宋美玄氏×深澤真紀氏特別対談(後編)

“女性誌の呪い”を回避するための、「女子の時代」の情報リテラシー

2014/04/15 11:45
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情報の“抑えのピッチャー”を持つ必要性を訴える深澤氏

■メディアと読者が近づいた時代のリテラシー

宋 何十年前の、上(メディア)から情報が降りてくるという図式じゃなく、今はみんながSNSなどでバラバラに発信している中で、何を選び取るか。リテラシーがないと、結局情報を選び取れない時代ですね。

深澤 読者にまずやってほしいのは、面白そうな記事があったら、見出しだけじゃなくて本文も読むこと。中を読んで面白かったら、裏を取る。ただ検索するんじゃなくて、ある程度説得力のあるオールドメディアで裏を取るとか、少し手間をかける。そして、女性の体については美玄、女の生き方についてなら深澤とか、分野ごとに“抑えのピッチャー”を持ってほしいんです。面白いものを読みつつ、抑えの人の意見にときどき帰って、バランスを取るための分銅としてほしいんです。“抑えのピッチャー”は面白い人じゃなくて、「この人の言うことは落ち着くな」という人。

宋 多くの人の中で「そうであってほしいな」という記事が読まれる。例えば、「妊娠力アップ」とか。妊娠力は下がっていくだけで上がらないんだけど、アップしてほしいわけですよ。あなたにとって都合のいいことは、必ずしも事実ではない。

深澤 それは長い目で見ると、自分を苦しめるんですよね。「都合のいいこと」も、よくよく考えると必ずしも都合がいいとは限らない。妊娠力アップが事実ならば、いつまでも頑張らなきゃいけないんだから。あきらめられるというのは幸せなこと。

宋 結果が伴わないと、「私の努力が足らなかった」と自分を責め続けることになるんですよ。「死ぬまでセックス」という見出しだと男性は買いに走るけど、「これは自分を煽っているな」というものを見極める。真に受けないことが大事です。

深澤 芸人を見るように、メディアを見られるといいですよね。「『週刊現代』は出川哲朗」とか。そうしたら「芸があるな」って思える(笑)。あと、見出しほどの面白いことは、多くの場合は本文には書いてないですから。「騙されたい」っていう潜在意識もあるでしょうけど、しんどくなるまで騙されなくていいんです。
(構成=小島かほり)

深澤真紀(ふかさわ・まき)
1967年、東京生まれ。コラムニスト・淑徳大学客員教授。06年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は09年流行語大賞トップテンを受賞。雑誌やウェブ媒体での連載のほか、情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)の水曜コメンテーターも務める。近著に『ダメをみがく“女子”の呪いを解く方法』(津村記久子との共著、紀伊國屋書店)など。

宋美玄(そん・みひょん)
1976年、神戸市生まれ。産婦人科医。医師として多くの女性を診療する一方、メディアを通して、女性の性や婦人病、妊娠・出産についての啓蒙を積極的に行っている。『女医が教える 本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)はベストセラーに。近著に『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK プレ妊娠編から産後編まで!』(メタモル出版)など。情報番組『とくダネ!』木曜コメンテーター。

『女のカラダ、悩みの9割は眉唾』

「冷えと不妊、逆子」「セックスで美肌」「ピルは副作用が怖い」といった、女性誌が喧伝する“眉唾”情報を、医学的視点から一つひとつ具体的に反論。過度に美化される出産や「膣トレーニング」に代表されるセックス指南に警鐘を鳴らしており、医学的な情報の提供だけではなく、女性自身にカラダと生き方を見つめ直すことを促している。

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『日本の女は、100年たっても面白い。』

明治から平成までの女子の変遷史。青鞜、モガ、オヤジギャル、だめんず、負け犬、こじらせ女子――どのように女性が社会の抑圧と戦い、権利を勝ち取り、こじらせていったのか。平塚らいてう、岡本かの子、白洲正子、幸田文、ユーミン、林真理子、西原理恵子、上野千鶴子、ちきりんら女性文化人の生き方やスタンスに踏み込み、女性の多様な生き方を紹介する。

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最終更新:2014/04/15 12:08
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