[女性誌速攻レビュー]「美人百花」7月号

「美人百花」読者は年収400万円!? 夢見がちな読者像と高収入のギャップが示すもの

2015/06/29 21:00

■その年収アンケートは真実か虚構か

 さて、そんな「美人百花」読者の実態がわかるページもありました。「見たい、知りたい 突撃!トナリの『お金』事情」では、読者の懐事情に迫るアンケートが掲載されています。なんと、「美人百花」読者の平均年収は390万円、手取りは28万円とのこと。日本の女性の平均年収は、「美人百花」の読者層とかぶる20代後半から30代前半がピークとは言いますが、その平均値は300万円弱というデータがあります。男性でも20代後半で300万円後半ですので、男性の平均年収も超えているということですね。「美人百花」の読者が、そんなに稼いでいたとは……。誌面のあまりの現実感のなさに、そんなふうには思えないので、読者がアンケートで見栄を張っているかと疑ってしまいます。

 いまどきアラサー世代が、仕事で400万円の年収を得るのは男性でも大変です。それくらい稼ぎたければ、毎日人脈を作ったり、勉強会に参加したり、目の色を変えて転職活動をしたりと、おのずと意識が高くなってしまうもの。 また、就職活動で難関の会社に受かるためには、それなりの学歴も必要でしょう。しかし、「美人百花」読者の平均年収がもしも真実だったら、「美人百花」が想定する読者のように、あまり複雑な感情を持たず、世知辛いアイドル業界にいてもほんわかしている小嶋陽菜さんのような雰囲気を持ち、笑顔と愛嬌と美人力を持った女性が、日本の会社では重宝されているということになります。

 余談ですが、昨今、アラサー女性に「刺さる!」と話題の『東京タラレバ娘』(講談社)という漫画があります。この作品には、がむしゃらに仕事をするあまり、やさぐれた生活をしているフリー脚本家の主人公が登場します。年収400万円も稼ぐには、彼女のようにやさぐれた生活をしなければ無理なのではと思ってしまうのですが、もしそうならずに到達できる方法があれば、教えてほしいくらいです。この数字に関しては、なんとなく虚構の幸せオーラで、読者、編集者ともに現実をごまかしているように見えて、ちょっと悲しい気がするのでした。

 何人の人にどういう形で聞いたのかが明記されていないので、実際のところは、アンケートを取ったサンプルが偏っていたとのではないかと思いますが……。そもそも「美人百花」には、お金や就職という、リアリティある記事は多くはありませんでした。そんな雑誌が、社会の空気を察して、こんなページを急ごしらえするから、“ふんわり”したページになったのでしょう。いや、その“ふんわり”こそが、この雑誌の特徴でもあるのですが。
(柴朋美)

最終更新:2015/11/27 17:16
『美人百花(びじんひゃっか)2015年07月号[雑誌]』
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