歌声とゲロにまみれて深まりゆく女たちの熱き友情『ピッチ・パーフェクト』

◎『ピッチ・パーフェクト』   ジェイソン・ムーア監督

 LAで音楽プロデューサーになることを夢見る主人公・ベッカは、父親の勧めで嫌々ながらも地元の大学に入学する。友だちも作らず、ひとりで地味な学生生活を送っていた彼女は、わけあって女子アカペラサークル「バーデン・ベラーズ」に参加することになった。最初はうまくいきそうもなかった風変わりなメンバーたちが、歌を通して徐々に大切な仲間になっていく。まあいわゆる、青春音楽コメディだ。俳優たちの歌声が本当に素晴らしく、アカペラに興味がなくても無意識にテンションが上がってくる。これは是非劇場で体験していただきたい。

 欧米でアカペラが少し流行っているらしい昨今だが、アメリカの大学においてアカペラこそが最高にクールでイケてるサークル! だなんてことはない。バーデン・ベラーズの面々は、日本の感覚で言うと、スクールカースト中の下くらいのちょいダサガールズだ。彼女たちも、敵対する男子アカペラグループも、垢抜けず田舎臭い雰囲気。学内でカッコイイ扱いも全く受けていない。アカペラをかっこよくスタイリッシュに見せようという映画ではないわけだ。筆者は『ブリングリング』みたいなオバカセレブガールズや、『SEX AND THE CITY』に登場するスタイリッシュで都会的な女性たちが大好きだが、ベラーズの女子大生たちの描き方も大好きだ。彼女たちのルックスはイケてないし、モテないが、観客にとってはこれ以上ないほど魅力的だ。

 彼女たちはセレブじゃないしアイドルでもない普通の女子大生として描かれるわけだが、学生が趣味で唄って踊る世界であっても、ルッキズムは残酷に機能する。ステージに立って歌う以上、少なからず容姿が重視され、それなりのビジュアルを求められる。ストーリーではベラーズがアカペラ全国大会出場を目指す過程が描かれるが、だから“イケてない”彼女たちはわりと不利である。

 たとえば、自ら「(ファット)太っちょ」と名乗る(理由は、「痩せた女に陰でデブと言わせないため」!)歌唱力自慢のエイミーはティピカルなデブキャラ。何を考えているかまったくわからない謎のアジア人もブッ飛んでいる。サークルの部長であるオーブリーは、全国アカペラ選手権での優勝を目標に、超保守的な選曲しか認めず(なのでコンテストでは飽きられている)、伝統的なしきたり(男子グループのメンバーとデキてしまうと即強制退部)を頑に守り、悪い人じゃないんだけど、周りの意見を一切聞かない。これじゃサクセスしようがない!

 新曲や最新のアレンジを取り入れた方が良いと主張するベッカと、コンサバ・オーブリーの確執は深まり、一時は決裂。しかし疑問を感じた他のメンバーたちも含め、女同士、ゲロまみれで本音で殴りあって和解に至る。大暴れして、最後は笑って仲直り。ガールズムービーの醍醐味的瞬間はきっちり押さえている。なんの論理的説明もないけれど、それで十分なのだ。

 可愛らしい恋愛エピソードもあるにはあるが、映画はあくまでアカペラという音楽を通じて女子同士の連帯感が強まる感動に重きを置いていて、やっぱり色気より友情!ガールズサイコー! と共感する観客は多いんじゃないだろうか(事実、水曜のレディースデーの劇場は女性客で超満員だった)。

 ただ、若者が主役のアメリカ映画を見ていつも思うことなのだが、アメリカの大学生ってこんなにガキっぽいのかとちょっと驚く。本作でも、男子が女子に向かって食べ物を投げつけて喜んだり、どうでもいいことで乱闘したり……。金八先生か? クスリでラリったりするより全然いいんだけど。

■gojo /1979年生まれ大阪出身、立教大学社会学部社会学科卒。2005年より自身のサイト「gojo」にて映画日記を執筆、2010年には蓮實重彦、黒沢清『東京から 現代アメリカ映画談議』(青土社)の出版記念トークイベントにてインタビュアーをつとめた。「森﨑東党宣言!」(インスクリプト)に寄稿。gojogojo.comで映画日記を更新中。

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