介護をめぐる家族・人間模様【第42回】

通勤の途中で介護する一人息子「自分の親のことだから、妻には負担をかけたくない」

2014/10/26 19:00
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Photo By aitwo2 Flickr

 前回、嗅覚と寿命の関係について書いた。自分の嗅覚に自信がなくなっていた今日この頃であったが、ここのところ冷蔵庫から甚だしい異臭が……。原因は捨て忘れたイカのワタだった。まだだまだ嗅覚は大丈夫ねと喜んだものの、今度は物忘れが気になる。

<登場人物プロフィール>
市橋 雅也(47)サラリーマン。名古屋近郊に妻、2歳の子どもと暮らす
市橋 仁美(43)雅也さんの妻。専業主婦
市橋 昭太郎(82)雅也さんの父。妻を6年前に亡くし、名古屋近郊のマンションで一人暮らし

■親は駅近マンション。自分たち家族は実家に
 市橋さんは、生まれ育った名古屋近郊の実家で暮らしている。電車に乗っている時間は40分ほどなのだが、自宅は駅からバスに乗って20分。会社まで1時間以上かけて通勤している。

 市橋さんは40歳を過ぎて結婚した。子どもが生まれるまでは実家の最寄り駅に近いマンションで暮らしていたが、子どもが生まれたのをきっかけに実家に戻った。といっても、実家で親と同居しているわけではない。

「親と入れ違いなんです。私たち家族が私の実家に戻り、父が駅前のマンションに移ったというわけです」

 実家で同居ではなく、“住まい交換”。親子の新しいパターンだ。どうしてそういう住み替えを?

「私が結婚して家を出た後に、母が亡くなりました。私が40過ぎても独身だったので、両親にはずいぶん心配をかけましたが、母が亡くなる前に嫁さんを見せることができてよかったと思いました。ただ私は一人っ子なんで、結婚するときに、妻だけに親の介護をさせるようなことはしないと約束していました。だから母が亡くなって、父が一人暮らしになっても同居しようとは言い出せませんでした」

 まもなく子どもも生まれ、妻は子育てにかかりっきりになった。

「私もできるだけ子育てには協力するようにしました。一人暮らしをしている父のことが気になってはいましたが、仕事と家のことが忙しく、なかなか顔を出す時間もありませんでした」

『迫りくる「息子介護」の時代 28人の現場から (光文社新書)』
それぞれのやり方があっていい
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