今年の圧倒的勝者は『ムービー43』

今年のラジー賞は粒ぞろい! ウィル・スミス親子、K・カーダシアンらが受賞

2014/03/03 18:40

 最低主演女優賞候補も実に粒ぞろいだった。ラストが不満という声が多かった『ザ・コール 緊急通報指令室』と「下品・下劣・下衆」というキャッチコピーそのまんまの『ムービー43』で、04年に続く受賞が期待されたハル・ベリー。『ダイアナ』でダイアナ妃を熱演したものの「絶望するくらい似てない」と全英を落胆させたナオミ・ワッツ。アクションスリラー『Getaway』で演じた、ダークなハッカー役が悲しいほど合ってなかったセレーナ・ゴメス。「ラジー賞のために作られたのでは?」と失笑されたエロティックサスペンス『ザ・ハリウッド』で大胆なセックスシーンに挑戦したリンジー・ローハン。だが、最低主演女優賞を獲得したのは男性のタイラー・ペリー。大コケした『A Madea Christmas』で演じた婆さん役が「とてもつまんなかった」と賞に輝いたのだった。

 最低助演女優賞にノミネートされたのは、『アダルトボーイズ遊遊白書』のサルマ・ハエック。業界の嫌われ者なのでノミネートされたというウワサがある『グリフィン家のウエディングノート』のキャサリン・ハイグル。女優デビューを飾った『マチェーテ・キルズ』で、暗殺者役を熱演したものの、その演技に疑問の声が多かったレディー・ガガ。B級どころかC級映画と言われた『Inappropriate Comedy』と、自虐ギャグを炸裂させた『Scary Movie 5』で最低助演女優賞にもノミネートされたリンジー・ローハン。

 かなりの強豪が揃う中、最低助演女優賞に輝いたのは、『Temptation:Confessions of a Marriage Counselor』で演技派女優たちに混ざり、目をパチクリさせながら必死に演技をしていたキム・カーダシアンだった。リアリティ番組の女王、お騒がせセレブとして知られるキムだが、実は女優として認められたいという夢があり、テレビドラマなどに出演している。09年にも『ディザスター・ムービー! おバカは地球を救う』で最低助演女優賞にノミネートされたことがあるが受賞は逃しており、今回は見事受賞。不名誉であるとはいえ、女優キム・カーダシアンとして初の賞獲得となった。

 近年、ハリウッド映画には続編やリメイク、前日譚が多いため、ラジーには「最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞」もある。今回は、『アダルトボーイズ遊遊白書』『Scary Movie 5』のほかに、またかという空気が漂う『ハングオーバー!!! 最後の反省会』、大ゴケした『スマーフ2 アイドル救出大作戦!』もノミネートされたが、受賞はジョニー・デップ主演の『ローン・レンジャー』が獲得した。この作品に関しては「もう二度とリメイクするな!」という声が多く上がっている。

 なお、今年の最低監督賞は『ムービー43』を手がけた13人の監督たちが、最低脚本賞も『ムービー43』を執筆した19人の脚本家たちに贈られた。そして、お察しの通り、最も不名誉な最低作品賞に輝いたのも、『ムービー43』だった。『アフター・アース』『アダルトボーイズ遊遊白書』『ローン・レンジャー』『A Madea Christmas』と、どのノミネート作品が受賞してもおかしくなかったのだが、豪華キャストを揃えたのに、あまりにも奇抜すぎるストーリーが次から次へと繰り広げられるため、「最悪最低」「金返せ」と全米からバッシングされた同作に勝てるものはいなかったということだろう。

 敬遠されるラジー賞だが、サンドラ・ブロックは最低主演女優賞を贈られた翌日、『しあわせの隠れ場所』でアカデミー主演女優賞を獲得しており、ラジーに輝いたからといって、マイナスのレッテルを貼られたわけではない。むしろ、期待し目をかけているからこそ受賞するという傾向にある。

 史上初の親子受賞となったウィル・スミス&ジェイデン・スミスだが、ウィルが理性を取り戻し、親バカを抑えることができれば、きっと素晴らしい親子共演作を製作できることだろう。キム・カーダシアンの演技はもう見たくないという声が多いが、ラジー賞の愛のムチを受け、女優として大化けする可能性もなきにしもあらず……である。なお、今回最多の8部門にノミネートされたものの受賞を逃した『アダルトボーイズ遊遊白書』は、ファンの間では人気がある作品だ。受賞した作品も「好き」という人は多いので、ぜひ鑑賞してみてはいかがだろうか。

最終更新:2015/02/25 17:48
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