[連載]ここがヘンだよ子育て本!

ご神木に抱きついたり、聖水を浴びたり……妊娠・出産すら頑張り過すぎちゃう高島彩

2015/05/03 21:00
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高島彩『彩日記―Birth―』(KADOKAWA)

【第3回】
高島彩『彩日記―Birth―』(KADOKAWA)

<総合評価(10点満点)>
ストイック度   ★★★★★★★★★
ナチュラル志向度 ★★★★★★★★
自分大好き度   ★★★★★★★★

【寸評

 高島彩は「努力の人」である。オリコンの「好きな女性アナウンサーランキング」では5連覇を達成し、殿堂入りも果たした“フジテレビのスーパーエース”。美しさと若さに溺れ、退社後に落ち目となる女子アナが少なくない中、磨き上げたアナウンス技術と進行能力、上司やタレントとのコミュニケーション能力で、エースの座に君臨し続けている。仕事も、結婚生活も、そして妊娠・出産も、「努力」で成し遂げられないものは何もない。そんな高島の気合と信念が詰まっているのが、『彩日記―Birth―』である。

 「嬉しいことも悲しいことも嘘なく素直に綴っていこう」というキャッチフレーズの通り、妊娠中の不安な気持ち、仕事との両立の厳しさ、多忙な夫・北川悠仁(ゆず)とのやり取りまで余すことなく網羅されたこの本。最初の子を流産した悲しみから立ち上がり、再び妊娠、妊娠を発表するまでの我慢の日々、切迫流産で絶対安静を言い渡され、家事ができないことの苛立ち、やり切った年末特番……全編まさに高島彩の“努力劇場”。

 さらに特筆すべきは、各方面への尋常ならざる「気づかい」である。日記の欄外にびっしり入った注釈は、妊娠になじみのない人への「気づかい」。また流産経験者として「悲しみへの配慮も大切にしようと思う」と必要以上に喜んだり浮かれたりしないように「気づかい」。日記の中では夫・北川悠仁を「Y」と事務的に表記することで彼のファンを「気づかい」。共感を集めることも容易だが、ふとした言動から一気に奈落の底に突き落とされもするのが、芸能人の妊娠・出産。老若男女から「人気者でありたい」高島、そして努力でその座を手に入れた高島だからこそ、ギャンブル性の高い「妊娠出産」に十分すぎる傾向と対策を練ってきたように感じる。それが日記という“自我のメディア”にズドンとハマり、頑張りたい症候群のニッポン女性にはさながら経典の如く映ることだろう。

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 自らの描く「理想の自分」に向かって、仕事も結婚も子育ても趣味も精一杯やらずにはいられない、頑張りすぎちゃう女子。高島彩はそんなニッポンの頑張り屋さん女子代表選手ではないでしょうか。本の中でも「幼いころから『つらい』というのが苦手な性格」だったと語る高島は、流産の悲しみもつわりのつらさも全てを呑みこみ、耐え忍びます。

 共働きで妊娠中、しかも「切迫流産」と「前置胎盤」と診断されたなら、家事ができないのもやむを得ないこと。しかし高島はこう自分を責めるのです。「Yはツアー中。倒れそうなほど忙しいのに、夕食を作ってくれたり、洗い物をしてくれたり、本当にありがたい。その優しさが身に沁みて、動けない自分が不甲斐なくて、また泣いてしまった。元気になったら恩返しするからね。ありがとう」。夫への深い愛情とともに“普段は外で働く男に家事をさせたりしない私”をしのばせるという高等テクとも言えましょうが……。

 そんな高島ですから、たとえ安静状態であっても「動けるときに常備菜を作っておけば、日持ちもするし、お鍋だけの手抜きごはんでも、それなりに体裁が整うのでとてもいい。しばらくこうしよう」と並々ならぬ根性を見せます。「お鍋だけの手抜きごはん」という衝撃のフレーズに、全国のお鍋教信者たち悶絶。お鍋って手抜きごはんだったのか! 妻であり母である自分に非常にキビし~、ということでストイック度は★9つ。

高島彩 彩日記-Birth-
「頑張ってる自分」にうっとりしてるヤツに付ける薬はない
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