[サイジョの本棚]

“若手俳優好き”という一点だけで結ばれた、奇跡的なバランスの友情を描く『2DK』

――本屋にあまたと並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン(サイ女)読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します!

【単行本】
『怒り()』(吉田修一、中央公論新社)

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 八王子で起きた夫婦殺人事件。犯人の若い男は、逃亡中。事件から約1年後に千葉の港町で暮らす父娘、新宿で一夜の相手を探していたゲイ、沖縄で暮らす女子高生、という3つの場所に、それぞれ別の事情を抱えた前歴不詳の男がふらりとやって来る。事件の犯人は、大阪で整形手術をしたところで行方が途絶えている――。

 千葉・東京・沖縄、それぞれの話が目まぐるしくスイッチされ、「3人の男のうち誰かが犯人かも?」と推理しているうちに、ハードカバー上下巻という長さを感じさせないで、引っ張られるように読み進めることができる。そんな純粋なエンタメ小説としての面白さを確保しつつ、タイトルとは逆の怒れない人々に焦点を当てた小説でもある。理不尽な目に遭って本気で怒って悲しんでも、声高に叫べずのみ込んでしまうのは、優しさであり、弱さだ。多かれ少なかれ誰もが持っている、怒りをあきらめてしまったことへの後悔に寄り添い、そして次の一歩へと背中を押してくれる。

【単行本】
『世界をひとりで歩いてみた』(眞鍋かをり、祥伝社)

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 インターネットとパスポートがあれば、1時間程度で海外旅行の手配ができる便利な世の中。旅慣れている人には当たり前かもしれないが、そうでない人にとって「海外旅行」は相当ハードルが高い。この本は、もともと旅行に行き慣れていない側にいたタレント・眞鍋かをりが、「旅行代理店にツアーの手配方法を尋ねる」という旅行以前の段階から始めた、海外一人旅エッセイだ。

 彼女の旅は、女性タレントっぽい美容やグルメに特化した旅でもなく、自分探しもしない、普通の旅だ。わからないことをスマホで検索したり、危険な目に遭ってダッシュでホテルに逃げ帰ったり。それでも単なる旅行記以上の読み応えがあるのは、子どもの時や新社会人の時に味わっていた、“未知の世界に飛び込む面白さ”が詰まっているからだ。不安と緊張が隣り合わせだからこそ、目の前のことに真剣になる。いい年した大人でも、1人でできることが増えれば、やっぱり子どもの時のように楽しい。

 あなたがもし今の生活に慣れてしまって、趣味でも増やそうと思っているなら、「1人で海外旅行」という選択肢もアリなのかもしれない。「タレントのオシャレ旅行記」と思って敬遠したらもったいなさ過ぎる、自分の世界を広げたくなる1冊だ。

【文庫】
『本日は大安なり』(辻村深月、角川書店)

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 大安の日に、地域で一番老舗の人気ホテルで結婚式を挙げる4組のカップル。式場スタッフやほかの3組から見れば、結婚情報誌に載っているような理想の2人だが、語り手が変わるたびに、それぞれのカップルの普通でない事情が明らかになってくる。ウエディングプランナーと気が合わない新婦、双子の姉に複雑な思いを捨てきれない新婦、既婚者であることを言えないまま式当日を迎えてしまった新郎――それぞれの事情が微妙に交錯しつつ、少しずつ「大安」の雲行きが怪しくなっていく。

 悪人ではないけど、単純にいい人とも言い切れない、ひと癖抱えた人々が織り成す長い特別な1日。一方で、仕事を愛するウエディングプランナーの、熱い仕事小説としての一面も。カップルもスタッフも全員、笑顔の裏に秘密やトラブルを抱えていて、読者の予想を少しずつ裏切るような形で明かされていく。そして、その不安やトラブルを解消して結婚するのではなく、抱えたまま幸せになると信じて進むたくましさに、最後には不思議と爽快感が残る。

【コミック】
『2DK 2013 WINTER』(竹内佐千子、講談社)

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 職業も性格もファッションも全然違うけど、「イケメンミュージカルや特撮俳優好き」という一点で意気投合している女性2人が、ルームシェアを始める。『2DK』は、2人の生活を通して、アイドルオタクの日常あるあるが描かれたコミックだ(WEB連載中)。

 ファミレスで、劇場で、2DKの部屋で、ほとんど全編にわたっていい意味でダラダラと続く2人のやり取り。日常会話から自然とオタクトークになっていたり、握手会シミュレーションを始めたり。ドラマチックな展開はないけれど、好きなものを分かち合い、会話自体を楽しんでいる人の幸福感にあふれていて、ついつい何度も読み直したくなる。

 なにかを過剰に好きになるのは、適度に趣味を楽しめる人には理解し難いし、はたから見るとちょっと滑稽だ。だからこそ、その滑稽さを共有できる相手とは、ほかのさまざまな違いを超えて距離を縮めることもできる。大人になればなるほど、友達になる前に、仕事や年齢、彼氏の有無やファッションのカテゴリーまで無意識にチェックして、相手のタイプを決めつけてしまいがちだ。『2DK』は、そんな“格付け”を取り払ったところから生まれる、女同士の関係の楽しさが描かれた一冊だ。
(保田夏子)



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