[女性誌速攻レビュー]「nina’s」1月号

「nina’s」に漂う、“手間暇をかけた暮らしこそ幸せのカタチ”という強迫観念

2013/12/24 21:00
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「nina’s」2014年1月号/祥伝社

 子育て中のオシャレママの愛読誌「nina’s」(祥伝社)、今号の表紙はモデルの豊田エリーです。クセがなく、誰からも好かれるキャラクター、面倒くさそうな夫(俳優・柳楽優弥)もうまいこと操縦していそうな、まさに今はやりの“良妻”といった風情。表紙インタビューでも「今日も私が撮影で朝早かったので、保育園にはパパが行ってくれました」「娘もパパのことが大好きですよ」など要所要所で夫を立てていました。2013年といえば、ドラマ『半沢直樹』(TBS系)の花や、田中将大投手の妻・里田まいら“夫を陰で支える良き妻たち”がメディアで大モテ。もちろん現実には良妻などチッチキチー(※「そんな奴おらへんで」の意)ですが、ここ「nina’s」においてはそんな昭和型良き妻こそが理想とされております。素直でちょっぴり天然で、家族を温かく包み込むお母さん……しかもおしゃれ!「nina’s」ママたちは、そんな幻影を追いかけているのです。

<トピックス>
◎ママたちの「ほんとに良かった」HIT AWARD
◎早起きしたい おいしい朝ごはん
◎おしゃれママの「ウケ服」リアルコーデ

■いい妻のアリバイたるナチュラル志向

 特集の前に、まずはこちらの良妻。松嶋尚美の連載「お試しまつしま」にロンブー亮とともに登場するのは、一色紗英です。いつのまにか結婚・出産・渡米し、いつのまにか「物言うカリスママ」といったポジションを手にしている一色。「きょうだい子育て」をテーマにした鼎談でも「子どもたちは3人で常に感情をシェアしてて、誰かと意識交換をするのが日常的にできているのは、一人っ子にはない良さ」「同じように育てても性格が全く違うから、それぞれの個性に合わせたアプローチが大切ですね」など、ご神託のような育児論を展開させていました。

 単なるきょうだい子育ても、ナチュラルママの手にかかると、意識交換だの感情のシェアだのエラく高尚なことに聞こえてくるから不思議。そしてこのような“大変なことしてます感”が「nina’s」では非常に重要なのです。今号の特集「“ほんとに良かった”ママたちのHIT AWARD」には、「nina’s」的良妻のアリバイたるグッズが多数紹介されています。

 たとえば第1位に選ばれた「ハーブ&フルーツシロップ」は、“市販のジュースではなくナチュラルで身体にいい手づくりシロップ”というのがポイント。さらに「頻繁に飲ませてるわけじゃないですよ。喉が痛いとか風邪ひきそうっていう時に、お薬代わりみたいに飲ませるくらい」という誰に向けられてるのかわからない言い訳も。手で混ぜることで発酵が進むという酵素シロップ派のママは、「常在菌が酵素を育てる」と手を洗う石鹸までご指定のものがあるそうです。石鹸といえば第3位には「スゴ落ち洗剤」が選ばれていましたが、ここに出てくるものも無添加、界面活性剤ゼロのガチなナチュラル派のもの。恥ずかしながら筆者が一度も見たことのないパッケージが並んでいます。

 とどめは「早起きしたい おいしい朝ごはん」という企画。グラノーラは手づくりで、チャイは豆乳を使って滋味を、パンケーキには米粉、もちろんご飯は雑穀米。「nina’s」憧れのクリエイティブママたちの一週間分の朝ごはん写真は、栄養バランス、色合い、テーブルコーディネートに至るまで圧巻の一言です。お仕事お忙しいでしょうに「有機穀物で作った天然酵母のドライイーストタイプで作ったピザ」とか「全粒粉豆乳ケーキのメイプルシロップがけ。使ったベーキングパウダーはアルミニウムフリーのもの」とか、朝食に向けられたパワーがハンパない。「nina’s」で根強く信仰されている、“手間暇をかけたナチュラルな暮らしこそ、幸せな家族のカタチである”という教え。もしかしたらここまで大げさにやらないと、母親としての存在意義を認められないのかもしれません……。

nina's (ニナーズ) 2014年 01月号 [雑誌]
朝飯から放出する自我に食あたり起こしそう
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