[ジャニーズツッコミ道場]

嵐・二宮和也『弱くても勝てます』、視聴率稼ぎの“保険”でブレていく残念な展開

2014/05/09 15:30
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『弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望』(日本テレビ系)公式サイトより

 今回ツッコませていただくのは、ジャニーズドラマ「最後の頼みの綱」だったはずの嵐・二宮和也主演『弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望』(日本テレビ系)。

 放送開始前は、「日本有数の進学校で弱小野球部の監督になった臨時教師が、常識外れなセオリーでへっぽこ野球部を導く」というストーリーも、二宮の3年ぶり主演連続ドラマということも、二宮演じる主人公が理屈っぽい偏屈キャラというハマり具合も、原作が抜群に面白いノンフィクションだということも、演出が『泣くな、はらちゃん』(同)などの菅原伸太郎で、プロデューサーが『泣くな、はらちゃん』『妖怪人間ベム』『野ブタ。をプロデュース』『すいか』(同)の河野英裕だということも、どれをとっても「つまらなくなるわけがない」と思っていた。

 個人的に唯一の不安点は『あまちゃん』(NHK)キャストてんこもりだということ。本来、脚本・演出がしっかりしていて、うまい役者がいれば、視聴率はともかく、つまらなくなりようがないと思う。それだけに、『あまちゃん』感を出したことには自信のなさが見えるようで、一抹の不安はあったのだが……。

 放送がスタートしてみると、ネット上では「つまらない」という声が多かった第1話が、自分はかなり面白いと思った。なぜって、スピード感もメリハリもない一方で、そこには原作に流れる奇妙な「哲学」がたっぷり詰まっていたから。野球部の面々が、本郷奏多を除いて「どうにも進学校の生徒に見えない」ことは気がかりだったが、かといってリアル進学校っぽくすると、共感を得にくいのだろうかと思った。

 だが、ネット上では「だいぶ見やすくなった」「面白かった」という声が増えた第2話目に、落胆してしまった。嫌な予感は的中して、『あまちゃん』の人たちが余計に見えて仕方なかったのだ。原作の良さを完全に無視した恋バナ。おそらく1話目で「つまらない」「長い」と言っていた人たちの「不思議さ」「違和感」が一気に解消され、なんだか「普通のドラマ」になってしまっていた。いきなり2話目で恋バナってどうなんだろう。

 そして予告では、“野球部員で1人だけ演技がうますぎて浮いている”本郷奏多がストーリーのメインに見えて大いに期待された第3話が、フタをあけてみると、有村架純メインの「熱い普通のドラマ」になっていた。

 福士蒼汰と有村の場面が何しろ多すぎるし、薬師丸ひろ子ですら、正直、あまり要るとも思えない。「旬」の顔を起用したことが、逆にネックになっているように見えるのだ。ドラマは、多くの「思惑」や「利害関係」「お付き合いなどの諸事情」が絡めば絡むほど、つまらなくなる気がする。視聴率稼ぎの「保険」をかければかけるほど、ブレていく印象があるのだ。

 統一感ある長身イケメンの野球部員を揃えた時点で「進学校」感は乏しいわけだし、『あまちゃん』感を加えた時点で狙いはブレているわけだし、それならいっそ『弱くても勝てます』というタイトルのみ使わせてもらって、問題児だらけの弱小チームが奮闘する鉄板ストーリー『がんばれ!ベアーズ』ドラマ版をやればよかったんじゃないだろうか。

 あるいは、「ドラマ」ではなく原作の最も面白い要素「監督と選手の禅問答のようなやりとり」を、深夜の朗読劇などでやってくれたら、視聴率はまったく獲れなさそうだが、面白いものになったのではないかと思う。いろいろ残念だ。
(田幸和歌子)

最終更新:2014/05/09 15:30

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