男と女の溝は埋まらない?

“性”潔癖症がAVエキストラに――撮影現場を通して見えた“男に消費される”嫌悪感の正体

2015/02/14 19:00
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Photo by Ricardo Diaz from Flickr

 突然だけど、AVのエキストラに行ってきた。そもそも「エキストラ」とは、そのストーリーに現実感を出すためのモブだ。AVの、といっても、特別なことはなくて、ほとんど映画やドラマと同じ。あくまで、性行為をする男優と女優が引き立つように、エロとはかけ離れた存在を担う。またAVの場合はエキストラに軽くセリフがつくこともある。素人のくせに役者もどきのことができるのだ。これは気軽かつ面白そうだ。

 ところが私には、大きな問題がある。私は、“自分を性の対象として見られること”に、けっこうな嫌悪感があるのだ。最近はほどよく歳をとったせいか、社会が変わったのか、電車に乗っても痴漢に遭わなくなったけれど、若い頃は大人しそうな外見がいけないのか、混んだ電車で身構えずにはいられないくらい、よくよく痴漢に遭った。見ず知らずの人間に自分の体を消費されることが、たまらなく腹立たしかった。今でも、れっきとしたパートナー以外と関係しようとはさらさら思わないし、男性から無責任にセックスに誘われるとイラッとする。そんなことしたって私のメリットはひとつもないからだ。

 そんな、ある意味“性”に潔癖な人間が、女の体を消費するツールである“AV”の撮影現場に行くのだ。今まで興味本位で、飛田新地や雄琴といった有名風俗街に興味津々で行くたびに、女が単なるモノ扱いされて欲望のはけ口になっているところを見て、すっかり疲弊して帰ってきたのだった。今回もそうなるんじゃないだろうか……。いや待て。という不安はありつつも、好奇心が勝ってしまった。とことん男目線のAV撮影現場がどんなところなのか、この目でじっくり見てみようじゃないか。

■AVエキストラに大切なこと

 AVエキストラの仕事の日は、朝8時や10時といった時間に指定された場所に集合して、衣装(自前のことも多い)がある場合は着替えて控え室で待機する。たいていは2〜6人くらいエキストラ仲間がいる。 現場によって人数も年齢層もバラバラで、20代から上は60代くらいまでと幅広い。呼ばれたら収録に参加して、終わったら解散。日払いで、その日の拘束時間がどれくらいになるかは、終わってみないとわからないけど、5~10時間くらい。待機時間も時給に含まれるので、だいたい1回1万円くらいになる。

 私が訪れたことがある現場は、バス内での痴漢ものAVだ。「混んだバス」を演出するため、バスの乗客の役をやったのだが、レンタルしたバスに乗り込み、ひたすらバスに揺られ続けた。その間、男優さんが女優さんに痴漢をするシーンを撮るのだが、「行為に気付かない役」なので、物音や声はするけど、何が行われているのかは見られない。男優さんの背中が、どしんどしんと自分の背中に当たるなと思い、思わず振り返ったら、女優さんの脚がぬるりと自分の方に投げ出されていて、びっくりした。どうやら行為シーンの最中だったらしい。

『職業としてのAV女優(幻冬舎新書)』
AVの撮影現場は至って普通
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