仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

「自分は生きる価値ないゴミ」と自虐するヒャダイン、その恋愛論に感じた強烈な万能感

2015/06/25 21:00
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ヒャダイン公式サイトより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「ゲームしてても、かまってあげないといけないでしょ」ヒャダイン
『ボクらの時代』(フジテレビ系、6月21日放送)

 テレビの世界、特にバラエティ番組において、“自虐キャラ”は必要不可欠な存在と言えるだろう。自虐キャラの大前提は「本業が成功していること」である。数字(視聴率やセールス)を持っている人が自虐的に振る舞うことで、「こんなすごい人なのにフツウっぽい」と視聴者は親近感を得たり、好感を抱くのだろうが、男性タレントと女性タレントでは自虐の方向性が違うことに気づく。

 テレビに出る女性の自虐は、ほとんどが男に関することである。NHKの有働由美子アナウンサーの「オバチャン」「独身」自虐、フリーアナウンサー小島慶子の「女子アナなのに、金持ちと結婚しなかった」自虐、そして多くの女芸人が披露する「モテない、貢いだ、捨てられた」自虐である。

 それらが真実かどうか、本心かどうかは問題ではない。彼女たちの自虐を見るに、女の自虐の根底には「男にどう見られているか」があるとわかる。社会的に成功しても、男からの評価が低ければ、自虐のタネになるようだ。

 これに対し、男の自虐に女からの評価が関わる率は、実は少ない。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「マイナス思考芸人」の回で、オードリー・若林正恭は「4WDを買ったけれど、昔から知ってるスタッフに(自分のような人間が)エラくなったなと思われるがの怖い」、ブラックマヨネーズ・吉田敬は「年末の挨拶、『よいお年を』と先輩に言うと、おまえなんかに言われたないと思われるんじゃないか」と明かしたが、「社会的に自分はどの立ち位置なのか」というのが、男性の自虐の根底にあると言えるのではないだろうか。若林は高級車を買うことによって、スタッフより“上”の立場に立って反感を買うのを恐れ、吉田は自分のような“下”の人間が、声をかけるのは失礼でないかと恐れる。それだけ“上下”にこだわっているとも言えるだろう。

 男性の自虐が、“上下”へのこだわりから生まれる説をダメ押ししたのが、6月21日放送『ボクらの時代』(フジテレビ系)でのお笑い芸人・藤井隆、作家・朝井リョウ、音楽クリエイター・ヒャダインの鼎談だった。朝井は戦後最年少の直木賞作家であり、ヒャダインは、ゆずやSMAPなど人気アーティストに楽曲を提供する売れっ子プロデューサー。若くして成功を収めた2人だが、朝井は「(自分のような人間が)相手の時間を奪うかもしれないと思うと、電話ができない」、ヒャダインは「毎日楽しいけれど、自分はクソで生きる価値もないゴミだと思っている」と過剰な自己卑下で、自分は社会的成功とは別に、人間としての自信がない、つまり人間的立ち位置が“下”であると主張する。

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「生きる価値もない」なんて自分にこだわりがなきゃ出てこないセリフ
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