化粧品開発者が明かす「コスメ種あかし」

「化粧水より効果大」は嘘!  シートマスクの“特別感”イメージを演出する仕掛けとは?

2015/03/15 19:00
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(左)肌研(ハダラボ)「極潤 ヒアルロン液 170mL」(右)肌研(ハダラボ)「極潤 ヒアルロンマスク

 近年、大流行しているシートマスク。もはや「おうちケアのスペシャルコースはシート仕上げ」が常識になっているほどだ。その証拠に、ドラッグストアやコスメショップ、ひいてはコンビニのコスメコーナーにも、必ずシートマスクのコーナーがある。高級海外コスメブランドまでも、続々とシートマスクをリリースし、「毎日使っている化粧水よりもシートマスクでケアする方が、特別で効果的!」というイメージを持つユーザーも多いことだろう。しかし、本当にシートマスクと化粧水では、前者の方が肌に効果的なのだろうか? 化粧品開発者の尾崎幸子さんに話を聞いた。

――まず、シートマスクの一般的なイメージを教えてください。

尾崎幸子さん(以下、尾崎) 今では、30枚入りで1,000円ちょっとという安価な大袋タイプなどが発売され、デイリー使いをする方も増えていると思いますが、やはり特別な日の前夜にする「スペシャルケア」として使うものと考えている方も多いのではないでしょうか。製品によって差はありますが、ドラッグストアで売っているようなラインを一般的とするなら、これらのシートパックに配合されている成分は、同じシリーズの化粧水とほぼ同じです。メーカーによっては、化粧水ではなく美容液に配合成分が近いものもあります。

――シートマスクを使っても、化粧水を使っても、結果は同じということでしょうか?

尾崎 シートマスクは、「化粧水に配合されている成分に、カラギーナンやキサンタンガム、カルボマーといった粘度を上げる成分(増粘剤)を増やしているもの」というのが、同じシリーズの化粧水とシートマスクをそれぞれ検証した結果の印象です。なので、化粧水よりシートマスクを使った方が、より肌がきれいになる、ということは期待しない方がいいでしょう。

 また最近、化粧水にも使用されている増粘剤は、シートと肌の密着度を上げる、また液を垂れにくくさせるなど、使い勝手を上げるためのものなので、とろんとしたテクスチャは肌の上に“載っている”だけ。成分が肌に浸透して、保湿度がアップするというのとはまた別です。

――同じシリーズのシートマスクと化粧水では、成分的に決定的な違いはないとのことですが、あえて違う点を挙げるとすると……。

尾崎 一度に塗布できる量が違います。手のひらに化粧水をのせるより、シートに染み込ませた方が量を多くできるので、塗布量を確実に確保できます。手のひらでパッティングできる化粧水の標準値は約5mlですが、対してシートパックは、多いもので20mlほどの成分を1枚に含ませてあります。とはいえ、シートマスクに含まれている分の量を、化粧水で数回に分けて肌に塗布すれば、結果は同じといえるでしょう。

 「化粧水○本分が1枚に!」という謳い文句のシートマスクはよくありますが、それだけ美容成分が入っているわけではなく、単なる“量”の問題でしょうね。シートマスクだと、1回で塗布できる化粧水の○倍の量を1枚で塗布できるという意味です。そもそも肌が吸収できる水分量には限界があるので、シートマスクの方がより多くの量を吸収できると考えるのも間違いです。なのでシートマスクは、スペシャルケアではなく、あくまで毎日使用する化粧水代わりに位置づけた方がいいかもしれません。

――シートマスクを利用する上で、気をつけるべきことはありますか?

尾崎 エタノールが入っているシートマスクが少なくないのですが、規定の時間以上つけると気化が始まり、乾燥の原因になります。特に増粘剤によって、「乾燥していることに気付きにくい」こともあるので、注意が必要です。じっくり浸透させるために、長時間シートをつけている人もいるようですが、エタノールが入っていることもあり、シートに染み込ませた液体の蒸発とともに肌の水分が奪われる可能性も否めません。パッケージに書かれている規定の時間を必ず守るべきでしょう。

『肌研(ハダラボ)極潤 ヒアルロンマスク 20mL×4枚』
「シートマスクしちゃってる私」に高揚すると肌にもよさそう~!
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