ドラマレビュー第33回『緊急取調室』

男社会における中年女性の孤独を描く、刑事ドラマ『緊急取調室』の特異性

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『緊急取調室』(テレビ朝日系)公式サイト

 でんでん、大杉漣、小日向文世、田中哲司、草刈正雄、篠井英介。そうそうたるベテラン俳優が紅一点の天海祐希を取り囲む『緊急取調室』(テレビ朝日系)は、骨太の刑事ドラマだ。優れた交渉術を持つ真壁有希子(天海)は、バスジャック犯との交渉に失敗した責任を負わされる形で、SIT(特殊犯捜査係)の主任から「緊急事案対応取調班(通称・キントリ)」へと配属される。真壁を待ち受けていたのは、菱本進(でんでん)、中田善次郎(大杉)、小石川春夫(小日向)といった一癖も二癖もある取り調べ専門の刑事たちと、管理官の梶山勝利(田中)だった。

 そして、そんなキントリにライバル意識を燃やし、事あるごとに突っかかってくるのが、殺人捜査一係の課長・相馬一成(篠井)と監物大二郎(鈴木浩介)と渡辺鉄次(速水もこみち)。真壁の上司・郷原政直(草刈)は、彼女を見守りながらも、何か秘密を抱えている。速水演じる渡辺が最年少の30歳で、あとは見事におっさんばかりのキャスティングだ。アクの強い“おっさん”刑事たちに囲まれて、一歩もひるむことなく事件に挑む“おばさん”刑事が、お互いに憎まれ口を叩きながら事件を解決していく姿は実に爽快である。

 キントリは、取り調べの可視化を前提に作られた取り調べ専門の部署だ。取調室にはカメラが設置され、全ての行動が記録されているため、暴力や脅迫は許されない。そんな条件下で真壁たちがどうやって容疑者の口を割らせるのか? それが本作最大の見どころだ。 犯人のアリバイ捜査で室外の場面も一応映るものの、物語は取調室という密室で大きく進行する。似顔絵が得意で口調が乱暴な菱本や、冷静に相手を追いつめていく小石川などが、それぞれの特技を駆使して、役割分担をしながら容疑者を追いつめていく。

 第4話までに犯人役で登場したのは、高嶋政伸(過去に冤罪容疑をかけられた爆弾犯)、林家正蔵(殺人容疑をかけられ黙秘を貫く電気屋の店主)、安達祐実(DV夫を殺害した主婦)、神保悟志(贈収賄疑惑の政治家)。毎回、ゲスト俳優の個性が生かされており、役者の芝居に重点を置いたディスカッションドラマとなっている。

 脚本を担当しているのは、初期の代表作『きらきらひかる』(フジテレビ系)を筆頭に、社会派作品からコメディまで幅広いジャンルを手がけてきた井上由美子。完成度の高い作品を執筆する脚本家として知られており、第5話「3人のうるさい女」も実に井上らしい骨太の物語だった。

 春日小夜子(根岸李衣)、望月芳江(茅島成美)、松井蘭子(西尾まり)の3人の主婦は、指名手配されていた詐欺グループの幹部・真木祐介(竹財輝之助)の殺害現場目撃者として取調室に呼ばれる。3人は犯人の顔の特徴を話すが、証言があまりに具体的で三者一致していることに真壁は疑問を覚える。現場に設置された監視カメラを調べても、彼女たちが話す犯人の姿は映っておらず、やがてそれら証言が全て嘘だったことが明らかになる。

 真壁は、一計を企み、3人を同時に容疑者として呼び寄せる。3人は顔見知りであることを隠していたが、やがて真壁の挑発で仲間割れを起こし、激しい口ゲンカを始める。そして、真壁の「そうやって全部、言っちゃったらいいじゃないですか。みなさんは孤独だった。私も中年のおばちゃんです。だからわかりますよ。女は結婚すると、友達とは疎遠になり社会から遠ざかる。ランチだ、バスツアーだって言ったって、悩みを話せる人はいない。だって、人より不幸だと思われたくないから。そんな時、優しい男性がそばに来て話を聞いてくれたら心揺れるよ。おそらく、こんな仕事をしている私でもね」という言葉が決め手となり、3人は事件の真相を告白する。

 3人は、真木に日々の寂しさにつけ込まれて、宝石に投資させるデート商法に騙された被害者だった。行方をくらました真木を探すうちに知り合った3人は、連絡を取り合い、真木の事務所を突き止めて乗り込む。しかし、真木はすでに殺されており「家族にバラす」と犯人に脅迫されて、嘘の証言を行ったのだ。

 井上は『SCANDAL』(TBS系)や『おトメさん』(テレビ朝日系)でも、主婦の孤独を描いていたが、第5話は、この2作を裏側から描いたような物語だった。子どもを守るためにDV夫を殺害した母親を描いた第3話「嘘まみれの女」も、安達祐実の怪演もあり印象深かったが、女性の事件を描く時の方が井上の筆がノッているのがわかる。作中ではシングルマザーの真壁が、子どもたちと触れ合う日常が毎回描写され、母としての一面が強調されている。

 おそらく井上が本作を通して描きたいのは、男社会の中で抑圧されている孤独な中年女性たちの生きざまなのだろう。それはキントリでの、おっさん刑事VS真壁という構図に強く反映されている。そして、そんな井上の骨太な作風に、天海のぶっきらぼうな芝居は実にハマっている。真壁有希子は天海にとって、新たな当たり役となりそうだ。
(成馬零一)

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