角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第76回

いよいよお受験シーズン、「胃が痛い」「情緒不安定」と保護者も保育園もピリピリ

2014/11/01 16:00
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今年もスタッフがハロウィンかぼちゃを作ってくれました。去年は娘のお受験で、正直、鑑賞するどころではありませんでした。今年のお受験日は学校がお休みなので、娘と2人で京都に行ってきます

 角川家のお受験から1年がたちました。幼稚園&小学校受験は、東京都だと11月1日前後に行われるのですが、駒沢の森こども園でも若干ピリピリモードになっています。今年お受験のママには「体調は大丈夫ですか?」「願書のコピーを取って、お父さんと読み返してください」など声掛けをしているのですが、「胃が痛い」「たぶん子どもが泣くと思う」などネガティブな答えが返ってきます。お教室のママ友・幼稚園のママ友は、敵意むき出し(経験済)なので、今の時期、悩みや弱音は合否に関係がない相手に話した方がいいかもしれませんね。 

 お受験の近い子どもは、頭のいい子ほど状況をわかっているので、プレッシャーやお母さんの精神状態をくみ取って、情緒不安定になっています。私も、保育士が散歩に連れていくとき、「○○ちゃんは明日お受験だから、絶対にけがをさせないで!」と念を押して声を掛けます。娘がお受験直前にけがをしたこともあって、この時期は特に慎重になりますね。転んで擦り傷を作ってもいけない時期なので、ピリピリしてしまいますよ。とにかく元気に送り出してあげることが保育園の務めです。長い人生の中で、幼稚園受験や小学校受験は小さなことかもしれませんが、その真っ最中にいる親子はそれが全てなのです! 「重大さをわかってよ!」という親の気持ちをよく理解しているので(こちらも経験済)、私も真剣。そこを理解せずボヤッとしているスタッフがいると、「これが人生最後のお受験の子もいるんだよ」(一貫校の場合)と叫びたくなります。

■セレブ保育園でも“ユニクロかぶり”は多い

 ピリピリしているせいか、スタッフのミス&保護者からの指摘があった場合、普段あまり怒らない私ですが、結構きつく怒ってしまいます。お受験をする保護者とは日ごろから面談したり、メールのやりとりをしており、なにかあれば私に直接言いやすい環境なので、本音を聞くことができるのだと思いますが、保護者からのクレームの類いはあってはならないこと。

 大きなミスを犯したわけではないのですが、あるスタッフに対し「笑顔がない」と3人の親からクレームがきました。そのスタッフは引っ込めて裏方に徹してもらうか、がんばらせるか……考えた末、「次にクレームがきたら、今後保護者の前に出させません。そうなるとほかのスタッフへの負担が増えるので、減給します」と本人に言いました。久々に怒りましたね。自己啓発セミナーにでも連れていった方がいいのかも? と思いましたが、本人が考え行動するのみです。

 前述のスタッフだけでなく、ほかのスタッフにも「赤ちゃんは大人の笑顔を見て笑うことを覚えるから、自然に笑うことができないなら考えなさい」とよく話しています。本当は「考えなさい」ではなく、「辞めなさい」が正しいかもしれませんが、希望も含め「考えなさい」です。職場と逆方向なのにわざわざ車で通園してくれる親、ほかの園から転園してきた親、うちに通うために引っ越しまでした親……そんな保護者たちに支えられているのに、甘い対応はできません。園が有名になるにつれて、「求人はありませんか?」という問い合わせも増え、子どもと相性のいいスタッフを以前より見つけやすくなりました。

 ほかに頭を悩ませていることといえば、記名がない衣服の間違いです。多いのは断然靴下ですね。名前が消えてしまったり、黒や紺の靴下だと記名していなかったり、常に間違いが起こっています。洋服も人からお下がりをもらって、前の持ち主の名前がそのまま書いてあったり……ユニクロやGAPの普及で、同じ服を持っている子たちが続出しています。子どもってサイズ感が適当じゃないですか。来年も着られるように大きいものを買ったり、逆にもったいないから去年のものを着せていたり。サイズでは誰かは判別できず、嗅覚での判別に頼るしかないです。それでも90%ぐらいしか持ち主を特定できないので、保護者に謝ってばっかりです。3歳以上の子どもには、自分で脱ぎ着をさせ、着替えはロッカーにしまわせ、帰りはかばんに入れさせているので、子どもがロッカーの位置を間違えたり、自分の服だと思い込んだり(家に同じ服を持っている)するケースもあります。

 セレブ保育園だからって、伊勢丹で売っているようなものを着ている子どもは一部なので、犬並みの嗅覚を持つ保育士に頼るしかないのが実態かな。

角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では6歳の愛娘の子育てに奮闘中。

最終更新:2014/11/01 16:00
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