[連載]悪女の履歴書

「男の暴力は当たり前」DV概念なき時代に起こった、「ホステス2人組 夫バラバラ殺人事件」

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Photo by MIKI Yoshihito from Flickr

世間を戦慄させた殺人事件の犯人は女だった――。日々を平凡に暮らす姿からは想像できない、女による犯行。彼女たちを、人を殺めるべく駆り立てたものは何か。自己愛、嫉妬、劣等感――女の心を呪縛する闇をあぶり出す。

[第21回]
女性ホステス2人組 夫バラバラ殺人

 女性に対するストーカーやDVでの犯罪被害は、年々増え続ける一方だ。2012年に当時33歳の女性が元交際相手に刺殺され、犯人の男も自殺した「逗子ストーカー殺人」や、自宅に侵入した元交際相手にメッタ刺しにされた昨年10月の「三鷹ストーカー殺人」は世の中を震撼させ、また元夫からDVを受け、10年間も身を隠していた女性が、元夫に見つけ出されて刺される事件も起こっている。この女性は一時は意識不明の重体になったが、その後一命を取り留めた。

 こうした事態に対し、00年にストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)が、01年にDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)が成立したが、だがしかし、これら“女性を守る”法律ができたのは、ほんの10数年前のことだ。そのきっかけも決して褒められたものではない。ストーカー規制法は99年に起きた「桶川ストーカー事件」で警察が大失態を犯し、大きな批判を浴びたからであり、DV防止法は国連総会の「女性への暴力撤廃宣言」が採択されたことによる。いわば外圧に押されて“しぶしぶ”成立したものだ。警察や行政なども、以前に比べれば迅速に、そして丁寧に対応するようになったといわれる。もちろん「それ以前よりは」という条件付きなのだが……。

 かつて夫婦や恋人の暴力やつきまといに対し、警察は冷たかった。民事不介入、家庭の問題は関知せず、痴話ゲンカとあしらわれて門前払い。世間の認識もまた警察の対応と同様だった。

「男の暴力は当たり前」

 そんな時代に、飲んだくれて働かず、暴力まで振るう夫を殺した妻がいた。それが今回取り上げる「ホステス2人組 夫バラバラ殺人」だ。

■前科9犯、暴力的な男との3人生活

 昭和47年6月25日早朝。名古屋市中区のマンションから2人の女性が慌ただしく出てきた。手にはそれぞれ重そうなボストンバッグを持ち、名古屋駅に向かう。2人はそこから新幹線に乗り、新大阪駅に降り立った。駅のコインロッカーに、ボストンバッグに入れられたゴミ袋を1つ預け、さらに兵庫県・西宮の田園地帯へ向かう。そこで墓参りをした2人は、再び新大阪駅に戻り、残りのバッグの中身もコインロッカーに入れた。そして名古屋に戻っていった――。

 この2人の女性は、前川八代(当時36)と大間真由(28)というキャバレーホステス。年齢は7つ離れているが、妙に気が合い、姉妹のように仲むつまじく一緒に暮らしている関係だった。そして2人は前々日、八代の夫である前川宏(32)を殺していた。新幹線で運んだ2つのボストンバッグの中には、宏のバラバラにされた頭部と半分に切断した胴体が入れられていた。3人の男女の間に一体何があったのか――。

 八代は昭和11年、西宮で青果商を営む家庭に生まれている。家は子だくさんで、5男5女の8番目の子どもだった。貧しい家庭だったが、幼い頃から父親が行商するリヤカーを押すなど家業を手伝う孝行娘で、明るくさっぱりとした性格だったという。地元中学を卒業した八代は、尼崎の洋裁店に勤めるようになった。そんな八代が27歳の時に知り合ったのが4つ年下の前川宏だ。八代はこの年下の男にすぐに夢中になった。とび職だという宏は痩せ型で筋肉質、不良のようなワルの雰囲気があったが、そこも八代が気に入った点だった。

 だが2人の交際に周囲は反対した。宏はとび職とはいっても職人ではなく、人集めばかりしていて、前科持ちだったからだ。10歳の時に窃盗で捕まって以降、前科9犯という立派なワル。立ち振る舞いもまるでヤクザそのもので、両親が反対するのも当然だった。だが、八代は宏にホレていた。昭和39年にはそんな声を無視するように結婚し、実家とも疎遠になっていく。

 しかし周囲の危惧は、すぐに現実化した。宏は仕事もせず1日中ブラブラするだけ。しかも大酒飲みで、酒癖も悪く、頻繁に暴力を振るうようになるのに時間はかからなかった。宏を養うには洋裁店の稼ぎでは足らない。八代は洋裁店を辞め、ホステスの世界に入っていく。宏もまた、八代に水商売に移るよう盛んに勧めたという。その後、夫婦は岐阜市に移ったが、宏は相変わらず働かない。その上、浮気もして酒量はさらに増え、暴力も壮絶になっていった。

何年たっても、逃げ切ることができない

しぃちゃん

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