[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」5月7日号

“性技”も“正義”もある女……「婦人公論」快楽特集で人妻神話が誕生

2014/05/04 16:00

 FacebookなどのSNSで連絡が取りやすくなったことなどから、熟年世代に到来したという同窓会ブーム。「幹事が元カレで、オバサンになったと思われたくない」という一心で、ダイエットに励み、指先にはネイルを施す、あぁ女心。「アラフォーは、未婚の人や、離婚して再びシングルに戻った人も混在している年代。『いい出会いがあれば結婚(再婚)したい』となんとなく考えている人は少なくないだろう」「同窓会のとき、クラスの人気者だった男子――もちろん今や立派なオジサンですが(笑)――に『2人で抜け出して飲みに行こうよ』と誘われたのです。断りましたが、もちろん悪い気はしませんよね」とのこと。シングルの人はお相手探し、良き妻たちはつかの間のトキメキを楽しむという、素晴らしいシステム・同窓会。

 それだけではありません。同窓会は足裏ゴロゴロや何にでも鰹節と同じ医学的効果があるというのです。銀座内科・神経内科クリニック院長、霜田里絵氏によると「期待感をもって当日に着るものや髪型などを考えると、気持ちがワクワクして、脳内に“ドーパミン”が多く分泌される可能性があります」。ドーパミンをパンパンにして出席した同窓会で懐かしい顔ぶれに出会いホッとすると、今度は幸せホルモンであるセロトニンが分泌。さらに「かつて好きだった異性や友人たちから、チヤホヤとまではいかないまでも『変わらないなぁ』と言われたりするといい気分になり、脳には報酬物質のドーパミンがさらに分泌され……」。同窓会に出席しただけで、脳内はドーパミンとセロトニンのミルフィーユ状態。あの時代イケてた方はもちろん、そうじゃない方もそれなりに。同窓会とはいわば、あなたにも作れるSTAP細胞。若返りの媚薬に捏造なしです。

■「人妻」を都合よく解釈しすぎ

 同窓会で焼けぼっくいに火がついてしまい、呑気に若返りなんぞと言ってられない状況に陥られる方も多い、“ご利用は計画的に”な同窓会若返りメソッドですが、こちらもまた非常に「婦人公論」らしい若返り、いや生き返り企画です。「快楽特集 夫以外が教えてくれた真実のセックス」。不倫SNS「アシュレイ・マディソン」が日本でもサービスを開始し、日本人ユーザーがなんと63万人(2013年11月時点)。体験ルポ「あなたのニーズに応える女性向けサービスあります」には、このアシュレイ・マディソンでの大人の不倫体験についてもつづられています。

 「美味しい食事をして、新鮮な相手と新鮮なセックス」「『大人の不倫』で生活に潤いが出た」などなど、まるで健康食品の売り文句のような「大人の不倫」。男性側も「みんなすごく積極的で、すぐにセックスさせてくれるからびっくりです。本格的に老いるまでに、心身ともに相性ぴったりの女性を見つけたい」と、これまた皇潤みたいな名文句。

 覆面座談会「僕たちが愛してやまない“人妻”の魅力とは?」は、「婦人公論」恒例の奥様接待企画。アラフォー・アラフィフ独身既婚入り混じった男性たちが、大好きな人妻という生き物について語っています。「フェラチオをしてくれた」「性の師匠」「10年以上セックスレスという女性と付き合ったら大解放、しまいには(女性が)自分の女友達を連れてきて3P」など、ここで語られている人妻像を総合しますと、さしずめ人妻=性の暴れん坊将軍。そんな人妻将軍ですが、いざ不倫が夫にバレた時は「夫が怒って僕に会いに行くと言ったので、彼女は『メールを見たんでしょう。誘ったのは私からよ。彼のところに行ったってムダよ』とかばってくれた」。まさに“性技”も“正義”もある人妻、あぁこれを読んで股間を膨らませる青少年たちに声を大にして言わなければ……そんな人妻おらへんでぇ!!

 老けないための同窓会、老けないための婚外セックス。「婦人公論」読者たちの、森羅万象を皇潤にしてしまうその能力には頭を垂れるばかりです。最後に読者体験手記「渇く私を潤してくれたあの男とのエクスタシー」にあった名文を紹介して、今号のレビューを締めたいと思います。

「スーパーで夕飯の買い物をしている最中、季節外れの太いナスが目にとまった。もう一度彼のものを口でくわえたい……」

 “秋茄子は嫁に食わすな”に新解釈……。
(西澤千央)

最終更新:2014/05/04 16:00
婦人公論 2014年 5/7号 [雑誌]
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