[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」6月7日号

“ていねいな暮らし”で修道女をフィーチャーした「婦人公論」 の跳躍力がすごい!

2014/06/02 21:00

 この清らか路線は「修道院で見つけた、つつましく丁寧な生き方」へ。『修道院のお菓子と手仕事』(大和書房)を上梓した編集者の早川茉莉氏が、厳かなシスターたちの「祈りと労働」の暮らしを取材し、真の豊かさ美しさをつづっています。「祈り」「聖なる読書」「労働」を柱として組まれる1日のスケジュール、静かに過ぎていく時間、心を込めて手づくりされるお菓子や雑貨たち。早川氏はシスターとの電話のやり取りだけで「心が清められるような気持ち」になったそうです。シスターたちの暮らしにあるのは「お金やモノといった、増えたり減ったりするような形而下的なものではなく、湧き続ける豊かな恵みを魂の花園に持っている人たちだけが知る形而上的な豊かさ、美しさ」。

 ていねいな暮らし礼賛は、ここ最近のブーム。気を抜けば乱れていく生活、汚れていく部屋、雑になる食事、増えていく体重……。「便利」という名の悪魔が舌なめずりしながら私たちをその手に堕とそうと企みます。そしてその誘惑を振り切った人だけが、“ていねいな暮らしスト”として、「リンネル」(宝島社)あたりで崇められるのでしょう。しかしここは、普段から婚外恋愛最高だのご近所腹立つだの夫地獄に落ちろだの、俗まみれ三太夫なことしか言わない「婦人公論」。シスターの作ったお菓子を姑の悪口とともに茶で流し込む女たちです。生きることは悩むこと。尽きない煩悩に苦しみながらも懸命に生きるその正直さこそが「美しさ」だと思う私は、穢れているのでしょうか、神様……。

■オバタリアン教師が悪いという謎のプロパガンダ

 特集ではほかに、3万冊の蔵書と4,000匹のぬいぐるみとともに暮らせる家を建てたという、作家の新井素子のインタビューなどもあり、大事なものを捨てないために「箱」を作り変えるという、断捨離とは逆の発想も紹介されています。そう、長年溜め込んだものは、そう簡単には捨てられない。それは物だけてはなく、思考や思想にも言えるでしょう。

 続いて紹介するのは、「現場からの緊急提言 センセイがおかしい!?」です。教師は仕事とプライベートのどちらを優先させるべきか――とある高校の女性教員が自分の子どもの入学式に出席するため、勤務校の入学式を休んだことが大きな議論を呼んだのはつい先月のこと。この件に限らず、現在学校教育の現場ではさまざまな問題が噴出しているとのこと。そもそも教育現場にさまざまな問題が噴出してなかった時期などあったのか。ということはさておき、 ルポ「子どもを押さえつける『ハズレ』教師が増える理由」では教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が教師を巡る現状をレポート、さらに作家で東京都教育委員でもある乙武洋匡氏が教員時代の体験を語っています。

婦人公論 2014年 6/7号 [雑誌]
萬田さんはおばちゃんだけど、試供品を無慈悲に捨てそう……
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