[サイジョの本棚]

「東京/地方」「夢/仕事」は、対立ではなく地続きな問題と教えてくれる4冊

――本屋にあまた並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン(サイ女)読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します!

『シャバはつらいよ』(大野更紗、ポプラ社)

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 25歳で突然、治療法が確立していない難病に襲われた女性が、戸惑い苦しみながらもどこか軽妙な筆致で疾患と闘う日々をつづり、ベストセラーとなったエッセイ『困ってるひと』(ポプラ社)。『シャバはつらいよ』は『困ってるひと』のその後、病院を出て一人暮らしを始め、「難病おひとりさま」となった日々を書いた一冊だ。

 自宅のドアを開けるにもひと苦労する体で、自炊し、通院し、コンビニに買い物に行く日々。ユーモラスな語り口ではあるが、彼女から見た“シャバ”のシステムは、基本的に「一人で何でもできる健康な大人」が利用する前提で作られていることに気付かされる。それでもパワフルでしたたかな介護業界の人々や、インターネットでつながった人々からの助けを得て生命をつなぐ大野氏。そして東日本大震災を経て、彼女の心境に変化が訪れる――。

 彼女自身が「難のクジを引いた」と表現するような、自分の力ではコントロールしようのない不条理に襲われた時、そのつらさや孤独と正面からどう向き合うべきか。大野氏は、生きる意味を何度も見失いかけながらも、ほかの“困ってるひと”に手を差し伸べることで、自分と社会の関わりを濃くし、次の日を生きる希望をつないでいく。「一人で何でもできる健康な大人」とはまったく別のアプローチで“シャバ”を生きる彼女の姿は、いつまでも「健康な大人」とは限らない私たちにとっても、一つの成熟した生き方を示してくれる。

『さみしくなったら名前を呼んで』(山内マリコ、幻冬舎)

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 『さみしくなったら名前を呼んで』は、年齢も住むところもバラバラの11人の「普通」の女性を主人公にした物語が収められた短編集だ。一言で「普通」といっても、地方か都会か、若いか老いているか、ブスか美人か――さまざまな違いで、その世界は微妙にズレていく。

 東京でWEBデザイナーをしながら実際は飲食店のバイトで生計を立てる主人公が、かつての親友と地元のショッピングモールで過ごすひとときを描いた「遊びの時間はすぐ終わる」は、地方と東京の「女子の王道」の違いを浮き彫りにする作品だ。

 「20代前半までが女としての楽しむピークで、その後は結婚して子どもを育てるために生きるべき」という価値観が生きている地方と、年齢や結婚からは比較的自由でも「何歳になっても、自分を磨いて美しくあるべき」という欲望が付きまとってくる東京。そして、どちらの価値観にも乗り切れない主人公――。

 どの作品の登場人物たちも、自分の選択を自信満々で選んではいない。かつて隣で通じ合っていたはずの友人に、時にはテレビや雑誌で微笑む女性に、自分が生きたかもしれない人生を見つけてしまう。それでも、11の短編を通して俯瞰することで、そのさみしさ自体が、自分の人生を歩んでいる証しでもあることに気付かされるのだ。

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