秘宝館ってどんな所? 消え行くエロ娯楽施設が私たちに教えてくれること

 私が学生のころ、学科旅行というのがあり、1年生全員(たいへん小規模な大学だったので)と教授陣で1泊で熱海に行きました。そのとき電車の窓越しに〈熱海秘宝館〉という文字を見つけた私、先生に「秘宝館って、何を展示しているところなんですか?」と興味津々で訊ねたのです。美術館や博物館についても勉強する学科だったので、そういう施設だと考えたのですね。なんて、おぼこい19歳。先生はごにょごにょと口ごもって質問をはぐらかし、私は釈然としないままその旅行を終えました。

 そんな思い出のある熱海秘宝館、ついにデビューしてきました!

 昨年末に栃木県の鬼怒川秘宝館が閉館されましたし、全国を見渡しても秘宝館はもはや風前の灯。いずれこの世から消えてしまうものです。散りゆくエロティシズムを回顧する、昭和のセックスカルチャーに出会う……いろんな見方があるでしょうが、私はなんといっても秘宝館バージン、先入観なく見たまんまを受け取ろうとまっさらな気持ちで熱海に向かいました。

 日本有数の温泉街、熱海を一望できる八幡山を車でのぼっていくと、レトロな人魚がお出迎え。しかも、昭和歌謡なBGMが流れています。館のオリジナルソングだそうで、哀切きわまるメロディに後押されるようにして、その入口をくぐります。

 ちなみに、館内は撮影禁止です。個人的には館内のエロで珍機な展示物をがんがん写メってもらって、twitterなりinstagramなりSNSで世界に向けて発信したほうが、館の存続につながると思うのですが、欲がまったくない、超然とした姿にしびれます。

 そして館内で出会ったのは、〈牧歌的な〉性表現でした。もっと端的にいうと〈マヌケ〉です。ご当地を舞台にした『金色夜叉』の名場面、貫一・お宮や、浦島太郎のエロパロディ、コインを投げ入れると等身大の女神フィギュアが巨大張り型をこすって水が吹き出す〈みこすり半ゲーム〉など、ゆる~い展示物の連続でニヤニヤが止まりません。ゲームコーナーには、モグラたたきならず〈亀頭たたき〉が用意され、ピコピコハンマーを手にした友人が、にょきっと顔を出す亀頭をムキになって叩きまくるのが、ワタシ的にはハイライトでした。

◎哀愁たっぷりの展示物

 そのすべてに、なんともいえない哀愁が宿っています。日本がイケイケドンドンだった時代に、全国のあちこちで建てられたエロスの殿堂・秘宝館。きっと当時はキラキラしたエロスをふりまき、訪れた人の性的好奇心を多いに満たし、もちろん性欲も刺激して、そのまま周囲の温泉に泊まるカップルの前戯的役割も果たしていたのでしょう。でも、その後、日本に娯楽が増えるにつれ、あるいはさらに過激で直接的なポルノグラフィが世にあふれるにつれ、訪れる人も減り、次第に時代から取り残されていきます。その、うら寂しさたるや! けれどそのペーソスこそが笑いを誘い、抜くためのエロスとは違った独自の世界観につながっています。

 今回の秘宝館デビューは、オトナの遠足と題して6人連れでの訪問でした。マヌケなエロ表現に出会い、一緒になってげらげら笑うという体験は、私にとってたいへん貴重なものでした。「エロって、これでいいんだな」と腑に落ちたのです。

 女性誌に見られるような、モテの帰着としての、あるいはモテの手段としてのキラキラした性。セックス=コミュニケーションと精神面ばかりを強調される性。セックスを美しくてきれいで崇高なものとして祀りあげることへの違和感がふくらんでいたところなので、「いいじゃん、性って別に気取ったものでもなんでもないんだよ」と教えてもらったようでした。セックスをステキなものにしてしまうと、ハードルが高くなるばかりですよね。泥臭くて、ばかばかしくて、人間味がある。秘宝館に漂うそんな空気を私たちは見失っているのでは……と感じました。

 先述したように、秘宝館は絶滅寸前です。私が生きているうちに、完全に過去の遺物となり、「その昔、秘宝館っていうものがあってね」「なにそれ、誰が何しにそんなところにいってったの!?」という会話が聞かれるようになるでしょう。それは秘宝館にかぎらず、ピンク映画やストリップなどでも近い将来必ず起きうることです。時代に淘汰されるといってしまえばそれまでなのかもしれませんが、性にはきれいな側面だけでなく、笑いや物悲しさや切なさや割り切れなさがあり、万華鏡のようにさまざまな顔を見せてくれるものであることも一緒に忘れ去られそうでさみしいですね。性って、しょっぱい面も多々あるのに。

◎エロが窮屈な時代

 いきなり話は変わりますが、私のtwitterアカウントが凍結されました。5年間で初めてのことです。最近は連載している記事の更新状況ぐらいしか投稿していなかったので、原因がさっぱりわかりませんでした。スパム報告されるような投稿もないし、そんなに拡散されているわけでもないし……。凍結解除要請とともに原因を問い合わせたところ、「違反画像」があったとの返答がありました。

 画像といっても私が載せているのはグッズの画像ばかりです。性に悩んでいる人、より積極的に愉しみたい人たちに提案したい道具たちです。タイムラインを見ていると、人がRTしたエロアカウントのもろ出し画像を目にすることがありますが、それとは意味合いが違うと私が考えています(そういう画像は不快なので、私はスパブロします)。よりよい性に向けての提案も、女性をただモノととらえているポルノ画像も、同じ扱いなのか……。と、やるせない気持ちになりました。

 秘宝館が賑わっていた時代は、性的な表現に対していまよりおおらかだった一方で、セクハラが横行していたし、女性の性は男性の手中にありました。でも、こうした〈オトナがオトナとして愉しむ〉性表現について締めつけられるいま現在が、その時代とくらべてハッピーだとはやっぱり思えないのです。

 熱海をはじめとする秘宝館が、今後、少しでも長く存続しますように。機会を見つけて、ほかの館にもいってみたいです。まずは、近いところで伊香保の「珍宝館」かな。

■桃子/オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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