[女性誌速攻レビュー]「VERY」10月号

「子育て後のオシャレ」「パパ友との不倫」ママの自己肯定感を煽る「VERY」の巧妙な仕掛け

2014/09/14 16:00

■「VERY」に闇が必要なワケ

 「VERY」のファッションページというのはおおむね、この「ママになれた私は尊い」という自己肯定感でできています。今月号の第一特集「週7パンツ派の秋ボトムス更新計画」も、ほかの女性誌のように、単にパンツのコーディネートを紹介するということでは終わりません。「どんなにスカートが流行っても、家事に子育てにがんばるママの基本はやっぱりパンツなんです」という言葉から、私は自分がはきたいからパンツではなく、ママとして頑張らなければいけない必然性からのパンツなんです、という気持ちが見えてきます。

 オシャレひとつとっても、自分の意思ではなく、子どもや旦那など、他者との共生の中での必然性が私のオシャレを決定する……それは「VERY」のママ読者に、かけがえのない家族との「つながり」を感じさせ、さらに自己肯定感を強固にさせているように思います。

 ただ思うに、ファッションページの自己肯定感が強くなると、「VERY」読者同士の絆を弱めることにもなるかもしれません。なぜなら、こうしたファッションページは、「VERY」妻たちの光の部分にすぎず、一人ひとりの家庭を見ていけば、なにかしらの闇の部分が必ずあるから。

 だからこそ、「VERY」の闇の部分として、読み物ページでは、家庭内のどす黒いテーマを取り扱うべきなのです。「自分は王道のママから外れているかもしれない」と思い悩む人が、「同じようなママがいた!」とホッとできるようなページがあれば、読者同士のつながりが強まっていくはず。そんなどす黒い読み物ページに違和感や拒否感を持つ読者がいても、雑誌全体の自己肯定感を強めるための好転反応として、実は必要なものであるとも考えられます。

 しかし、今月号にはそんな「VERY」の闇の部分がない! 読み物ページは、「私って低気圧不調だったの!?」「寄宿制学校を選んだママたちの本音」「私たちの『加族』体験」など、なんとも無難なラインナップ……。

 唯一、闇を感じたのは、「私たちの『加族』体験」でのある体験談でしょうか。これは「義母や留学生など、従来の家族に誰か1人加わることで、化学反応が起こるかもしれない」というテーマの元、体験談が紹介されているページなのですが、その中に、「専業主夫をしているパパ友と不倫関係となり(ここでは彼氏と書かれていましたが)、そのパパ友に家のことを相談しているうちに、夫との不和も気にならなくなって逆に家庭円満」というものがありました。

 正直、不倫や婚外恋愛にありがちな話ですが、このエピソードの扱いはたったの1/2ページ。家庭円満にというオチは別として、こうした“不倫”という異物こそ、「VERY」には必要なのでは……と思ってしまいました。「VERY」妻の光ばかりが目立っていた今月号、もっと闇の部分をと思ってしまうのは、筆者が“外野”だからなのでしょうか。
(芹沢芳子)

最終更新:2014/09/14 16:00
『VERY(ヴェリィ)2014年 10月号 [雑誌]』
劣等感に打ちひしがれないと「VERY」読んだ気がしねえ
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