角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第64回

子どもに無関心な親にどう注意を促すか……保育園経営者ならではの悩みどころ

2014/05/03 16:00
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入学早々、運動会がありました。娘がこの1カ月でいきなり成長していました。かけっこではビリだったけど、保育園では一度もやったことのない長縄跳びが上手にできていてびっくりしました。入学から20日でここまで成長させた先生の力に拍手です

 保育園を経営していると、「親はどこまで子どものことを把握しているのかな」と疑問に思うことがあります。差し支えない範囲で過去にいた子どもの例を挙げると……。入園時の書類に「心配する点」として、「なかなかほかの子に馴染めない」と記載があった子どもがいました。「なれれば大丈夫だろう」と、こちらとしてはあまり気にはしていませんでした。

 ところが、1カ月たち、2カ月たち……その子はこちらから話しかければ答えるのですが(ボキャブラリーは乏しい)、何カ月たってもほかの子どもと会話することができず、ほとんどコミュニケーションが取れませんでした。その点に関し、お母様はまったく危機感を覚えていなくて、保育園側はどうすることもできないまま卒園を迎えてしまいました。その子は歯の生え方にも問題があったのでそれは指摘したのですが、親が気づいていない目に見えない問題のことは、どう伝えようか考えてしまいます。というか、子どものことに無関心過ぎる親が稀に存在することに驚きなのです!

 保育園には年2回健康診断があるので(実施していないのに、「している」と言い張る保育園あるので注意!)、内科の問題や斜視は医者の見解として保護者に伝えられますが、何日も一緒に過ごさないとわからない問題もあります。そういった問題を、医者じゃない私たちが保護者にどう伝えていいか、本当に悩みます。親御さんの方から「お友達と遊べていますか?」などと聞いてくれるとありがたいのですが、送り迎えで一刻も早く立ち去りたい素振りを見せる親に、こちらから「友達とまったく遊べていません。今日発した言葉はゼロです」とは言いにくいのが現状です。「うちの子が病気だって言いたいのですか!」などと逆ギレされたら恐怖です。

 無関心といえば、自転車で保育園の前に乗り付けて、お母さんは乗ったままドライブスルーのように子どもを預けたり、受け取ったりする方がいました。送り迎えはわずかな時間ではありますが、子どもが友達の輪に入っていく様子がチラッと覗けたり、保育士に様子を聞いたりできるいい機会。我が子に対して神経質になり過ぎるのも困りものなのですが、無関心も困ります。

 子どもの問題のほとんどは親が気づいて医療機関に連れていきますが、小学校に入学してから、学校で発覚することもあるそうです。確かに、年相応の発達をしているかどうか、親が判断するのは難しいことだとは思いますが、公園にでも連れていけばコミュニケーション能力を測ることぐらいできるんじゃないの? と幼児期の子育てを経験した親として思います。ほとんどの方は街でほかの子と必要以上に比べて、「うちの子は発達が遅い」「早い」と一喜一憂していることと思いますが……。おばあちゃんが気づいて医療機関に足を運ぶケースもあるそうです(うちの保育園でもありました)。

■子どもの世界を守るための距離も必要

 腰を据えて仕事ができるようになったGW前。月曜日に学校の最寄駅まで迎えに行くと、お迎えに来ているママは私だけでした。みんなすごい。っていうか、うちは過保護? 娘に「お母さんがいるの恥ずかしかった。明日から家の最寄駅で待ってて」と言われ、翌日到着予定の20分以上前に駅に着き、そわそわしていました。この時期、私と同じように1年生の到着を待つお母さんが多いこと多いこと。今まで見えてなかったというか、自分に関係のないものだと脳が判断していたらしく気づきもしなかったです。娘はエレベーターの左側にきちんと立って帰ってきました。この際、靴下がずり落ちてようとヨシとします。偉かった、娘!

 自信がついたのか「明日はバス停(家の最寄)から1人で学校に行ってみる!」と言い出しました。幼児教室の先生が「女子校は6年間、車で送り迎えする親もいる」と言っていたのですが、娘は共学しか受験しなかったし、通うことになった学校の同級生はみな活発な上、自立を後押しする保護者が多いのかもしれません。確かに6年間、車での送り迎えは親の心配が減る一方で、通学を通した学びがなくなります。すでにバスや電車で寝ているお友達を起こしてあげたりしているので、友情も芽生えているのでしょうね。

角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では6歳の愛娘の子育てに奮闘中。

最終更新:2014/05/03 16:00
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