化粧品開発者が明かす「コスメ種あかし」

塩シャンプーは「洗浄力ナシ」!! ナチュラル素材の洗髪法に「塩=アルカリ性」の大誤解

2015/05/27 17:00

――食器の渋取りなどにも使える「酢」でのシャンプーはどうでしょうか? ネット上では、お湯に酢を溶かしてシャンプーをするのが一般的だそうです。

尾崎 酢酸類は保存食にも使われるので、「殺菌できる」イメージあるのでしょう。殺菌効果はないとはいいませんが、皮脂などのタンパク質を溶かすのはアルカリ性です。酢は酸性なので、タンパク質を溶かしてはくれません。悪いものではないですが、こちらも効果ありとは言えませんね。

 頭皮の匂いが落ちるという効果はなきにしもあらずですが、結局、酢もお湯に溶かしてから使用するというプロセスを考えると、必然的に薄まってしまうので、そこまで効果があるのかは微妙ですね。灰シャンプーと同じく、現代における頭皮の汚れには、対応できないかなと思います。

――天然素材でのシャンプーは、あまりよい効果が得られるとは言えませんね。最近では、天然素材配合の市販品も人気で、例えば「炭配合シャンプー」などはたくさんのアイテムが出ています。

尾崎 水を浄化するのに炭を入れることから、「炭=浄化」のイメージが生まれたのかもしれませんね。炭には無数の穴が空いているため、フィルターのような効果があり、結果的に水中の不純物がろ過されるのであって、炭をシャンプーに配合しても効果はないというのが私の見解です。市販品は、「炭は浄化作用がある」といった消費者のイメージに訴えかけるために、コンセプトとして炭を配合しているのでしょう。炭パウダーを購入して、市販のシャンプーに混ぜて使っている人もいるようですが、それも同じ理由で効果は望めません。

 1つ注意しないといけないのが、「薬用炭」と表記されているパターン。「薬」という文字のパワーで「頭皮に優しく、効果もありそう」と思われがちですが、単純に「薬用炭」という名称であって薬用を示すものではありません。

――天然素材でシャンプーをするメリットはあまりなさそうに思えてきました。

尾崎 強いて言えば、「灰シャンプーで汚れを落として、酢で匂いを抑える」のは理論上間違ってはいないですが、とはいえその効果はわずかなものだと思います。現代社会で生活している中で溜まる汚れは化学的なものが多いという点、洗浄力が証明しにくい点などから、正直今回挙げられたシャンプー法はオススメしない、というのが私の意見です。

―――ネット上では、今まで挙げたシャンプー法で効果があったという人のコメントもたくさんありますが、その点についてはどう思いますか?

尾崎 塩などを使うと、当たり前ですが泡立つわけではないので、しっかり地肌を触って洗おうとするもの。普通のシャンプーを使うと、泡立ちに頼ってしまい、地肌にほとんど触らないままということが少なくないんです。あとは、念入りに洗い流そうとするので、結果的にお湯によって頭皮の汚れが落ち、髪がきれいになったというコメントが上がっているのかもしれませんね。

 世の中には、毎日シャンプーしていてもちゃんと洗えていない人が結構いると思います。例えば、美容師にシャンプーをしてもらうと、2日間くらいべとつかないという経験をしたことはありませんか? これはしっかり洗えているからで、洗う時間の倍の時間をかけて、流す作業をする美容師もいるほどです。どのシャンプーを選ぶかより、一番大事なことは「頭皮の汚れをしっかり洗って、流す」という作業といえるのではないでしょうか。
(取材・文=佐川みえい)

尾崎幸子(おざき・ゆきこ)
化粧品開発者/コスメ成分アドバイザー
文系の大学を卒業後、人材ビジネスに10年間従事するも、シャンプーのPRに関わったことを機に化粧品に興味を持ち、大手化粧品メーカーの開発などを手掛ける化粧品開発コンサルタント・岩田宏氏に弟子入り。化学の基礎から化粧品処方までを学び、2013年11月、自ら開発したジェネリックコスメ「MUQ」を発売。自身が皮膚疾患を抱えていることもあり、体に優しく、正しく機能する化粧品を現在も開発中。日々ビーカーを片手に実験に勤しみながら、客観的に正しいコスメ情報を発信すべく、「コスメ成分アドバイザー」としても活動中。
公式サイト

最終更新:2015/05/27 17:00
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