[女性誌速攻レビュー]「ar」6月号

“雌ガール”と“おフェロ”推し「ar」は、女が女を愛でるための雑誌

2014/06/09 21:00

 と、こっ恥ずかしいことを恥ずかしげもなく語っています。ハイヒールを履いてキレイな服を着るなら、「今日はハイヒールモモコごっこ」でもいいんじゃないでしょうか。シャネラー気分になれそうです。さらには、

「胸をしっかり支えてくれる補整的ブラよりも、ノーパッドのフラットなブラをファッション感覚でつけるのが気分。(中略)外国人みたいに、カジュアルでヘルシーな雰囲気が出るのってヌケ感あってスキ」

 と、カンヌ国際映画祭で日本のメディアの話題をかっさらった“下乳ドレス”の布石となるような発言をしていました。胸のスリットから下乳がハミ出ていたのは、「外国人みたいなヌケ感」を演出していたようです。……いろいろと「スミマセン」とこっちが謝りたくなる発言が散見されるのですが、見事なバストラインと美脚を前にしてはひれ伏すしかありません。

■箱根では「notやりすぎ」だよ!

 「ar」の性質を象徴するコピーとしては、「雌ガール」よりもこっちのほうがピタリと当てはまると思います。

「おフェロ」

 やたらとこの語が頻発するんです! 「フェロテク」という活用形もあります。ここで編集会議の様子を妄想してみましょう。ノリで誰かが「フェロモンのことを“おフェロ”と言ったらどうだろう?」と提案したとします。会議室内はドッと沸きます。「いいっすね、おフェロ」「流行語大賞取れるかも、おフェロ」「やっぱり女子はフェロテクを磨かなきゃね!」と編集部員みんなが盛り上がります。ええ、その場では大いに盛り上がります。おフェロおフェロの大合唱です。……が、良識ある大人なら、本当に誌面に掲載しようとは思わないですよね、おフェロ……。いや、これは褒めているのです。攻めの姿勢、見習いたいです。

 で、「オトナの肌見せガイド2014」という企画では、「notやりすぎbutおフェロなオトナの肌見せに導く着こなしテクを一挙レクチャー」してくれています。いわく「淑女御用達のカーデをきちっと着込まず、肩を落として着る」「肩を全部露出するより、しどけなさがお際立ち~」「貞淑ムード全開のツイード素材なのにレースの切り替えでお腹透け!?」「レースやチュールごしの肌はありがたみが倍増するとなれば、これはもう着るっきゃな~い」とつづられています。テンション高いです。読者への細やかな気配りが感じられたのは、「箱根など、さまざまな年代の人が集まる場所では、まわりの人がびっくりしちゃうようなカジュアルすぎる服装は×」と、箱根でのフェロテクが書かれていたことです。と言いつつ、キャミを着てヘソを出してショーパン穿いて、かなり露出度高めで、どこが箱根仕様なのかサッパリわからないのですが、いろんなフェロテクがあるもんだなと感心させられました。

■なぜかテンション低めなハグテク

「幸せMAX むぎゅむぎゅ白書」は、大好きな人に抱きしめられるためのテクニックを紹介しています。おフェロ全開の雌ガールは、どんなテクをお持ちなのかと思いきや……それが、意外なほど大したことを言っていませんでした。

・心の調和がとれた穏やかなコとはずっと一緒にいてぎゅう~っとくっついていたいと思うもの。必要なのはリラックス。自律神経を整えてピースフルにね♪
・うるんだ眼差しに落ちない男はいないはず。
・フェロモンたっぷりのうるツヤリップに引き寄せられてしまうのは男子の本能。
・男の子はみんな指通りのイイ髪がお好き。

 女性誌で何十年何万年と言い古されてきた愛されテクですね。「ハァ、そりゃそうだろうね」「それがどうした?」という感想しか出てきません。おフェロおフェロと言ってるわりには新奇なテクがないのは、男がネアンデルタール人から進化してないからか、もしくは男は進化しているのにこの雑誌がアップデートできてないからか、それとも、もうどうでもいいのか。

 恐らく、どうでもいいのだと思います。男などこんな程度で喜ばせておけばいいのだ、と軽んじているように思えます。そもそも、ひとり「SEX and the CITYごっこ」をしたり、カーディガンの首を伸び伸びにして肩を出したり、箱根でおフェロのことばっかり考えている女子を男が好むと思います? ペディキュア企画では足の爪にオッパイの絵を描いたり、ヘアスタイル企画では前髪でくまミミを作ったり、さらにはウェディング企画でも髪で猫ミミを作ったり、リーゼントにしたり、そんな女子どうです? 姑がひっくり返っちゃうよ。まったく本気で男の心を掴みに行っているように見えません。

 「ar」は、女子が女子を愛でる雑誌です。冒頭で紹介した表紙のまとめサイトには、カバーガールについて「唾ごっくんしちまった」「えろい。かわいい」「セクシーでかわいすぎ」「ナチュラルな色気が全開」といった賞賛の声が並びます。今月号のテーマ「食べちゃいたくなるBODY!」も、主語は「男が」ではなく「私たちが」なのでしょう。私たちがエロいと思うことを追求する。だから「SEX and the CITYごっこ」なんてアホなこともアリなわけです。エロカワイイものが好き、エロカワイイファッションが好き、エロカワイイ女の子が好き。そのエロに男の価値観が入り込む余地はありません。そういえば、ライオンは母系社会で、メスが集団で狩りを行うそうです。ああ、そういう意味の「雌ガール」なのか、と深く納得した次第です。
(亀井百合子)

最終更新:2015/11/26 23:59
ar (アール) 2014年 06月号 [雑誌]
そろそろ「SATC」に代わる、女遊びのアイコンがほしいところ
アクセスランキング