【messy】

女子大生の就職活動ルックは、どうしてダサくなきゃいけないのか?

2015/06/05 20:00

 暑い日が続いておりますが、普段オフィスにこもって仕事していることが多いため、季節を感じるのは通勤・退勤時ぐらいしかありません。気持ちだけは夏に向かっているのか、冷やし中華を中毒患者のように食べている私ですが、外回りの仕事をしている人はこの時期、大変ですよね。「スーパー・クールビズ」という言葉も定着した感がありますが、金融業などの堅い業種の営業をされている方は、猛暑でもスーツが当たり前だったりするわけでしょう。金融業でも本社勤めはクールビズで働いているのに、営業の最前線にいる方はスーツ、って完全逆にしたほうが良いと思います。

 会社員もそうですが、就職活動中の大学生たちも大変そうです。クールビズで仕事できる会社員はいても、クールビズで就職活動をしている学生はさすがにいないですもんね。特に最近は、採用スケジュールがこれまでよりも後ろにズレる傾向にあります。来春新卒の採用スケジュールは、8月から面接開始ということになっているようですから、暑さが最も厳しい時期にもスーツを着なきゃいけない。

◎今の学生の就職活動って昔より大変そう

 私が就職活動をおこなっていた頃(もう10年ぐらい前ですが)だと「ゴールデンウィーク明けに内定をもらっていない人は遅い」と言われていたので、スーツがツラくなる前に、就職活動を終える人が多かったハズです。今の学生さんは、昔よりも大変なのかもしれません。

 採用スケジュールが後ろにズレてるからといって、冬から春にのんびりしていられるか、というとそうではなく、インターンシップに出かけたり、企業説明会に出かけたり、と就職活動期間が長くなっているだけなんじゃないのか、とも思われます。学生にとってはオトナの世界の事情に振り回されて、いい迷惑ですよ、きっと。

 なかにはすでに内々定を出している会社もあるでしょうし、「ウチもみなさんに合わせて8月から面接ですよ」とか言いながら、リクルーター面接(人事が若手社員に声をかけて、学生と面談させてできそうな人材に目星をつけておく制度)なんかをバリバリやって優秀な学生を囲い込んでいる会社もあるでしょう。先日も都内某所の喫茶店で休憩していたら、周りの席の大半が、大手金融機関のリクルーター面接をやっていて驚かされました。学生の方々は、こうした採用抜け駆け企業の情報もチェックしなきゃいけないようです。

◎女性のリクルート姿のイケてさなは、なんとかならないのか?

 それにしても、女性のリクルート姿ってもう少しなんとかなんないんですかね。

 男性は全然良いですよ、黒で、柄が入ってなくて、オシャレ過ぎない普通のスーツを着ていれば良いんでしょ。髪型も、ちょっとサワヤカな感じにして(このNaverまとめの『いるいる! こういう就活中の男子学生! 新人男性社員!!』感がすごい)。

 男性のリクルート姿って普通の仕事着の延長線上にあると思うんですが(リクルートスーツと、普通のスーツの違いもほとんどない)、女性のリクルート姿は仕事着とまるで違います。あんなダサい格好で仕事している女性、研修中と思わしき時期以外は全然見かけないじゃないですか。ボディラインを可能な限り隠すもっさりした形のスーツ、謎にデカいシャツの襟、ヒールの太い黒パンプス、ひっつめ黒髪、すべてがダサい。春先は皆、一様にトレンチコートを羽織ってダサさをやや隠せるものの、トレンチとあの独特な就活メイクのミスマッチが悲劇的。就活スタイルで美人に見える人は、もともと相当な美人のみでしょう(学年上位3名の美女くらい、すなわちAKBにいないレベル)。そもそも“適切な清潔感の出し方”なんて誰も教わらないことで、きっちりした格好をしているつもりなのに“微妙に不潔っぽい”状態になってしまう就活学生さんを電車内や通勤経路で見かけるたびになんとなく悲しくなります。

 将来のためとはいえ、女子だけまるで罰ゲームみたいな姿で就活しているのは不憫です。採用担当者も困らないんですかね。普段とまったく違う感じで面接に来られて、そのコの人となりがわかるものなんでしょうか。「就活メイクで面接に来る = 常識とか慣習に従順である = 会社にも従順だろう」と見ているとしたら、もっと別なやり方をしてあげて欲しいと思います。

◎この「イケてる女子社員紹介」がアツい!

 さてさて、数年前からの傾向だとは思うのですが、優秀な学生をとるために採用サイトのコンテンツ作成に力を入れている企業が多く、さらに近年は「ウチは女性が活躍できる職場です!」というイメージを打ち出している企業が増えています。そこでは、容姿に恵まれた女性社員の方々のイケてる姿が写真付きで紹介されていたりする。前述した女性のリクルート姿のイケてなさと真逆のベクトルにいる、イケてる女性社員たち。企業各社の「女性社員紹介コンテンツ」の充実ぶりには(私個人の)関心が高まっています。で、先日から、仕事をするふりをしながら、有名企業の採用サイトをぐるぐると巡回してしまいました。今年の「新卒採用サイト女性社員紹介コンテンツ オブ・ジ・イヤー」を作るならば、私は損害保険ジャパン日本興亜株式会社さんを推したいですね。

 女子学生向けにわざわざ用意された、こちらの「From Real Sompo Japan Nipponkoa Woman」というコンテンツでは7名の女性が登場し、自分がどんな仕事をしているのか、どれだけ素敵な会社かを語っています。もちろん「ウチの会社はとってもやりがいがあって、働きやすくて、素敵なところなんですよ!」と訴えかける内容しか書いてないので、別段面白くはありません。私が「アツいわ~」と思ったのは、女性社員のカバンの中身を紹介しているところです。まるで女性ファッション誌の読者モデルコーナーのようではないですか。これ、コンテンツ制作を請け負ってる会社(基本的にコンペで決まる)の担当者と、人事部担当者が「ファッション雑誌みた~い」「楽し~い」と目を輝かせながら作ったんでしょうね。

 面白いのは、女性社員のカバンに入っているアイテムのPRADA率の高さ!! 「ウチ、結構給与良いっすよ」とほんのりとアピールしているみたいで最高です(噂によれば、基本給は決して高くないものの賞与が大盤振る舞いらしいですね~)。この小物紹介コンテンツは、来年から他の企業でも率先してパクって欲しい。

 こうしたリクルート・コンテンツに登場する社員は男女どちらも選ばれし精鋭ばかりで、適度なキラキラ感を放つものです。だからこそ余計、「女子大生のリクルート姿」に視線を戻してみると、その異様さが際立ちます。入社したらキラキラしても良いけど、入社前はキラキラしちゃダメ、みたいな? 企業側も、学生も、大学も、仲介者となるリクナビやらマイナビやらのスタッフも、誰も疑問に思わず「自己を地味に整える、良識ある学生」を求めているのでしょうか。まあ、私も自分の就活時にそんな疑問を持つ余裕はなかったように思いますが……。

■カエターノ・武野・コインブラ/80年代生まれ。福島県出身のライター。

最終更新:2015/06/05 20:00
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