『なんかおもしろいマンガ』あります ~女子マンガ月報~【6月】後編

ついに完結『失恋ショコラティエ』、サエコの「女塾」で冴え渡る水城せとなの観察眼

女子マンガ研究家の小田真琴です。太洋社の「コミック発売予定一覧」によりますと、たとえば2014年5月には977点ものマンガが刊行されています。その中から一般読者が「なんかおもしろいマンガ」を探し当てるのは至難のワザ。この記事があなたの「なんかおもしろいマンガ」探しの一助になれば幸いであります。後編では5月のオススメ作品と、6月発売予定の注目作をご紹介します。

(前編はこちら)

[単行本]絶好調! 『失恋ショコラティエ』サエコ先生の「女塾」

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『失恋ショコラティエ』8(小学館)

 テレビドラマはとうに終了いたしましたが、水城せとな先生『失恋ショコラティエ』(小学館)は5月9日発売の8巻にして佳境を迎え、ついに次巻での完結が予告されました。しかしこの期に及んでも、サエコ先生の「女塾」は絶好調!

 未読の方のために説明いたしますと、サエコさんは本作のヒロインです。しかし単なるヒロインではなく、ある種のダークヒロインであり、バリキャリ系の女子からは真っ先に反感を買いそうな、高い女子力を誇るゆるふわ系、モテ系女子として描かれています。サエコさんに恋する主人公・爽太は、彼女を「妖精さん」などと描写するのですが、決してその程度のタマじゃありません。

 そんなサエコさんが、片想いに悩む爽太の同僚・薫子から恋愛相談を受けたことから始まったのが、サエコ先生の「女塾」です。この8巻でも名言が連発されました。報われる見込みのない片想いには、「どんなに大好きな人だって、片想いならいつかどうでもいい人になりますよ。だってこっちを好きにならない人でしょ? だったらそんなの存在しない人と同じだもん」とバッサリ。「どんな男にもウケる最強の女子はどんな女なのか!?」という問いに対しては、「近くに住んでる子!!」。「『最寄りの駅が一緒』とか『同じ沿線』とか食いつきすごいですよー。あと『地元が同じ』とか『おな中』とかも! 絶対デートに誘われますね、そういうの」。ああっ、あるある……! その理由をサエコさんは「身近に感じるんじゃないかな? すぐ手に入るような…っていうかもうほぼ手に入ってるような気持ちになるのかなって。(中略)勘違いしてるな、ウフフ。ってニコニコ見てればいいじゃないですか」と分析。水城先生の冷酷なまでに鋭い観察眼が遺憾なく発揮されています。凡百の女性向け自己啓発本より、よほど参考になるのでは?

 ところで登場人物がみな饒舌なモノローグを語る本作において、実はサエコさんだけにはモノローグが存在しないことにお気づきでしょうか。物語の進行とともにサエコさんは「妖精さん」から観察者・超越者へと姿を変えましたが、一貫したモノローグの不在によって、特権的な存在であることには変わりありません。一方『脳内ポイズンベリー』(集英社)ではモノローグを細分化し、むしろモノローグで物語を動かそうとする水城先生。その巧みな「モノローグ使い」にもぜひご注目くださいませ。

 5月はほかにも、かわかみじゅんこ先生『日曜日はマルシェでボンボン』4(集英社)が素晴らしかったのでした。特に冒頭のおじさんの話。若き日のほろ苦い失恋の思い出を描いたものですが、上質なフランス映画のような余韻はさすがのかわかみ先生。失恋モノが豊作な5月でありました。

男目線を内面化した上で女子を完璧に作る女、サエコ!

しぃちゃん

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