[官能小説レビュー]

触れられないことで感じられる官能――片思いの興奮が凝縮された『あなたとワルツを踊りたい』

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『あなたとワルツを踊りたい』(早川書房)

■今回の官能小説
『あなたとワルツを踊りたい』(栗本薫、早川書房)

 人が“官能”を感じるのは、キスやセックスの瞬間だけではない。肌を露出しなくとも、相手に心を受け入れられることがなくとも、官能を感じられることだってある。

 今回ご紹介する『あなたとワルツを踊りたい』(早川書房)はOLのはづき、はづきをストーキングしている昌一、タレントのユウキの3人の登場人物の視点で物語が構成されている。

 舞台はまだ携帯電話も“ストーカー”という言葉も存在していなかったバブル時代。物語は1本の電話から始まる。ひとり暮らしのはづきのアパートには、度々いたずら電話がかかってきて、受話器の向こうから聞こえる喘ぎ声に日々悩まされている。

 恋人がいない処女のはづきにとって、一番大事な存在なのがタレントのユウキ。彼が出演する舞台を見に行くのはもちろん、あらゆる現場への入り待ちなどを行い、毎日ファンレターを書き続けている。その様子は、タレントを応援するファンの域を超え、1人の男性に愛情を注ぐ女のようにも見える。

 そんなはづきをストーキングしているのがアパートの迎えに住む昌一だ。はづきがアパートの引っ越し作業をしていたとき、うっすらと汗が滲んだ彼女のTシャツ姿に欲情し、射精をしてしまう――その瞬間から、昌一ははづきに情熱を向けるようになった。四六時中彼女を見守り、電話をかけ続けているが、やがて昌一は、はづきが自分以外の誰かに思いを寄せていることに気付く――。

「あたしは、恋がしたいんだ」というはづきのセリフが非常に印象的だ。純粋な恋心は、ときに凶器となり、はづきの思いは、ユウキの心を疲弊させる。そして昌一のはづきに対する強い思いもまた、ユウキへの憎悪と変わっていく。登場人物たちの交錯する愛情。相手を思いやり、愛しんでいるにもかかわらず、その感情は真綿で首を締め付けるように相手を苦しめてゆく。

 例えば、好意を寄せている相手に冷たくされたとき、愛してやまない相手が手の届かない存在であったとき、どれだけ声を上げて相手に思いを伝えたとしても、その気持ちが受け入れられることがないとき――そのもどかしさに、ぞくぞくしてしまうという経験はないだろうか。『あなたとワルツを踊りたい』に、そんな触れ合わない“官能”を感じるとともに、だから人は恋愛に翻弄されるのだろうと思った。

本作は、片思いをしている人にぜひ読んでいただきたい1冊である。まだ恋人になる前の関係のとき、好きな人とのことを妄想しているだけで心が満たされる、いつか触れられるかもしれない、いつか抱きしめられるかもしれないと想像を巡らせると、頭の中に描いたストーリーの登場人物である自分自身が輝いているように感じる――そんな感覚に身に覚えの人は、恐らく本作に向いている。

 その興奮は、現実に恋人同士になってから得られることは少ない。相手は意思を持った生身の人間であり、自分の空想の中で生きるキャラクターではないからだ。1人だからこそ感じられる官能を、ぜひ味わってほしい。
(いしいのりえ)

ジャニオタのあたちは身につまされる思い!!

しぃちゃん

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