大久保ニューの【美のぬか床】 第21回

石原さとみ気分になれない女に喝! 唇フェチが“タラコ唇コンプレックス”をぶった斬る!!

美しくなりたい――世の女たちの狂おしい思いを、「44歳、ゲイ、汚部屋に一人暮らし」の漫画家・大久保ニューが担ぎ込む! 古今東西あらゆる美容法に食らいつき、美を追い求める女の情念まで引きずり出す――

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(C)大久保ニュー

 今回のコラムは「唇ケア」というテーマだが、「唇」に関しては……私、かなりのフェチなのである。「サッカー日本代表の長谷部選手が結婚か!?」の報道に、心底ブルーになるくらい、バリバリ男好きの中年ゲイである私だが、「唇」に関してだけはバイセクシャルなのかもしれない。今では完治した病だが、若い頃の私は、ステキな唇をした人と呑んで酔っ払うと、男女かまわずキスしないと気が済まない性質だった。さすがに見ず知らずの人にはしなかった(と思う)が、訴えられなくて本当に良かった。

 されど「唇好き」は今も変わらず、老若男女問わずキレイな唇を眺めると心潤う。いい大人になってからは、キスする代わりに、唇をホメるようになった。特に「こういう形がいい!」という定形はない。厚かろうが薄かろうが、なにか魅力的なフォルムだなと思える唇が好きなだけ。たいていの人は私にホメられると、うれしそうにしてくれるのだが、なぜか厚い唇の女子だけは不思議なリアクションをすることが多い。いぶかしがったり、怒ったり。今までで一番すごかったのは、殴ってきた上に泣きだした女子がいた。なぜゆえー?

 この連載の担当編集であるJ子の唇も厚い。上下共にぷっくりとした唇はチャーミングだし、コルギに挑戦した時に見たスッピンで、唇の色もすごく血色が良くて美しいことに気がついた。しかし「ステキな唇だね☆」とホメたら、不思議な生き物を見るような表情をされた。不安と驚きと警戒に包まれたJ子の顔を見て察しがついた。ねえJ子、アンタも子どもの頃に「タラコ唇」ってバカにされたクチだね?

 予想は大当たり。一体何度目だかの「J子のコンプレックス物語」、今回の「唇編」も、やはり小学校のクラスメイトから揶揄されたことから始まったらしい。これは今まで、私が唇をホメたら変なリアクションをした厚い唇女子、全員のトラウマの原因だった。コスメフリークであるはずのJ子は、アイメイクには尋常でないこだわりを持っているくせに、唇に関しては「目立たないように」しか考えていなかったらしい。「私の唇はヘンなんだって、ずっと思ってて!」と涙目で訴えてきた。唇にコンプレックスのある女子たちの傷は、想像以上に深いのである。泣くほどに。殴りかかってくるほどに。

 かくいう私の唇も厚い。そしてもちろん、小中学校時代には「タラコ」だの「大仏」だの言われていた。しかし、私が特に傷ついていないのは、もちろん幼少時から「唇フェチ」で、自分の唇を嫌いではなかったからだ。頑強なフェチ魂は「平均的じゃない!」などという幼稚な攻撃などでは傷つかないのである。むしろ「お前の唇、レアカード!」と認定されたような優越感があった。しかし、平均的をなにより好む日本社会では、周りと外れることに心を悩ませる人は多いであろう。特に自分が目にする世界だけが全ての幼少時は。特に特に顔のパーツを指摘された少女は!

 さて、どうして子どもは「タラコ唇」に異様に反応してしまうのだろう。何の学術的根拠もないが、私はその理由を「セックスを感じるから」だと思っている。昔から、成人映画やセクシーを表すマークは唇だった。その唇は、決まって「めくれ上がった厚い唇」である。子どもにとっても、厚い唇とは性の匂いがする代物だった。「性の発達」というのは、「子ども時代の終わり」であり、それは「大人からの庇護の終わり」だ。クラスメイトの厚い唇に、子どもは不安と恐怖を本能的に感じてしまうのではないだろうか。一方、親から「お前の唇は厚くてヘン」と言われて傷つくパターンもある。これは「子どものままでいろ!」という親の所有欲なのではないだろうか……って本当に何の根拠もないんだけど☆

くわばたりえに新たな需要が生まれた瞬間に立ち会えてうれしい

しぃちゃん

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