[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」2月24日

老いとトラブルが同時に押し寄せる、中年女の覚悟を「婦人公論」から学ぶべし

2015/02/21 19:00

 一方、「精神的につらかった時期」も40代50代に集中しています。読者コメントには介護、認知症、夫の浮気、子の受験、借金……などおなじみの単語が所狭しと並んでいます。「母ががんで余命宣告され、毎日病院へ、帰宅すると認知症の姑が事件を起こす毎日。母の前では平静を装い、帰りの電車で泣いていた」(58歳のとき/主婦・63歳)、「孫ができたが、嫁が産後うつで赤ちゃんの世話ができず、私が仕事をしながら夜は乳児の面倒を見ていた」(50歳のとき/教員54歳)などなど。女の四十路五十路とは、「娘」と「母」と「嫁」と「妻」と「祖母」を同時進行でこなさなければならない、人生で最もハードな時期なのです。

 そんなハード期を過ぎた先輩からのアドバイスがこちら。「お金は必要。すべてお金だと思います。貯蓄を心がけて」(管理人・66歳)、「若いうちに生きがいを見つけておくこと。家族に尽くすばかりで、気が付いた時に手遅れとならないように」(主婦・62歳)など心に沁みます。ヒロイズムに酔いしれて「家族のため」「子どものため」と生きてばかりいたら、あっというまにシミシワは増え、関節は痛み、家族からは便利屋扱い……「介護しながら自分も年をとる。やりたいことはあきらめないで!」(主婦・63歳)。なんて重みのある「あきらめないで」でしょうか。先達から重たい重たい人生のバトンを渡された思いです。

■これが本当の「相方」

 先達からのアドバイスには、こんなものもありました。「困難の時、心の内を話せる友人がいること」(主婦・70歳)。女友達は、ときに嫉妬や憎悪の対象となり、確かにこじれると面倒臭い人間関係ではありますが、でも同じ人生の辛酸を舐めたものとして、特別な存在になる可能性も。このじめじめとした女の節目特集の中で、一筋の光を与えてくれたのが、「いくよちゃんに、まさかのがん宣告。『命だけは助けて!』と願った日」です。ベテラン漫才師、今いくよ・くるよ。「どやさ~」でおなじみのくるよちゃんが不整脈で倒れ、心臓のバイパス手術を受けたのが5年前。そして昨年の9月には、相方のいくよちゃんに胃がんが見つかり、12月初めまで長期休養を余儀なくされました。それぞれの病気は「今いくよ・くるよ」にどんな影響を及ぼしたのかを語っておりますが、これがなかなか涙なしには読めない対談です。

 長年、酒とたばこを愛する昭和の芸人らしい自由気ままな食生活を送っていた2人ですが、食欲が減退し、念のために行った病院でがんの疑いを告げられ、すぐに大きな病院で検査をすることになったいくよちゃん。検査の日はくるよちゃんも同行し、先生から結果を宣告されるときは「横でくるよちゃんが『先生、命だけは助けてください、命だけは!』って一生懸命お願いしている姿を見て、『ああ、いい相方をもったなぁ』って思いました。本当は自分が言いたいけど口に出せないことを、くるよちゃんが代わりに言ってくれて」(いくよ)。

 現在いくよちゃんは抗がん剤治療の経過を見ているようで、手術を含めた処置はこれからの課題。「いくよちゃんが入院中は、私一人で仕事してたので、『普段なら私がこう言うと、いくよちゃんがこう返してくれるのに』と戸惑ったわ。漫才は二人で一つお仕事やから」というくるよちゃんの言葉に、2人が今までに築き上げてきた関係がうかがえます。

 人生いろいろあるからこそ、身近な人が特別な存在になり得る。つらいことも「どやさ!」と笑い合える。いくよ・くるよの2人には、決して勝ち負けでは測りえない、人生の味わい深さ、面白さがあったのでした。
(西澤千央)

最終更新:2015/02/21 19:00
婦人公論 2015年 2/24 号 [雑誌]
中年女性の理想は、いくよ・くるよ師匠だった!
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