[連載]悪女の履歴書

“理想の子育て”と評された母親はなぜ“鬼母”に――「大阪2児放置・餓死事件」

世間を戦慄させた殺人事件の犯人は女だった――。日々を平凡に暮らす姿からは想像できない、ひとりの女による犯行。彼女たちを人を殺めるに駆り立てたものは何か。自己愛、嫉妬、劣等感――女の心を呪縛する闇をあぶり出す。

[第23回]
大阪2児放置・餓死事件

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Photo by iandeth from Flickr

 子どもの虐待事件は後を絶たない。今年に入ってからも静岡県で1歳の女児が義父に暴行を加えられ重体となり入院先で死亡し、大阪では生後間もない赤ちゃんが放置され死亡。神奈川県厚木市では父親が放置した4歳の男児が7年前に餓死していたことも発覚し、そのほかにも埼玉、仙台、東京、和歌山、山形、茨城と全国で児童の虐待、放置、置き去り事件が起こっている。

 こうした虐待の中でも記憶に残る1つの事件が、2010年に起きた大阪2児の放置・餓死事件だろう。同年7月30日、大阪の繁華街にあるワンルームマンションで当時3歳の女の子と1歳の男の子の遺体が見つかった。発見された2つの遺体は腐乱し、一部は白骨化していた。死後1カ月ほどがたっていたという。同日、大阪ミナミの風俗店に勤務していた2児の母親である下田早枝(仮名、当時23歳)が死体遺棄容疑で逮捕された。早枝は約50日前に2児を残したままマンションを出ていたため、残された子どもたちは餓死した。

 この事件は当時マスコミでもクローズアップされた。早枝がキャバ嬢やマットヘルスに勤める風俗嬢だったこと、子どもを放置した後、男友達などと遊び回っていたこと。その様子をSNSにアップしていたなどに加え、後に事件との関わりが指摘されることになる早枝の父親が、三重県のラグビー強豪高校で監督を務め、名監督として名前が知られた人物であることが耳目を集めたからだ。

 マスコミや世間はこぞって彼女を“鬼母”“人間ではない”などと批判した。暑いこの時期、狭いワンルームマンションに残された3歳と1歳の子ども。クーラーも使わず、食べ物もない狭い部屋。そこに放置され、おなかを空かせ、喉が渇きながら母を待ち続けたであろう子どもたちを思えばそれも当然だった。しかし幼児虐待事件を見ると、虐待した側にもまた“やむにやまれぬ事情”、恵まれているとはいえない生育歴、環境が背景に横たわっていることは多い。意外かもしれないが、一時期早枝もまた、周囲から理想的と評判になるほど、子どもを愛おしみ必死に子育てをしていた時期もあった。

 では一体、なぜ早枝は幼い子ども2人を置き去りにし、餓死させてしまったのか。そこで彼女の半生を振り返りながら事件の深層に迫ってみたい。事件の鍵を握るのは、早枝の生育環境だと思うからだ。

助けて、が言えないこの声を聞いて

しぃちゃん

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