ドラマレビュー第35回『明日、ママがいない』

「嘘から生まれた関係は真実になり得るか」『明日、ママがいない』に流れる野島伸司の命題

2014/03/10 17:00
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『明日、ママがいない』(日本テレビ系)公式サイトより

 お化け屋敷のようなおどろおどろしい雰囲気で描かれる児童養護施設が、誤解と偏見を与えると全国児童養護施設協議会から抗議を受け、また、芦田愛菜が演じるポストという名前が赤ちゃんポストに由来することから、熊本県・慈恵病院に放送中止を求められた『明日、ママがいない』(日本テレビ系)。番組スポンサーのCM自粛といった騒動が起きたことでも世間の注目を浴びた本作が、次回で最終回を迎える。

 本作は「コガモの家」と呼ばれる児童養護施設で暮らす子どもたちの物語だ。さまざまな事情から親と離れて暮らしている施設の子どもたちは、お互いを「ポスト」(芦田愛菜)、「ピア美」(桜田ひより)、「ドンキ」(鈴木梨央)、「ボンビ」(渡邉このみ)と、あだ名で呼び合っている。そんな子どもたちが、里親候補の家族の元を訪問することで起こるエピソードから、ひたむきに生きる子どもたちの姿を描き出している。

 脚本は松田沙也、脚本監修は野島伸司。野島の代表作である、小学生の少女に次々と降りかかる困難を描いた『家なき子』(日本テレビ系)と、障害者施設で行われている虐待を描いた『聖者の行進』(TBS系)を組み合わせたような世界観や、「魔王」と呼ばれる施設長(三上博史)が「お前たちはペットショップの犬と同じだ」と言って無理やり「泣け」と強要したり、出てくる大人が全員クズという暗鬱な展開は、野島伸司らしいケレン味に満ちており、少し懐かしいとすら感じた。

 しかし、スポンサーの自粛が決まったあたりから、当初あった暴力的なトーンは後退していく。第5話に入る頃には、里親や大人を悪役として描く描写はほとんど消滅し、テレビドラマとしては無残なものに成り果てたといえる。しかし、抗議によって作品が変質していく過程を追いかけたドキュメントとしては、毎週スリリングで興味深いものだった。

 第6話。保身のために暴力事件を起こしたと疑われているロッカー(三浦翔平)を、施設から追放しようとする子どもたちに対して、魔王は「つまらん大人になるな」と、延々と語りかける。魔王が語る7分弱の長台詞は、抗議してきた団体や視聴者に対する作り手サイドのリアルタイムでの反論としては面白かったが、物語としてはいびつ極まりなく、追い込まれた作り手の断末魔の悲鳴のようだった。それにしても、何故、野島伸司のドラマは激しい反発を招くのだろうか。

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