って呼ばれることに対してどう思いますか?

柴田 女性は感情的で、男性は論理的だとか言われるけど全然そんなことない。性別に関係なく、論理的な人もいれば感情的な人もいるだけだと思うんですよ。そんな風に考えていない、考えたくないから、女性が論理的なことを鋭く言うと論理の破綻を突かれたくなくて、「鉄臭いのがきた」とか「まんこ乙」とか言っちゃうんじゃないかな。牧村さんは?

牧村 私は人のことをまんこ呼ばわりする人の振る舞いで露わになるのは、「女性がいかに弱いか」ではなく、そういう振る舞いをする人がいかに恥ずかしい人間か、ということだと思うんです。お疲れ様でーす! って感じ。そういう人たちと私たちが対話することってできるんですかね?

柴田 うーん、ちょっと話は変わるかもしれませんが、フェミニズムの中で当事者性を前面に出す人っていますよね。「女だから言えるんだ」みたいな。「被害者」という当事者性で人を殴るようなことがある。女性に対して罪を犯したことのない男性だって、「当事者性」に対して言い返すことはなかなかできない。

牧村 「あなたのほうが強いんです。あなたの言うことは差別なんですよ」と言われたら黙るほかない気がする人はいるでしょうね。

柴田 当事者性を過剰に押し出しすぎるとオーバーキルになっちゃうと思うんですよ。変わって欲しい人を、変えるのではなく殺してしまう。余計反感を持つか、死んだように黙るかのどちらかになっちゃう気がする。

牧村 そもそも「お前は当事者じゃないんだから黙れ」の姿勢でやっている限り、対話は成立しないってことになっちゃいますね。

では女性と、女性のお客さんを「まんこ」って呼ぶゲイバーの人は対話が成立するんでしょうか?

柴田 ゲイバーで働く人の放つ「まんこ」って2つの意味があると思うんですよね。ひとつは「どうしてシスヘテロ女性なのにゲイバーに来るの? ゲイと付き合いたいの?」って戸惑うじゃないですか。ゲイにとって女性は性の対象じゃない。でもゲイに惚れちゃうヘテロ女性問題ってあると思うんですよ。

牧村 あるある。

柴田 ゲイってそうとうカムアウトしていない限り「なんで恋人いないのにあの女の子と付き合ってあげないんだよ」って言われる恐怖があると思うんです。どうやって誤魔化せばいいのか常に頭を悩まされている。だから女性に惚れられないように、「まんこ」と呼んで距離をとっているのかもしれない。これがひとつ。もうひとつは女性のお客さんってゲイバーを「毒舌なディズニーランド」だと思っている人もいると思うんですね。

牧村 「オネエの人、生で初めて見た~」みたいな。

柴田 そうそう、誰だってディズニーランド扱いされたら嫌ですよね。だから「まんこ」って言って遠ざけるんじゃないかな。

牧村 それもあるかもしれないけど、お商売でゲイバーにいる方は、サービスとして毒舌パフォーマンスをしているのかもしれませんね。まんこの話って女性同士でも話せなかったりするでしょ。でもまんこの話はしたいでしょ。だから「まんこ」って言ってくれることに感動するのかも。ゲイバーの人はそういう需要があるから毒舌パフォーマンスとして「まんこ」って言ってる。小さい頃「ちんこ」って言えなかった、あるいは昔は「ちんこ」って言っていたのに、あるときから「ちんこ」と言い合う男子の輪に入れなくなったお客さんが、ゲイバーで「まんこ」と呼ばれることで救済されているような気持ちになることもあるのかな……? もちろん不快感を覚える人もいるでしょうから、問題視されることもあると思いますが。

◎自分の身体は自分のもの

牧村 あっという間に時間ですね。

柴田 そもそもどうして牧村さんは今回、「まんこ」の対談をしようと思ったんですか?

牧村 ろくでなし子さんの騒動はもちろん、もっと「まんこ」のことを考えなくちゃいけないと思っていたんです。messy調査の結果にもありますが、「まんこのことを知らなかった」「恥ずかしくて名称を口にしたことがなかった」って人が結構いる。それに「指やタンポンをいれたら処女じゃなくなってしまう」といった誤解や「見たくない」みたいな恐怖心を持つ人もいるじゃないですか。「いやいや、最初から穴は空いているよ」「ちんこのためにとっておかなくていいんだよ」って思ってて。

柴田 ちんこのためにとっておく意識は破壊されるべきですよね。私は正直、「女性だからまんこの当事者性を引き受けなければいけない」とは全然思わないんです。男性もそう。ちんこの権利を引き受けなくていい。自分らしい性って肉体と一致しないときもあるし、グラデーションだったり強弱があると思うんですよ。だから、抑圧されてはいけないけれど、当事者にならなくたっていい。でも、「処女を守るためにタンポンをいれてはいけない」というのは、「いやいや、あなたの身体だよ?」って話ですからね。

牧村 別に「タンポンをいれなくてはいけない」「まんこを見よ!」というわけでもないんですけど、「入れちゃいけない気がする……」というのはそろそろ終わりにしたほうがいい。「ちんこのためのまんこ」じゃなくて「自分のためのまんこ」になって欲しいんです。もちろん、性癖として処女が好きというのは別にいいんですよ。でも、そういう声がデカいために「私は処女じゃないといけないんだ」と思って、人生の選択肢が狭まるようなことは良くないでしょ?

柴田 そのためには、男性の去勢恐怖をなくすのもいいアシストになるでしょうね。「ちんこを背負わされている男」と「まんこを抑圧されている女」のどちらも解放することが、互いのためになるんだと思います。

牧村 そうですね。とにかく、「自分の身体じゃん?」って思います。
(構成/カネコアキラ)

柴田英里(しばた・えり)/ 現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。Twitterアカウント@erishibata

牧村朝子(まきむら・あさこ)
1987年生まれ。タレント、文筆家。2013年にフランス人女性と同性婚、現在フランス在住。セクシャリティをテーマに、各種メディアで執筆・出演を行う。将来の夢は「幸せそうな女の子カップルに”レズビアンって何?”って言われること」。twitter : http://twitter.com/#!/makimuuuuuu ブログ : http://yurikure.girlfriend.jp/yrkr/

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