介護をめぐる家族・人間模様【第51話】

「たかが籍だと思っていた」姑の最期を看取った後妻は、お通夜と告別式から締め出された

2015/04/18 19:00
sougi-kaigo.jpg

青空好児さんの義母が攻撃性のある認知症なのだそうだ。テレビでその様子を見たが、鬼のような形相に動悸が激しくなった。家庭内で暴力、暴言。同居する家族はたまらないだろう。で、思い出したのが栗田貫一の妻へのモラハラ。「死んで」と言うとか、モラハラだと叩かれているが、もしかしたら、認知症の始まり、かもよ。

<登場人物プロフィール>
宮野 豊美(48)首都圏で専門職としてフルタイムで働く。籍の入っていない夫、子ども2人がいる
平川 博之(55)宮野さんの夫
平川 登世子(81)平川さんの実母

■籍の入っていない後妻
 「後妻」が注目を集めている。すっかり「後妻」=悪というイメージが定着してしまったようだ。宮野さんは、世間的には「後妻」になるのだろうが、正式には後妻ではない。籍を入れていない事実婚だからだ。

「主人と付き合っているときは、バツイチの独身だと思っていました。お義母さんと2人暮らしでしたし。それが、いよいよ結婚しようというときになって、主人に『実はまだ前妻の籍が抜けていない』と告白されたんです」

 身勝手な話だ。しかし、それを承知して、宮野さんは結婚した。結婚といっても、もちろん籍は入れられない。同居して、妻として振る舞う、という意味での結婚だ。しかも義母とも同居。なぜそこまで妥協したのか。不審に思っていると、宮野さんは弁明するように言った。

「私もバツイチだったんです。前の結婚では子どもはいませんでしたが、離婚するのは本当に大変でした。そういう経験もあったので、籍を入れることにこだわらなくてもいいかなと思っていました。それでも主人は、なるべく早く離婚するとは言っていたのですが」

 夫と前妻(戸籍上はれっきとした妻だが)には一人娘がいた。離婚手続きを進めたいという夫に対して、前妻は「せめて娘が義務教育を終えるまでは」「せめて就職するまでは」「せめて結婚するまでは」と、ズルズルと離婚を引き延ばしたという。

 そうこうしているうちに、宮野さんと夫の間にも子どもが2人も生まれた。前妻と離婚が成立していないので、認知はしているものの、宮野さんは未婚の母状態のまま今日まで来てしまった。

「うちの子たちももう中学生と小学生ですから、父親と名字が違う理由をある程度は理解しています。でもそれ以外は、まったく普通の家族ですよ。おばあちゃんとも仲良くやっていましたし」

 前妻と夫がうまくいかなかった原因は、その姑にあったと宮野さんは言う。

「前の奥さんも義母も気が強いので、ぶつかることが多かったようです。それで奥さんが出ていってしまったみたいです。義母も、私が主人と籍を入れられないのを承知で同居することに心を痛めたのでしょう。私に対しては、ずいぶん優しく接してくれました。主人も前の奥さんのことで懲りたらしく、すごく気を使ってくれていますし、籍を入れられないこと以外は幸せな結婚生活だと思います」

『婉という女・正妻 (講談社文芸文庫)』
それでもいいと決めても後悔はつきまとう
アクセスランキング