[サイジョの本棚]

80年代、女子プロレス、アイドル、J-POP……熱狂とブーム再生に心を震わす

2014/05/07 15:30

――本屋にあまたと並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン(サイ女)読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します!

【ムック】
『80’ガールズ大百科』(実業之日本社)

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『80’Sガールズ大百科』(実業之日本社)

 『80’Sガールズ大百科』は、『ときめきトゥナイト』(池野恋、集英社)、『銀曜日のおとぎばなし』(萩岩睦美、同)といった人気少女マンガやマンガ誌の付録、「けろけろけろっぴ」に「たあ坊」といったサンリオグッズ、シルバニアファミリー、雑誌「MyBirthday」(実業之日本社)……などなど、80年代に幼女~少女時代を過ごした“元女子”がかつて夢中になったトピックスがひたすら詰め込まれた1冊だ。

 それぞれの解説やレアグッズの紹介に加えて、池野や萩岩らマンガ家、人気クリエイター&関係者への取材も敢行。インタビューでは「占い師に突然『19歳で漫画家になる』と言われた恋ちゃまは、予言通り19歳に初投稿作でデビュー」「折原みと先生は『時の輝き』を書くために1日看護師の格好でスタッフとして病院に潜入」と、少女マンガを地で行くような運命&努力エピソードも明かされるなど、ファンでなくてもつい読み込んでしまう濃い内容になっている。

 子どもの頃、無心に好きだったものを再び楽しむのは、中年まで生きてきたからこそ味わえるボーナスのような喜びだ。「ファンシーなもの苦手だし、今まで1回も好きになったことないし」という顔をして普段過ごしている30~40代も、多分自分でも忘れている琴線をがんがん揺さぶられること間違いなし。

【文庫本】
『1985年のクラッシュ・ギャルズ』(柳澤健、文春文庫)

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『1985年のクラッシュ・ギャルズ』(柳澤健、文春文庫)

 『80’Sガールズ大百科』でも年表で触れられているが、80年代の女子プロレスは、女子中高生に絶大な人気を博していた。テレビ中継の視聴率は20%を超え、アイドル誌の表紙を飾り、試合はもちろん、コンサート会場を多くの女性ファンで埋める“アイドル”だった。そんな「女子プロレス」ジャンルの急激な隆盛と衰退の背景、現在に至るまでを描くノンフィクションが『1985年のクラッシュ・ギャルズ』だ。

 身体能力は低いが自己プロデュース能力に長けた長与千種、逆に、身体能力は高いが不器用でまっすぐなライオネス飛鳥……という対照的な2人の女子プロレスラーに加え、その2人に熱狂し、親衛隊(ファン)からプロレス記者になった女性という3人の半生も。選手とファン、両方の視点が加わることで、あるジャンル自体が急速にブームになる時の駆け上がる輝きと、内部のひずみ、ブーム終息後の残酷さが、鮮やかに描かれている。

 天才たちの、ある種のいびつさを抱えた人間像に迫るノンフィクションとして、周囲の熱狂に翻弄される少女たちの群像劇として、女子プロレスどころか格闘技をまったく知らなくても興奮と普遍的な感動が味わえる。そして、確かに輝いていたのに、“その時”が過ぎれば一瞬で他人から理解されなくなる、“アイドル”という存在の難しさに気付かされる。

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