『ハウスワイフ2.0』ブックレビュー

家事に命をかける高学歴アメリカ女性たち、「ハウスワイフ2.0」が孕む危険なリスク

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『ハウスワイフ2.0』(文藝春秋)

 ウィークデーは仕事に勤しみ、ダイアン・フォン・ファステンバーグのドレスとジミー・チュウのピンヒールでニューヨークを闊歩。そして週末はパーティで大騒ぎ──『セックス・アンド・ザ・シティ』で描かれたきらびやかな生活こそ、アメリカの若いキャリアウーマンの夢だと思っている人は多いのではないだろうか。しかし今、彼女たちの間で、これとはまったく真逆のライフスタイルがもてはやされているという。

 魂が吸い取られるような仕事をするよりも、豊かな家庭を育む方がずっといい。仕事を辞め、専業主婦として家事に手をかけ、子どもの教育に力を注ぎたい――アメリカでは、そんな価値観を持つ「高学歴で進歩的な20~30代のキャリアウーマン」が増えているという。この現象は「ハウスワイフ(専業主婦)2.0」呼ばれている。

 「アメリカの社会を一変させてしまいそうなほど勢いがある」として、この現象を取り上げたのが、『ハウスワイフ2.0』(エミリー・マッチャー著 森嶋マリ訳/文藝春秋)。本書はアメリカで大反響を呼び、今日本でも話題沸騰中だ。

 この「ハウスワイフ2.0」という呼称には、従来の専業主婦(「ハウスワイフ1.0」)からバージョンアップした進化系との意味が込められている。かつての「専業主婦になるしかなかった」専業主婦とは一線を隠し、自ら「選択してなった」専業主婦が、「ハウスワイフ2.0」なのだ。

 そして「豊かな家庭を育みたい」という願望は、「大企業が作ったものを拒否し、環境のことを考え、なんでも自分でやろう」という思想を生み出した。アメリカの若い女性たちは今、昇進やブランド品や華やかな人脈作りより、ジャムやピクルス作りに興味を示し、友達と競い合うようにお手製パンやお菓子を焼いては、写真を撮って夜な夜なブログにアップ。高級スーパーよりも農家の直売所の方が断然オシャレとされ、「ああ、早く会社を辞めて、田舎の農場でヤギを飼って暮らしたい」とため息をついているというのだ。

 なぜアメリカの若い女性たちの間で、「ハウスワイフ2.0」現象が巻き起こったのか。その根源となっているのが、彼女たちが抱える「出口の見えない不況」への不安だ。この不況下では、「社会的に意義があって大金を稼げる仕事」はまず見つからないし、見つけたとしても女性の場合は「週60時間働けと言われ、産休・育休もろくに取れず、子どもがいるだけで給料が減らされる」現実が待っている。

 そしてもう1つ、社会進出を果たした母親世代の影響も大きい。20~30代のアメリカ人女性の母親たちは、仕事と家庭の両立を果たしてきた世代。彼女たちは、母親から「女性は仕事も家庭も全て手に入る」と言われて育ってきたという背景があるのだ。しかし、彼女たちは「悪戦苦闘する母親を見て、そこまで苦労する必要があるのか、全てを手に入れるなんて無理に決まっていると痛感させられた」という。そして、大人になり、「不景気になった途端に、やりがいのある仕事から女性はあっさりはずされてしまう」という理不尽な社会の現実を突きつけられてしまったというわけだ。

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しぃちゃん

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