[連載]おばさんになれば"なるほど"

中年女性がボランティア活動に励むのはなぜ? “関係性”に発揮される、おばさんの能力

2015/06/20 19:00

少女から女性へ、そしておばさんへ――全ての女はおばさんになる。しかし、“おばさん”は女性からも社会からも揶揄的な視線を向けられる存在でもある。地方都市に普通に生きる“おばさん”の多様な姿を大野左紀子が探っていく。第6回は「ボランティアの中年女性」。

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(C)大野左紀子

 スマホで直ちに目的地までの道のりを調べられるようになった今、人に道を尋ねる機会は減ってきましたが、もし誰かを呼び止めて聞くとしたら、あなたは誰に声をかけますか?とりあえず、おばさんを選ぶ人が一番多いのではないでしょうか。特に女性は。

 おじさんは無愛想な人が多そうだし、若者を呼び止めてめんどくさそうな顔をされるのもいやだ。もちろんこれは、偏見です。親切なおじさんや若者もいれば、つっけんどんなおばさんもいる。でも道を聞いたらわりあい親切に教えてくれるのは中高年の女性、というイメージはなかなか強力だと思います。

 実際、旅行先などで友人と「ちょっと間違えたんじゃない?」「◯◯はこの道でいいはずだけど」などとキョロキョロしていると、「どこ行きなさるの?」「◯◯ならそこの細い道を入って少し行った角だよ」などと声をかけてくるのは、大抵中高年の女性。おばさんは、困っている人を見ると放っておけないようです。「ありがとうございます」と丁重に礼を言えば、「いいえぇ」と満面の笑みを返してくれるのもおばさん。おじさんや若者は照れくさいのかサッサと立ち去ります。おばさんの中には、こちらが間違えずに「そこの細い道」に入っていくかどうか、立ち止まって見送る人までいます。他人のことながら、自分の目で“無事”を確認しないと落ち着かないのも、おばさん的な習性の1つかもしれません。

 他人の役に立つことで充足感を得るボランティア活動に女性が多いという話も、これとつながっています。赤十字で働く人の7割が女性だそうですし、非常時の炊き出し、障がい者や高齢者の施設のイベントお手伝い、美術館や図書館の教育プログラムのサポーターや地元の文化会館での催しの裏方、町内のバザー、小学生の登校下校を見守る日常的なシーンまで、地域ボランティアの場には中年女性の姿が目立ちます。各種の市民運動、消費者運動の場にも、手弁当で通ってくる人が少なくありません。

 その理由はいくつか挙げられるでしょう。すでに子どもの手が離れているので比較的自由な時間がある。専業主婦で外に仕事を持っていなくても、社会とつながっていたいという欲求がある。「無償の裏方仕事」である家事や育児を主に担ってきたので、こまごました社会奉仕活動にも馴染みやすい、など。

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