イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

若手“優等生”俳優から脱した、三浦春馬の肉体性――『恋空』から『殺人偏差値70』へ

2014/07/14 16:15

仮面ライダー俳優から個性派へ、アイドル俳優から実力派へ――ドラマでの若手俳優の起用法は、ここ10年で大きく変化した。ジャニーズとイケメン俳優の現在の立ち位置と魅力を、話題の起用作から読み解いていく。

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日テレオンデマンドより

 7月2日に放送されたスペシャルドラマ『殺人偏差値70』(日本テレビ系)は、西村京太郎の短編小説「受験地獄」をドラマ化したものだ。1982年に日本テレビの火曜サスペンス劇場枠でドラマ化され、伝説的な評価を受けていたのだが、舞台を現代に移し、三浦春馬主演で再びドラマ化された。

 東京大学を目指して二浪中の宮原圭介(三浦春馬)は、受験日当日に寝坊をしてしまう。急いで会場に向かおうとするが、開始時間には間に合わない。焦った宮原はネットカフェに駆け込み、世間を騒がせていた爆弾魔のフリをして「東大校舎に爆弾を仕掛けた」という爆破予告のメールを、東大に送ってしまう。試験は一時休止となり、その混乱の間に宮原は受験会場に駆けつける。しばらくして試験は再開され、無事に試験を受けた宮原は試験に合格する。春になり、宮原は東大生として学生生活を送っていたが、そこに田中宏志(城田優)という男が現れ、「宮原が爆破予告の犯人であることを知っている、ばらされたくなければ50万円をよこせ」と脅迫し、宮原につきまとうようになる。いつか秘密がバレるのではないかという不安と、恋人や友人に対する疑心暗鬼から、宮原の精神は少しずつ崩壊していく。

 本作で演出を務めている大谷太郎は、松山ケンイチ主演の『銭ゲバ』(日本テレビ系)でチーフ演出を担当し、格差社会を舞台としたショッキングなストーリーを、斬新な映像で表現したとして高い評価を受けた。今作でも、テレビドラマ初のプロジェクションマッピングを使った映像や、『銭ゲバ』でも多用された、画面が突然横に傾くカットは、不安定になっていく主人公の内面を的確に表現しており、ダークな映像美に彩られた問題作となっている。

 惜しいのは、後半の展開が宮原の内面の話に向かっていくため、観念的すぎて物語が停滞してしまったところ。また、詳しくはネタバレになるので書かないが、宮原と田中の愛憎入り混じったコインの裏表のような関係が、ある映画を連想させるため、途中から展開が読めてしまうことが弱点となっている。とはいえ、1人の青年の中にある他者に対する恐怖や不安は見事に描かれており、田中を演じた城田も三浦と同じくらい好演していた。東大爆破というモチーフに象徴される、格差や学歴がもたらす社会の階層化の問題に対しては、『銭ゲバ』に比べると踏み込みが浅く見えるが、これらの不満は意欲作ゆえのないものねだりだろう。もしも、10代で見ていたらトラウマになっていたと思う。

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イケメン枠から完全に脱した感あり
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