大久保ニューの【美のぬか床】 第13回

「まるで結婚用の男」手ぬぐい洗顔の安定感と地味さに感じた、女たちの葛藤

2014/05/31 16:00

 言ってしまえば「手ぬぐい」は、俗にいう「結婚用の男」みたいなものだ。甘い香りのピーリング剤が「キケンな匂いのする横文字職業の男」だとするならば、手ぬぐいは「毎日毎日、せっせと働いてくれるマジメだけが取り柄の男」みたいな存在。「この人と結婚します☆」と紹介したら、両親が安心するような、そんな男。つまり、友達に紹介したら「いい人そうじゃない☆」って褒められるけれど、うらやましがってはもらえないような……。「マジメな男と結婚したい!」という安定志向の女子にはおあつらえ向けだが、「映画を撮ってるアート系男子(もれなく貧乏)が好き☆」なんていうJ子が浮かない気分になるのは当然のことだろう。

 「だったら可愛い柄の手ぬぐいにすれば?」と思う方もいるだろうが、手ぬぐいの染料は泡立てていると色付きの泡が出るくらい染み出しやすく、基本無地しか使えない。言ってしまえば「無地の切れっ端」。ブランドのロゴすら邪魔になるのだ。テレビの旦那変身コーナーに出演させても、ブランド物がまったく似合わない「よきパパ」のごとく、手ぬぐいのマジメっぷりは手強い。

 女子の買い物といえば「コレ買ったよ~☆」とTwitterやFacebookでドヤれてナンボだというのに、切れっ端では難しい。それが証拠に「手ぬぐい 芸能人」で検索しても誰も引っかからない。「シンプルに暮らすということ……」なんてキャプションをつけて、己をドヤりたい天然生活系女子でも、この地味な存在をオシャレに見せるのは至難の業なのかもしれない。

 一方、私はといえば、「よきパパになりそうなマジメ男子が大好物☆」というゲイだ。「手ぬぐいみたいな男」なんていたら、是が非でもお近づきになりたい。しかし、手ぬぐいを使うのは風呂場。「バスタイムは、もっと浮かれたいなあ……」と物足りない気持ちになっているのが正直な感想だ。マジメ男子と一緒に風呂場でキャイキャイしてこその快楽だもの。

 とはいえ、手ぬぐいの効果は本当に素晴らしい。これからは使用時に「マジメ男子くん、体の隅々まで洗いなさい☆」と、女王様気分になってみたら、心潤うバスタイムになるのかもしれない。「古くなった手ぬぐいは、かかとの角質ケアや、靴磨きに利用する」というのも、S心をくすぐるしね☆ 日頃、悪い男に尽くしてお疲れな女子は、手ぬぐい相手に女王様になると、心のバランスが取れるかもしれないよ☆

大久保ニュー(おおくぼ・にゅー)
1970年東京都出身。漫画家。ゲイの男の子たちの恋愛や友情、女の赤裸々な本音を描いた作品を発表。著書に『坊や良い子だキスさせて1』(テラ出版)、『東京の男の子』(魚喃キリコ、安彦麻理絵共著/太田出版)などがある。
HP ・ブログ ・Twitter

最終更新:2019/05/14 20:22
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