[連載]安彦麻理絵&田房永子「オンナの絵日記」

逃げ出したい願望が渦巻く夜、「全てを捨てた!」気分に浸る“ひとり回転寿司”

2014/10/16 21:00

 女の荒ぶる激情や秘された感情を描き続ける2人の漫画家−−40代・子持ちの安彦麻理絵と30代で同じく子持ちの田房永子。女たちの喜怒哀楽と、そこからはみ出る感情をもつづる、2人の交換日記がスタート!

<10月1日> 安彦麻理絵

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(C)安彦麻理絵

 いよいよ秋めいてきましたね。こんにちは。
 
 今日、私、昼に久々ラーメン食いました……けどコレが、相当ブスいラーメンで。「ドブスラーメン」と言っても差し支えないような、そんなラーメン。麺の上に、これでもか!! と、モヤシをこんもりそそり立たせた、「ラーメン二郎」を彷彿とさせるようなシロモノ。モヤシマウンテンの脇には、分厚くぶった切ったチャーシューが「ブル~ン」、味の染み込んだ真っ茶色の味玉が「ドデ~ン」……。威風堂々とはまさにこのこと、って見てくれのラーメンでしたが……案の定。モヤシ、食っても食ってもどこまでもいってもモヤシのジャングルで、なかなか麺に到達できない。

 「あら、モヤシまみれでヘルシーじゃないの」と、一見思われそうだけど、顔とテーブルに汁とアブラ、はね散らかして、七味かけまくってモヤシと格闘してる様は、ぜんぜんヘルシーにあらず。そして、ようやく麺が見えてきたかと思ったらこれが、ものすごい極太麺!! もうね、麺というよりも、シナチクでも食ってんじゃないかってくらいにぶっとくて、博多ラーメンとかの超極細麺が好きな私にとっては、ある意味「拷問系ラーメン」。「……一体自分は今、何食ってんだろう?」と、頭モーローとする中、隣を見ると、夫も必死の形相でラーメンをすすり上げてる。そんな姿を見ていたら「……なんか運命共同体って感じだな……」と、急に夫に対してそんな感情が湧いてきた。

 そして、愛しさと切なさと心強さとモヤシと麺のせいで、何をトチ狂ったか「……大好きだよ……」等と、薄ら笑いで愛の言葉を吐き出す始末。「……俺もなんだかワケわかんなくなってきたよ…」「……アタシも…」夫婦の愛を確かめ合えるラーメンって初めて食ったけど、とにかくまぁ、「モヤシと麺と背アブラ」に翻弄されると、人間、こんなふうになっちゃうんですねぇ。ちなみに、背アブラ追加でトッピングしてる人のラーメンなんてもう、すごかったですよ。まるで「モヤシ山の上に射精でもしたの!!??」とでも言いたくなるような、ぼっけぇきょうてぇ、ほんっと恐ろしい見た目のラーメン……それを若い男がガフガフ食ってるんですからねぇ、あんなアブラ、初めて見たわ。つくづく「ラーメンって体力ないと食えねぇシロモノ」って思った次第です。(ちなみに私、今回は完食できませんでした……こんな惨敗って初めて……!!)

 ところで私、たま~~~に、夜中のラーメン屋に「家出」する時がある(最近はしなくなったけど)。子ども3人立て続けに産んでからここ数年、たま~~~に「……ここではないどこかへ!!!」と、切実に思う時があって、そんな時は、家族が寝静まったのを見計らって、1人でこっそり、夜中もやってる近所のラーメン屋に「家出」するわけです。で、瓶ビールなんか飲みながらラーメンかっ食らうという、まさに、デブ一直線な事をやらかすんだけど、これがなぜか気分爽快なの。

『呪詛抜きダイエット』
回転寿司の瓶ビールでなだめる逃亡欲求
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