イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

佐藤健の『ビター・ブラッド』にみる、おっさんに好かれるイケメン俳優の在り方

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『ビター・ブラッド』(フジテレビ系)公式サイトより

 イケメンドラマとは、若くて格好いい男性俳優を女性視聴者が愛でる作品である。おそらく多くの人々はそう思っているだろう。しかし、近年は女性視聴者だけでなく、男性視聴者、特に中年男性にアピールするイケメン俳優も少しずつ増えている。例えば、『相棒』(テレビ朝日系)で杉下右京(水谷豊)の三代目相棒を務めている成宮寛貴や、『半沢直樹』(TBS系)で半沢直樹(堺雅人)の部下として出演したHey!Say!JUMPの中島裕翔、あるいは現在放送されている『トクボウ警視庁特殊防犯課』(日本テレビ系)で上司の井原剛志に、いつもオモチャにされている部下の松下洸平などがそうで、おっさんばかりが登場するドラマに何故かイケメン俳優が1人混ざり、大体が上司を尊敬しているがヘタレの役立たずの若者を演じていたりする。おそらく、女性だと露骨なセクハラになるため、イケメン俳優で代行している側面もあるのだろう。しかし、そもそもおっさんもまた、女性とは違う意味で、イケメンが好きなのではないだろうか。

 現在、火曜夜9時から放送されている『ビター・ブラッド』(フジテレビ系)は、おっさんにとってのイケメンがどういう存在なのかがよくわかるドラマだ。原作は雫井脩介の同名小説で、親子の刑事が同じ職場で捜査をする刑事ドラマとなっている。

 新人刑事として銀座警察署の刑事課捜査一係に配属された佐原夏輝(佐藤健)は、勤務先の警察署で離婚して疎遠だった父親の島尾明村(渡部篤郎)と再会する。島尾は一係では「ジェントル」というあだ名で呼ばれており、息子である佐原は「ジュニア」と呼ばれるようになる。やがて、2人はバディとなって、次々と起こる難事件に挑んでいく。

 脚本は小山正太と小峯裕之。チーフ演出は金井紘が担当。小山は、昨年のフジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した期待の新鋭で、小山の受賞作『人生ごっこ』(同)を演出したのが金井だった。ヤングシナリオ大賞を受賞した脚本家は即戦力として連ドラに抜擢されることが多いが、そんな新人脚本家の小山の状況と新人刑事の物語がリンクしていて、このドラマ自体が、若手を育てたいというフジテレビの意向が反映されていると言える。

 刑事ドラマとしては、現代版『踊る大捜査線』をやろうとしたら、あまりにノリが軽薄なので『君の瞳をタイホする!』(ともにフジテレビ系)まで先祖返りしてしまったかのような作品だ。金井の演出は、カット割りが細かくスタイリッシュで見どころ満載だが、安っぽい爆発シーンの連発や、一目見ただけで悪役だと丸わかりの及川光博演じる犯罪者の安直な描写など、雑でユルい部分も多く、決して完成度の高い作品とは言えない。しかし、本作の面白さは刑事ドラマとは少し離れたところにある。

 物語は佐原が、新人刑事として働くことで社会人として成長していく姿を追ったものとなっており、同期の前田瞳(忽那汐里)とのほのかな恋愛も描かれる、しかし、物語の中心にあるのは、刑事の仕事でも恋愛でもなく、渡部演じる「ジェントル」の、息子に対する切ない父心だ。ジェントルは普段は軽薄に振る舞いながらも、実は息子のことを心配しており、就職祝いにスーツをプレゼントしたり、行きつけの飲み屋を教えたりするが、父親としての愛情をまったく理解してもらえない。本当は仲良くなりたいのに、素直になることができずに息子とぶつかってしまう姿は、まるで思春期の少女のようで、渡部のスカした演技もあいまっておかしくも切ない。第6話のラストで、息子の誕生日に渡そうと思っていたスカーフが渡せない場面など、まるで失恋シーンのようだ。

 また、後半になると、皆川猿時、田中哲司、吹越満が演じるおっさん刑事たちの存在感も増していくのだが、彼らとジュニアの関係は、親戚のおじさんとはしゃぐ子どもという感じで、実は本作が、若者の成長を描く作品ではなく「俺にも若い頃があったなぁ」と、若者の成長を見守る中年男性の視点で出来上がっている作品だとわかる。これは、現在のアイドルとファンの関係に近い。

 今のアイドルファンは年齢が高齢化しており、アラサー、アラフォーも当たり前となってきている。そのため、かつては擬似恋愛の対象だったアイドルを応援することが、子育ての代替行為になってきているように見える。テレビドラマでは『あまちゃん』(NHK)における能年玲奈の愛され方に「こんな娘が欲しい」という欲望が現れていたのだが、『ビター・ブラッド』における佐藤健の扱いは、その息子バージョンだ。

 佐藤健は『とんび』(TBS系)でも、父親に溺愛される息子を演じていたが、年配の男性にとって、「お前はしょうがねぇなぁ」と心配して、ついつい説教して構まってあげたくなるオーラが漂っているのだろう。佐藤健の、優秀なイケメンなのに何か「残念な感じ」は、少子高齢化の時代においては、中年男性にアピールできる最大の魅力なのかもしれない。

「オレが育てた」語りの素材になるのはまっぴらご免

しぃちゃん

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