[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」8月11日号

怪談より怖い生身の人間……今号も人間の業と家族の呪縛があふれる「婦人公論」

2015/08/06 15:00
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「婦人公論」8月11日号(中央公論新社)

 「婦人公論」(中央公論新社)今号の特集は「親、子、きょうだいモメない秘訣」です。特集の前にまずは、東京大学東洋文化研究所教授・安富歩氏の「男物の服を脱ぎ捨てて初めて安心感に包まれた」を見てみたいと思います。特集外のインタビューページですが、こちらも両親と元妻という身内の支配からの脱出がテーマ。

 最近では「女装の東大教授」としてメディアにも登場することの多い安富氏。女装をするきっかけは「ダイエットで10キロも痩せ、手持ちの衣服がブカブカで着られなくなった」から。試しに女物を着てみたらピッタリ。女性物の服を着ていると「何ともいえない安心感に包まれていることに気づいた」とのこと。

 安富氏が女性装に居心地の良さを感じる裏側には、エリートとしての生き方だけを強要してきた両親と、母親と同じようなやり方で自分をコントロールしようとする元妻からの苛烈なモラハラがあったと言います。安富氏にとって女装は男性が敢えてするそれではなく「『男装をやめてありのままの自分を取り戻した』と言うほうが正しい」。印象的だったのは女装以前の自分のことを「親や元妻による植民地支配」と表現していたところです。ブラック企業同様、「ここでしか自分は生きられない」と思い込ませて、自己肯定感を根こそぎ奪い去っていく。そこに「愛」を散りばめてくるから、家族問題は本当に厄介です。

<トピックス>
◎安富歩 男物の服を脱ぎ捨てて初めて安心感に包まれた
◎特集 親、子、きょうだいモメない秘訣
◎戦慄の実話スペシャル 真夏の怪奇現象

■「同情するなら金をくれ」でも解決しない介護問題

 家族とは慈しみ合うもの、仲が良くて当然、常に味方。いつの時代もそんな価値観にとらわれすぎて、家族問題はこじれていくもの。でなければ「親、子、きょうだい モメない秘訣」なんていう特集が定番企画として「婦人公論」に登場することはないのでしょう。リードにも「かつては仲の良かった家族でも、年を重ね違う人生を歩き始めると、関係がややこしくなるものです。とりわけ、お金、介護、相続の問題は、大きな仲違いのタネとなることも」とあります。

 アンケート「『もう、耐えられない!』肉親と衝突する3大理由」を見ますと、やはりモメた理由は「お金、介護、相続」がワンツースリーフィニッシュ。モメた相手は50%がきょうだい、親が24%。子どもが10%と続きます。「夫の弟がマンションを買った際、義父母が1000万円くらい援助したが、私たちにその話は伝えられなかった」「弟二人は父の遺産をもらっているのに、母の介護を拒否し、文句だけ言う」「父が入院すると兄一家は毎日見舞いに行ったが、亡くなるや態度を一変させた。私と母の留守中に家の中を物色し、『遺産を母が隠している』と、家庭裁判所に申し立てまで」……“家族の愛”言説がなんとか保ってきた人間関係を、「お金」や「介護」という現実問題がいとも簡単に叩き壊しているのがよくわかります。

 家族だからわかり合えるはずなのに……そんな望みが「親の介護」で粉々にされたというのが、「『親の介護』できょうだいとの間に溝が生じて」。ファイナンシャルプランナーで、自身も母親を介護中の井戸美枝氏が、介護問題できょうだいとの関係に悩む2人の相談者にアドバイスするという座談会です。お一人は定年直後に離婚した両親の介護をめぐり妹とギクシャク、もう一人は認知症の母親をまったく面倒みようとしない兄夫婦と絶縁状態。

婦人公論 2015年 8/11 号 [雑誌]
という、西澤氏による独演会でした
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