[連載]悪女の履歴書

“お受験殺人”の名で隠された、「音羽幼児殺人事件」“ママの世界”の本質

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Photo by Shirley poppy_16 from Flickr

(事件概要等の前編はこちら)

■ママ友との出会いと感情の捻じれ

 そんな時に出逢ったのが宮川というママ友だった。

 宮川はみつ子にとって今までに接したことがない素敵な女性だった。都会で育ち、洗練されたファッションで気さく。社交的な宮川と一緒だとほかのママ友とも話ができ、世界が広がった。

 しかし、そんな関係が1年ほど続いた頃、みつ子は「疲れ」を感じてきたという。それはみつ子に第二子となる長女が生まれ、翌月に宮川も同じく長女を出産した1997年初頭のことだ。みつ子の法廷での証言を聞くと、宮川への感情は通常では理解しがたいものだ。

 例えばこの頃親しくなったもう1人のママ友と宮川が話をしているだけで、みつ子は疎外感を感じるようになったという。さらに、幼稚園では「幼稚園からまっすぐ帰る」よう言われていたが、ほかのお母さんたちはおしゃべりを続け、連れ立って公園に行く。規範意識の高いみつ子には、それがルール違反に思える。そうした母親たちに対する苛立ちは、なぜかもっとも親しかった宮川に向けられていくのだった。

 またこんなこともあったという。

「すべり台でうちの長男と他の二人が遊んでいて、『もう帰りましょう』と呼びかけると、その一人が降りてきたんです。宮川さん(著書では実名)はそれを見て、『さあ、○○くんが行くから帰ろう』と自分の子に声をかけたんですが、そこでうちの子にも帰ろうと声をかけて欲しかったんです」(『音羽お受験殺人』より)

 多くの人にとっては些細なことだと思うことでも、みつ子は自分の長男が宮川に差別されたと感じてしまう。身勝手で一方的なる被害妄想だが、もう1つこんなエピソードも犯行動機として法廷で語られた。

「遠足に行った際、宮川さんにそろそろ帰りませんかと声をかけたが、『ええ』と言ったのに、他のお母さんと話し込んでしまった。電車に乗ると、宮川さんも同じ電車だった。『先に行ってて』と一言いってくれればよかった」

 通常では理解しがたい感情だ。だがこうした些細な心理こそ、ママ友同士の微妙な関係を物語っているのかもしれない。

 みつ子にとって、子どもを介した人間関係は生活の大半を占める。中でも宮川の存在はみつ子にとっては大きいものと映った。だからこそ、宮川のことが心の大半を占めるようになり、その感情はなぜか急速にネガティブな方向へと転がり落ちていくのだ。生来、被害者感情の強い傾向にあったみつ子の性格がそれに拍車をかけた。

ママと子どもの閉ざされたもうひとつの社会

しぃちゃん

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