ニベアは普通のクリーム!?　化粧品開発者がニベアとドゥ・ラ・メールを徹底検証

――どうして値段に差が出るのでしょう？

尾崎　ドゥ・ラ・メールに比較的多く配合されているであろう、褐藻エキス、ライム果汁が価格に影響を与えていると考えられます。褐藻エキスはグリセリンよりも美容効果があり、高額です。ドゥ・ラ・メールの場合、これらの成分が独自製法で、手間が掛かっていると思われますので、その「手間賃」として価格に反映しているのかもしれません。また、海外からの輸入品なので、輸送費・税金コストが価格に含まれているとも考えられます。

　どちらもクリームとして粗悪なわけではなく、肌を守る保湿クリームとしては良いと思います。ただし、石油由来の成分は栄養がありません。どちらのクリームも石油由来成分が大半ですので、栄養素は少なめと判断できます。

――成分的にはそれほど差がない場合、多くのユーザーはニベアを選ぶように思いますが……。

尾崎　一概に、そうとは言えません。肌を保護する機能重視の方にはニベアが向いていると思います。ただ、化粧品の場合は心理的なものが肌に働きかける効果も高く、「高価なクリームを使っている」という気持ちが、結果肌に良い効果をもたらすことは多々あります。なので、特に心が肌に影響しやすい人は、ドゥ・ラ・メールが向いていると思います。「かわいい容器だと気持ちが上がる」「ブランドものだと信頼できる」という理由で日ごろ商品を選ぶタイプの方であれば、成分の化学的な効果以外のプラスα効果が得られるでしょう。

――ネットなどの口コミで広がっている、ニベアの使い方についても、検証をお願いします。まず、「ガッテン塗り」と呼ばれる、化粧水を塗らずにニベアだけを塗る方法は、本当に肌にいいのでしょうか？

尾崎　悪くはありません。ニベアは外部刺激から守る、水分の蒸発を防ぐというつくりですので、もともと肌に水分保持力がある人であれば、刺激によるダメージがなくなり、良い状態が保てると思います。また、スキンケアの仕方が悪くてダメージを与えてしまっていた人がニベアだけにした場合も、そのダメージがなくなるので肌が徐々に回復していくはずです。ただし、肌が既に老化し、自己回復力が衰えている方、メイクなどで肌に負荷がかかっている人は、ニベアだけでなくほかのケアも併せて行う方が効果的です。

――目元に塗ると、まつ毛の育毛に効果があるというウワサもありますが……。

尾崎　ニベアには、まつ毛の育毛にアプローチする成分は配合されていませんが、配合されているマイクロクリスタリンワックス、パラフィンなどはもともと固形の成分なので、まつ毛をコーティングし、透明なマスカラのような役割を果たし、まつ毛が太くなったように見えている可能性は考えられます。

――ニベアに、リキッドorパウダーファンデーションを混ぜて、コンシーラーとして使うというのは効果的？

尾崎　ファンデーションに混ぜると油分が増しますので、のびが良くなり、厚塗りになりにくく、塗りやすくなるという効果は期待できます。また、石油由来のオイルは肌の上でずっとオイリーな状態を保ちますので、独特のツヤが出やすくなります。ですが、化粧品開発者としては、化粧品を自分の判断で混ぜて使うのはオススメできません。成分同士の相性次第では悪い影響を与える可能性がゼロではありませんので、別々に使って欲しいというのが本音です。

――ではドライヤーなどのドライ前に髪の毛に塗って、流さないトリートメントとして使うのは？

尾崎　アリですが、みなさんが思う美容効果（栄養成分）は期待できません。ニベアを塗ることで髪に油分とシリコンで膜ができ、指通りが良くなります。外部刺激からも守ってくれますので、冬の乾燥した時期などに使うのは悪くないと思います。多く塗ってしまうとベタつくので、少量使いがベター。ただし、外部刺激によって受けたダメージを修復する力はないので、刺激を受けやすい日中向きの方法だと思います。

尾崎幸子（おざき・ゆきこ）
化粧品開発者／コスメ成分アドバイザー
文系の大学を卒業後、人材ビジネスに10年間従事するも、シャンプーのPRに関わったことを機に化粧品に興味を持ち、大手化粧品メーカーの開発などを手掛ける、化粧品開発コンサルタント・岩田宏氏に弟子入り。化学の基礎から化粧品処方までを学び、2013年11月、自ら開発したジェネリックコスメ「MUQ」を発売。自身が皮膚疾患を抱えていることもあり、体に優しく、正しく機能する化粧品を現在も開発中。日々ビーカーを片手に実験にいそしみながら、客観的に正しいコスメ情報を発信すべく、「コスメ成分アドバイザー」としても活動中。
公式サイト

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