[女性誌速攻レビュー]「CLASSY.」8月号

結婚・モテのために男を立てる「昭和女」を、「CLASSY.」が激推し

2014/07/09 15:00

 スニーカーにしてみたら「おいおい……」なミッションですが、もちろんそこは仕事しつつも本能的に目はイイ男を探し続ける「CLASSY.」、インティライミを宣伝すると見せかけてしっかり目線の先にはマネジャーを捉えていました。そこからは奇跡の展開。「ザンジバる?」がオリコンチャート1位になるわ、マネジャーから飲みに誘われるわ。ラストカットはお揃いのニューバランスで「…私、彼のこと好きなのかも」。一緒に1つの目標を追いかけているうちに、芽生える恋。スニーカーが運ぶ幸せ。キューピッドはインティライミ。なんでしょう、この釈然としない気持ちは。一言だけ言わせてください。売れないでしょ、「ザンジバる」……。

 しかし、なんとなくイメージする「CLASSY.」男(「CLASSY.」女子が捕獲を狙う男)はナオト・インティライミが好きそうだし、カラオケでキマグレンを歌いそうだったりするので、「CLASSY.」のこういう鋭さ意地悪さ、嫌いじゃないっス!

■本当のサバイバルは、「おっ立て神輿」よりも複雑

 スニーカーという彼の文化に倣いたい、並んで歩く彼のテイストに染まりたい……続きましては「CLASSY.」女子たちのそんな思いを体現した企画。その名も「今こそ新しい!『昭和女』という生き方」。タイトルだけ見ると、昭和歌謡が大好きなドレミファドン女か、昭和ドラマを愛する『ヤヌスの鏡』(フジテレビ系)女か、はたまた昭和野球史に目がない西武黄金時代女かと勘違いしそうですが、残念ながらそのどれでもありません。「CLASSY.」のおっしゃる「昭和女」とは、「男性を立てて一歩下がったところからサポートするという、控えめで奥ゆかしい、昭和を彷彿とさせる生き方の女性」のこと。あぁこれはその筋の方々から毒矢が飛んできちゃいますね! ちなみにかつての山口百恵、現代でいえば里田まいが「昭和女」のモデルケースなんだそうです。

 「昭和女」の生き方とはただ1つ、男を立てること。今回もフルスロットルな男性座談会では「友人の彼女なんですが、顔がすごく可愛いわけではないけれど、醸し出す空気感がおだやかで凛としているコがいますね。みんなで会話しているときも、彼の話にニコニコしながらうなずいて、後ろから彼を見守っているんですよ。まわりの男友達の間では、『あんな彼女が欲しい』とぶっちぎりの人気です」「2人でいるときは対等な関係で全然いいんだけど、友達の前ではやはり男を立てて欲しい」などなど、「立てて立てて」の大合唱。さらにいつも女のコたちに都合のいいグッドなウィルを提案してくれる、ぐっどうぃる博士が「いつだって男は自分を立ててくれる昭和的な女性が好き」「彼の仕事や趣味に興味を持ち尊敬することも重要」と“おっ立て神輿”を煽っています。

 しかこの企画、男性座談会とぐっどうぃる博士が「男を立てる女はサイコー(女に立ててもらうオレもサイコー)」という単純理論に終始した一方で、女役として生き残るために「宝塚時代は自分自身が褒められることよりも、組んだ男役さんがスムーズに舞台に立てることや、カッコよく見えることのほうが喜びでした」と話す元宝塚娘役たちの対談や、“現代的昭和女のパイオニア”杉本彩が「今の時代に必要とされているのは、何かを犠牲にするのではなく、大切なことのバランスを取って、欲張りに、たおやかに生きること」と現実的なサバイバル論を展開していました。

 この世の中、大義名分やイデオロギーでは腹の足しにはならない。弱い者が生き延びるにはどうすればいいのか。「昭和女」という言葉には、差別の構造を容認しながら生きるコンサバ女の宿命と達観があるのだと思いました。彼への同化を図る“カメレオン女子”から、一歩下がって彼を支える“昭和女”へ。次にくるのはもはや存在すら定かではない“透明人間オンナ”か。お会計の時、瞬時に気配を消すのが得意なアナタの時代がくるのかも……。
(西澤千央)

最終更新:2014/07/09 15:00
CLASSY. (クラッシィ) 2014年 08月号 [雑誌]
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