今井舞の「週刊ヒトコト斬り」

日航機墜落事故を希薄に描いたフジテレビドラマに思う、ドキュメントのあるべき姿

2014/08/15 21:00
hujiaiarukagiri.jpg
『命ある限り戦え、そして生き抜くんだ』(フジテレビ)公式サイトより

――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!

◎余白は塗りつぶしてこそのフジ
 事故機ボイスレコーダーの、より鮮明な音源を入手し、事故の原因と解明されていなかった会話の詳細部分が今、明らかに! あの日航機墜落事故を扱ったドキュメント『8・12 日航機墜落30回目の夏 生存者が今明かす“32分間の闘い”~ボイスレコーダーの“新たな声”』。長いなタイトル。放送はフジテレビ。この音源を入手したのがNHKだったらなぁ。『Nスペ』ならきっかり50分でまとめてくれる内容を、薄めて伸ばして2時間半。再現ドラマだの、御巣鷹山から生中継だの、音声検証だの。腰を据えずに行ったり来たりするつくりで、結局何が新情報なんだか後味さっぱり。この「再現ドラマ」って、ほんと脳偏差値低めな仕上がりになるよなぁ。ババーン! ジャーン! って大仰なBGMがまた『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)みたい。ま、『ザ!世界仰天ニュース』ぐらい咀嚼して沸点を低くしないと、『Nスペ』の余韻と静寂にはついていけん、ていう脳年齢層の人がいっぱいいるってことなんだろうなぁ。

 再現ドラマなんかなくとも、遺族の今の証言と、残っている当時の映像だけで、ちゃんと全て伝わるのに。こちらで考える余白ってものを与えてくれないからな「再現ドラマ」は。来年の「戦後70周年」という節目に向け、民放各局は、今から「あなたの戦争の話を聞かせてください」って証言や資料集めたりしてるみたいだが。あー、何かイヤな予感がするな。来年の夏は、民放各局『ザ!世界仰天ニュース』乱発か。

 いろいろ問題が取り沙汰されるNHKではあるが。戦争ドキュメントだけは、NHKに一括してもらった方が、後世のためにもなると思うんだが。この番組の翌日に放送された、ペリリュー島特集の『Nスペ』の壮絶さたるや。見終わったら2キロ痩せてた。嘘だが。証言と映像と余韻と。どのドキュメントもこうあるべきだが、戦争ものは特にこうじゃないと。同じくペリリュー島の戦闘をテーマにしたドラマを、日を開けずにフジが放送するらしい。この日程に「あの『Nスペ』の後で、一体どんな顔してドラマなんかやれるんでしょ。ま、お手並み拝見(笑)」という、NHKの根拠ある意地の悪さを感じた。

◎すわ、電通か!?
 タイの代理出産事件。第一報では、代理出産を装い、何か子ども集めて臓器売買でもしてんじゃないのか、と背筋が寒くなったが。どうも子どもはホントに件の日本人男性の子らしい。その数15人以上。うーん。ますますよくわからん。なんでそんなに自分の子をわらわらと。クモか? ネズミか? いや、ビッグダディだ! これは『富裕層版・痛快! ビッグダディ』ってことなんじゃないだろうか。子どもはあらゆる国籍から集め、0歳時から全員英才教育。知力・体力を伸ばし、帝王学も叩き込み。そして最も優秀な子に多くの遺産を継がせる。その道程で子どもたちに注がれる、新ビッグダディのまなざしの冷徹さやいかに。テレビ朝日で今年末、たぶんスタート。見るなコレ。

◎これぞ再現ドラマネタ
 会見芸人に新キャラ登場。また地方議員か。「公人であるテリー伊藤様」ってのには笑ったが。こうやって、いちいち弁護士つけるってのは、見ていてホントにムカムカするな。三浦和義が開拓し、小保方さんが軌道に乗せた「奥義・弁護士づけ!」。あーウゼえ。「中学生とLINEして、仲間外れにされてキレて恫喝」ってのは、もうあなた、社会的には死んでるんですよ。「いかに自分が間違ってないか」を滔々と語るその顔つきが、あなたの人間性の間違いを雄弁に語ってるんですよ。

 バブルの頃、大小いろんな会社で、流しみたいに契約の受付をやってたことがある。どこの会社にも、「あ~、何でこんなヤツ雇ったんだよ」という、地雷扱いされている社員が必ずいた。もう何年も自律神経を悪くして休んでいるが、自分の誕生日だけ、会社からのお祝い品を意気揚揚ともらいに出勤(母親同伴)する40代男性とか、がんで体を悪くして、そのこと自体は気の毒なのだが、前線から総務に異動になると、もう何か世捨て人みたいにヒネちゃって、コーヒーフレッシュやトイレットペーパー、ボールペン等、ありとあらゆる備品の1つ当たりの底値を全メーカー徹底調査させ、総務課全員をノイローゼ状態に陥らせた50代男性とか、取引先との接待ゴルフで、先方の社長に有利なスコアが付いた途端「そーいうの、ありえないッ」と大泣きして抗議し出した大学ゴルフ部出身の新入社員とか、理由はまったくわらかないし、誰も聞けないけど、ほかの身だしなみは普通なのに、スネ毛だけボーボーにストッキングから生やしてる女性社員(30代)とか、ほとんど通勤しないが、たま~に来て受付前に黙って立ち、「いらっしゃいませ」と声がかかると、「私は社員だ! なぜ顔を覚えてない! そんなんでなぜ受付が務まる!」と怒鳴りちらし、両親が迎えに来るまで来客スペースで粘るという行為を、数年に1回儀式のように繰り返す40代男性とか。何かいろいろ思い出しちゃったなぁ。受付で一番紳士で感じ良かったのって、なんだかんだで、ソーカイ屋のおじさんだったりしたなぁ。

 話が逸れたが。ブラック企業ばかり話題になるが、こういう、明らかにヤバいオーラビンビンの、ハズレ人間というのも、どの職場にも必ず一定数いる。別に罪を犯したわけではないが、関わる全ての人間や組織に累を及ぼす。こういう人物に対する、健全な社会の反応というのは、「極力関わり合いを断つ」。これに尽きるのである。いくら弁護士をつけようが、金を返そうが謝ろうが、小保方さんやののちゃん、LINEくん(←もう名前で呼ぶ気すらなし)から立ち昇る「うわぁ」な感じは、決して消し去ることはできない。それを世間では、時に端的に「キモイ」と表現する。それだけの話だ。

mishuran.jpg

今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)など。

最終更新:2019/05/22 16:31
アクセスランキング
  1. 持ち偏差値より低い中学を受験した娘
  2. 「新しい自分になる」危険ドラッグで8階から飛び降り――「ラリってしまいたい気持ち」を禁止しても意味ない?
  3. 大谷翔平と代理人バレロ氏の心配な報道
  4. メルカリで31万ネックレスが27万に! 4万円の値引きに成功したワケ
  5. 警察がヤクザより力を入れる犯罪組織「トクリュウ」とは? その厄介さを元極妻が解説
  6. 「私には迷信と思えない」幼い息子に起こった異変とは? 奇跡的だったお坊さんの指摘
  7. 皇室の“セックスマニュアル”? その内容は
  8. 「男の宿命的な性」への憎しみ
  9. 大谷翔平、違法賭博問題で「裏社会」関係に疑惑?
  10. 秋篠宮さまの“プロポーズ美談”は全部ウソ?
  11. 憲法は「暴力団員であること」を禁じていない! 餃子の王将社長射殺事件、パソカ規制問題、工藤會死刑判決を元極妻が解説
  12. 132万のジュエリーの代わりに買ったもの
  13. 「美智子さまいじめ」の主犯
  14. 実父の強姦が黙殺された「栃木実父殺し」から現在
  15. 『大奥』問題がある演出とは?
  16. 中学受験の合格手続きでミス
  17. 学習院「常磐会」が行った「美智子さまいじめ」
  18. 2023年のクスリ押収量は過去2番目! イーロン・マスクのドラッグ使用疑惑を解説
  19. 中学受験6連敗の母に伝えたいこと
  20. 生活費3億円のお嬢様が皇族妃に?