[官能小説レビュー]

昔の女を忘れない男は面倒くさい!? 男目線のファンタジー『初恋ふたたび』が女に与える救い

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『初恋ふたたび』(イースト・プレス)

■今回の官能作品
『初恋ふたたび』(末廣圭、イースト・プレス)

 巷ではよく、男女の恋愛観の違いを、“PCファイル”に喩えることがある。女は別れた男との思い出を上書き保存するけれど、男は全ての思い出をフォルダに入れて永遠に保存しておく、というのがそれである。実際女である筆者も、昔の男の存在なんて記憶から速攻で消去する。恋愛を重ねることで自分をステップアップさせたい、絶対に前の恋人よりも条件のいい男を彼氏にしたい。だから、昔の男のことなど思い出す必要などない。

 しかし、男の中では、昔の恋人との思い出は何十年たっても色褪せることはなく、むしろ浄化されて美しい思い出へと変化する……今回ご紹介する『初恋ふたたび』(イースト・プレス)も、そんな男が主人公。ある写真家が、10年前の恋人との再会を夢見る物語である。

 出版社を退職して山岳写真家になった葛西。50歳を目前とした葛西は、写真家になってから移り住んだ長野県の小諸に特別な思いを抱いていた。

 今から10年前、出版社の写真部に勤務していた葛西は、アルバイトの女子大生・杏子とともに、2泊3日で信州を訪れた。仕事とはいえ、バツイチの葛西にとって、杏子と2人きりの旅行は非常に刺激的なものだった。温泉宿に宿泊し、混浴の温泉に入り、強くお互いを意識してしまった葛西と杏子はついに男女の仲となってしまう。杏子にとって、葛西があこがれの男性だったのと同じく、葛西の目にひと回りも歳の離れた杏子の体は眩しく映った。戸惑いながらも身を委ねる杏子を可愛く思う葛西。彼は杏子の“初めての男”となった。

 10年たった今でも、杏子の存在は葛西の中に息づいていた。彼女への思いを抱きながら、葛西は信州の地でさまざまな女性たちと体を重ねる。大家の若女将のみどり、出版社時代の元同僚の麗奈、蕎麦屋の娘の裕子。信州の長閑な地で、たっぷりと時間を使いながら葛西は女たちを悦ばせてゆく。そして、ある日。ふらりと立ち寄った居酒屋で、30歳の人妻になった杏子と再会をするのだが……。

 昔の女をいつまでも覚えている男を、女は非常に面倒くさがるものだ。それはつまり、若い女の体を覚えているということだから。ましてや杏子のように、10年前の恋人・葛西と再び肌を重ねることとなったとき、女はまず真っ先に過去の自分の外見を思い出すだろう。女にとっては罰ゲーム以外の何物でもないなと、本書を読んで率直に思ってしまった。歳を重ねた分、女の体は衰える。あちこちに脂肪を重ね、肌の弾力は衰える。昔の体を覚えている相手の前で裸になることほど、つらいことなどない。

 しかし、本書には救いもある。10年前の杏子のことを思い、「乙女」という名の駅に住むことにした葛西は、10年の時を重ね、衰えたはずの杏子の体を称賛する。昔の恋人と再会し、互いに求め合うというのは、男性目線のファンタジーだけれど、いくつになっても昔と変わらず愛してくれる葛西は、女の中の乙女心をも満足させてくれるのではないだろうか。
(いしいのりえ)

昔の男の残念エピソードは飲み会のネタにしてます!

しぃちゃん

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