『なんかおもしろいマンガ』あります ~女子マンガ月報~【11月】前編

『あれよ星屑』『あとかたの街』、本ではなくマンガだから伝わる戦争と愛と人間

 女子マンガ研究家の小田真琴です。太洋社の「コミック発売予定一覧」によりますと、たとえば2014年10月には997点ものマンガが刊行されています。その中から一般読者が「なんかおもしろいマンガ」を探し当てるのは至難のワザ。この記事があなたの「なんかおもしろいマンガ」探しの一助になれば幸いであります。前編では10月の話題のマンガと少女マンガ誌の最新情報をご紹介します。

【話題】今やマンガこそが出版界の良心! 愛と戦争を描くマンガたち

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(左)『あとかたの街』2巻(講談社)、(右)『あれよ星屑』2巻(KADOKAWA/エンターブレイン)

 書店では相も変わらず愛国バカの三文小説や愚にもつかないヘイト本ばかりが幅を利かせておりますが、ことマンガにおいては多様な言論・表現の世界が繰り広げられています。特に昨今「戦争」を描くマンガに際立ったクオリティを見せる作品が増えつつあります。この10月だけでも3作品の素晴らしい最新巻が刊行されました。

 8月の「このマンガがすごい!WEB」オンナ編のランキングでみごと1位に輝いたおざわゆき先生の『あとかたの街』2巻(講談社)では、いよいよ空襲を受ける名古屋の街の様子が生々しく描かれます。中でも食べものに関するエピソードは印象的です。

 物資の統制がますます厳しくなる中で、食材と燃料を節約するべく隣組での「共同炊事」なるものが推奨されるようになりました。その共同炊事である日作られていたのが、主人公が苦手としていた「人参ごはん」。いけないと思いながらも一瞬イヤそうな顔をしてしまった主人公に、近所の口うるさい愛国オバサンがこう言い放ちます。「このご時世に好き嫌いしてるなんてなんちゅうバチ当たりな子だろうね」「物が手に入らない今は何でも美味しくいただくっちゅうのが人の道ってもんじゃないの!?」「いったいどんな育て方をされたんかね!?」

 言い返すことができない主人公。しかし彼女をかばうように友人の洋三は反駁します。「しゃあないやんか、嫌いなもんは嫌いで」「こんな時だろうが美味しい思えんものは美味しないんだわ」「無理やりに食べてすぐ美味しいなんてなるわけないやんか。別に嫌いだから食わないってんじゃなし」。そしてこのひと言。「そんくらい思ったって自由なんちゃうの?」

 「銃後」を描く『あとかたの街』の一方で、山田参助先生の『あれよ星屑』(KADOKAWA/エンターブレイン)は「前線」を描きます。2巻は物語の舞台を戦時下の中国へと移し、主に主人公2人の出会いが回想されますが、なによりも強烈なのが黒田一等兵の荒れ狂う性欲です。久しぶりの外出日にピー屋(慰安所)へと繰り出す兵隊たち。ご多分に漏れず黒田もまたピー屋へと向かうのですが、なんと3軒をはしごすると言います。しかもその行為の荒々しいことと言ったら! 1軒が終わると「えっほ、えっほ」と走って次のピー屋へ。そんな調子で3軒回ってもなお満たされない黒田は、ついに将校専用の慰安所へと押し入るのですが……。

 死と隣り合わせの前線にあって、黒田の凶暴なまでの性欲は、1人の人間の燃え盛る命を鮮やかに象徴します。川島軍曹は黒田に言います。「人間ってのはわからんな。命を取ったそばから命の種をまきたくなるのは、どういうわけだ」

 「愛と戦争」というテーマは萩尾望都先生の『王妃マルゴ』(集英社)にも通じます。男の側から描く『あれよ星屑』と、女の側から描く『王妃マルゴ』を読み比べてみるのもおもしろいかもしれません。それにしてもやはりつくづく山田先生の絵は魅力的です。今巻では89~90ページの浮子の絵の美しさに思わずため息をつきました。必要最小限の線で描かれた着物のフォルム、臀部の官能的なライン、足の裏の愛らしさ、煙草を持つ手の美しさ……髭面の男たちも魅力的ですが、この女性の美しさときたらどうでしょう。

 詩人たちの狂気と美を斬新な手法でビジュアライズした清家雪子先生の『月に吠えらんねえ』2(講談社)では、文学者たちの戦争責任に触れられています。停電のせいか、ハードディスクレコーダーの時刻がずれてしまっていたことに気がついた「朔」。面倒臭いからと適当に「1945/03/10」と日付を設定した途端に、あたり一帯に大量の焼夷弾が降り注ぎ始めます。そう、この日は東京大空襲の日。

山田参助センセも密かにサイ女の連載陣という不思議

しぃちゃん

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