「ていねいな暮らし」系が陥りやすい、女性とはこうあるべきという価値観

 今年の〈と学会・トンデモ本大賞〉にて紹介された、『運を呼び込む 神様ごはん』(ちこ著・サンクチュアリ出版)。前編ではエクストラ発表と学会会員・本郷さんが取り上げたトンデモポイントをご紹介しましたが、後編ではその世界観の背景について語ってもらいました!

 結局、家庭で実践するには少々ハードルが高いという印象に終始した、ゆにわ流〈神様ごはん〉。それだけでなく、さらにもう少し掘り下げて読んでみると〈男尊女卑の考えが根底に見受けられる〉と、本郷さんは指摘します。

本郷「おいしい手作りの食事を出せばすべてがうまくいくということは、逆に言うと女が常に手作りの食事を作らねばならないというプレッシャーを与えられているわけですよね。『神様ごはん』には、女は台所にこもってればいいんだという、男尊女卑の古い考えを感じます。情報過多によって、〈男に選ばれる女でなければ価値がない〉〈価値を認められなければ生きている意味がない〉という価値観に染められちゃった人たちが、神様ごはんのような世界へいっちゃうんじゃないでしょうか」

 雑巾がけをして天津祝詞(あまつ のりと)を唱えたり、米を炊くたびに米と水の恋愛ドラマを想像するなど、私は正直いちいちそんなことやってられないと思ってしまうことばかりなのですが、『神様ごはん』を読んで実践しようと思う読者はどんな方たちだと思いますか?

本郷「いわゆる〈ていねいな暮らし〉という言葉に弱い人たちですよね。30代くらいから上にいくあたりの年代って、子どものお受験があったり、女性としての価値がどんどん下落していることに気づいて、でも目をそむけたかったり。そういう人が自分の存在意義を高めるために、こういった世界にのめりこむのかもしれません」

◎いにしえに惹かれる心

 この神様ごはんの世界は〈古神道〉の考えに基づいているとのことですが、実は子宮を崇める女性たちも〈古神道〉を引き合いに出しています。この手のスピ物件は、なぜ〈古〉を引っ張りだしてくるのか……という疑問に対する本郷さんの指摘は、実に分かりやすいもの。

本郷「単に〈古〉をつけると、現代で出回っている各宗派からつっこまれても平気だからでしょう。今あるものを利用すると『じゃあ氏子になりなさい』『檀家に入りなさい』と、既存のコミュニティに組み込まれるじゃないですか。ぶっちゃけ言ってしまいますが、今の人たちって宗教から利益は欲しいけど義務は背負いたくないというのが本音ですよね。それにはやはり既存のコミュニティやヒエラルキーがガッチリできているところに入りたくない。だから、すでに絶えてしまっているような、組織がなさそうなほうに行きたがるんじゃないかなと思うわけです」

 さらに、古神道と同じくらいよく使われるのが〈言霊〉の効果。ちなみに『神様ごはん』では、流し台(シンク)と思考(シンク)は連動しているので、流し台は常に美しく整え邪気を洗い流す。身体(しんたい)は神体(しんたい)だから、大事に扱うと神が宿ると解説されています。子宮教でも「産道=参道」なんて言っていますが、コレはどうとらえればいいのでしょうか。

本郷「単純に、読者に『え~! そうだったんだあ~』と思わせるためだけのもの。表面的に、読者を納得させて〈気づき(笑)〉という快感を味わわせるためだけにやってるんじゃないかと。古神道にこだわったら、古語の世界ですから、おそらく今ではもう探しようのない言葉とかあるはずなんですよ」

 そもそも、ダジャレレベルのものを〈言霊〉と言ってしまうことが、少々罰当たりなような気がします。

◎料理の神は、ここにいた!

本郷「本当の意味でお料理を神聖に一所懸命行うのだったら、土井善晴さんのお料理を見習うべき。NHK『きょうの料理』で神回と呼ばれるものがあります。具なしのおにぎり、いわゆる塩むすびを作るだけなんです。手をきれいに洗うところから始めて、塩むすびを作るまで15分! 宗教はまったく関係ないけれど究極の料理オタクであり、誰よりもお料理と向き合っている。あれこそが、神様ごはんでしょう(笑)」

 霊的なパワーを呼び込まなくても、愛情のこもったおいしいごはんは誰でも作れるもの。実用的でいて、〈神〉が宿る回もあるという『きょうの料理』で腕を磨き、おいしい料理という幸せをかみしめてはいかがでしょう。毎日の営みであるごはんに開運効果まで求めていては、神様もさすがにお疲れになるでしょうから。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)

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