[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」7月7日号

「婦人公論」で青田典子が教えてくれた、「心は支えてもカネは支えない」夫婦のあり方

2014/07/02 15:00

「ある日、ギターを手に笑顔で家に帰ってきたんです。『ノリ、これ買ってきたよ』って。値段を聞いたら400万円!」
「スタッフが集まると買ってきたばかりのアルマーニを、どんどんみんなにあげてしまう」

 とバブルな姿勢を崩さない玉置。さらに「夜中じゅう全部の部屋の電気をつけっぱなしにして寝たり」「日に4~5回お風呂に入るのですが、そのたびにすべてのお湯をジャーッと流してしまったり」と、日常生活はまるで子ども。結局「お互いの金銭感覚自体はそう変わるものではなく、もしかしたら、一生歩み寄ることができないのかもしれません。でも、共に暮らしていくための折り合いをつけることはできたと言えそうです」と、財布を別々にすることで一件落着したそう。心は支えてもカネは支えない。夫婦の豊かな老後に必要なのは、こういうルールなのかもしれません。しかし、まさかこんな大事なことを玉置×青田夫妻から学ぶとは……。

■他人のウソには、自分の欲望が隠れている

 続いては「私のまわりの『平気でウソをつく人たち』」を見てみましょう。浪費も欲なら、節約や貯蓄にいそしむのもまた欲。欲がからめば誰しも正常な判断はできなくなり、甘い話についコロっと騙されてしまうというものです。これだけ騒がれても一向に無くならない投資詐欺が、その証左でしょうか。

 「家族、恋人、親友、同僚……こうしてダマした、ダマされた!」に並ぶのは、“痴漢に遭った、捕まえた”を理由に連日遅刻してくる後輩が駅ナカで優雅にお茶しててキィィとか、雑貨屋の夢を叶えようと誓い合った友人に金を持ち逃げされたとか、友人の不倫のアリバイにされているとか、ダマされ被害というよりは“人をダマしてうまいことやりやがったアイツ”への恨みつらみ。「平気でウソをつく人たち」を糾弾しつつ、心のどこかでは少し羨ましくあるようにも見てとれます。この特集、リードに「身近な人の偽りを見破る自信、あなたにはありますか?」とありますが、ダマしたのならいっそのことずっとダマし続けてほしいと思うのが中高年のホンネ。

 「いまどきの詐欺の手口はこれだ! 中高年こそ要注意」では、中高年をターゲットにした最新の詐欺あれこれが紹介されていますが、どれも始まりは小さな見栄や虚栄心、人よりもっと得したい、さらには「ダマされたくない」が引き金になっているものばかりです。ダマされたことがわかれば、知りたくなかった自分の欲と嫌でも対峙しなければなりません。要するに、「ダマす/ダマされる」とは欲望を映し出す鏡。この特集を締めくくるのはノンフィクション作家の神山典士氏による「“佐村河内守”という虚像をなぜ信じてしまったのか」ですが、この人こそホント、ダマすなら最後まできっちりダマし続けてほしかった人。彼に熱狂した多くの人たちは、この一件で見なくてよかった知らなくてよかった己の欲やコンプレックスと激しくやり合わなくてはならなくなってしまったから。つくならそれ相応の覚悟が必要、それがウソなのです。

 人間とは、常になんらかの欲に縛られながら生きなければならない生き物。お金、名誉、男、友達……年を取ったからといって、そう簡単に欲が枯れるわけもなく……。「使いながら貯蓄もしたい」というのは、反対のベクトルでバランスを取りたい、せめて欲と上手に付き合いたいと思う中高年の切なる願いなのです。
(西澤千央)

最終更新:2014/07/02 15:00
婦人公論 2014年 7/7号 [雑誌]
青田、逃げる気まんまんじゃん!
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