ドラマレビュー第27回『ごちそうさん』

視聴率24%超え『ごちそうさん』が探る、押し付けでも暴力でもない“善意”のあり方

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『連続テレビ小説 ごちそうさん Part1』(NHK出版)

 『ごちそうさん』は下半期のNHK朝の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)。上半期の朝ドラ『あまちゃん』(NHK)の影響力があまりに大きすぎたため、逆境からのスタートとなったが、視聴率は第1週から平均視聴率21%を超えており、その後もじわじわと人気が盛り上がり、第11週では平均視聴率24.03%を記録した。

 近年、「朝ドラ」は次々と話題作を生み出している最も勢いのあるドラマ枠だが、一番の枷はヒロインを健気で善良な女性として描かなければならないということだ。舞台設定が多様化し、自由度を広げつつある朝ドラだが、この枷だけは今も変わらない。それ故、ヒロインの見せ方はもっとも脚本家の個性が問われる局面となっている。そんな中、『ごちそうさん』では、朝ドラヒロインの善意そのものが作品のテーマとなっている。

 明治時代、東京・本郷にある西洋料理店「開明軒」を営む卯野家に生まれため以子(杏)は、食べることが大好きな女の子。女学生のめ以子は下宿生としてやってきた帝大生の西門悠太郎(東出昌大)と恋に落ちて、やがて結婚。女学校卒業とともに西門家に嫁ぐために、悠太郎と共に大阪へと向かう。しかし、西門家の人間関係は複雑にこじれており、父親は失踪している。死んだ母の後に後妻として入った元芸者の静(宮崎美子)と、長女で出戻りの和枝(キムラ緑子)の仲は険悪、六女の希子(高畑充希)は2人の間に挟まれて、自己主張のできない内向的な性格に育っていた。そんな彼女たちの間で、め以子は苦しむことになる。

 脚本家は森下佳子。『JIN―仁―』、『とんび』(ともにTBS系)などの、感動を強く押し出す作品の印象が強く、脚本家としてはあまり良い印象を持っていなかった。しかし、一見ベタベタの人情ドラマに見える『ごちそうさん』を支える見事な構成力と論理的な展開には、毎回唸らされる。言うなれば、理系の橋田壽賀子といった感じだ。

 『ごちそうさん』はめまぐるしいドラマだ。女学校の青春を描いた『はいからさんが通る』(講談社)のような作品だと思っていると、1カ月後には大阪の西門家に嫁入りしため以子が義理の姉にあたる和枝に厳しいイジメを受けるという、橋田壽賀子的なホームドラマへと変わっており、現在では、関東大震災で家と家族を失い、関東から避難してきた人々の炊き出しをめ以子が行う「震災編」へと突入している。まるで1カ月単位でドラマのジャンルが入れ替わっていくようで、それだけに先が読めない。

 とはいえ、「食」を通して人と人の関わり方を描くというスタンスは常に一貫しており、話数を重ねるごとにテーマは深みを見せている。圧巻だったのは関西に舞台を移してから登場した、和枝とめ以子の嫁・小姑バトルの見せ方だ。嫁入りした家で姑からイジメを受けていた和枝は、子どもを事故で亡くしたことがきっかけとなり、家から追い出され西門家に出戻りしていた。失踪した父親に代わり西門家を取りまとめていたが、め以子に対して自分が受けた嫁いびりを繰り返してしまう。

 和枝の嫁いびりに耐えながら無理難題を解決し、め以子が主婦として成長して西門家での信頼を勝ち取っていくほど、和枝は居場所を奪われ精神的に追い詰められていく。結婚詐欺に遭ったことから自暴自棄になり自殺しようとした和枝に対し、め以子は何とか元気になってもらいたいと健気に振舞うのだが、め以子の善意こそが、和枝にとっては最大の暴力となっていたことを本作は隠さない。

 料理をモチーフにしたドラマは、料理人が主人公のものから『孤独のグルメ』(テレビ東京系)のようなうんちくものまで含めて数多いが、『ごちそうさん』が面白いのは、おいしい料理を食べれば問題は解決して、みんなが仲良しになるという料理ドラマの基本フォーマットを崩していることだ。

 序盤で印象的だったのは、め以子の母親のイク(財前直見)が、「押し付けがましいんだよ、あんたの料理は!」と父親の大五(原田泰造)に激怒する場面。映画『かもめ食堂』や『南極料理人』のフードスタイリストだった飯島奈美が参加していることもあり、本作の料理はシズル感のあるおいしそうなものばかりだ。しかし、時にその鮮やかな色使いがグロテスクに映るのは、相手の立場を考えない料理はどんなにおいしくても、押し付けがましく暴力的なものになってしまうということに、作り手が自覚的だからだろう。

 それはそのまま、め以子の善意にも当てはまる。とはいえ、善意自体を否定してしまっては、物語は成立しない。

 第1話冒頭、終戦直後の焼け野原で炊き出しをするめ以子が描かれたのだが、あの場面がドラマの終着点だとすれば物語はまだ折り返し地点。まだ描かれていない戦争も含めて、今後も多くの山場が用意されているのだろう。

 相手の気持ちを気遣った上で、押し付けがましくなることなく善意を施すことができるのか? という難しい問題に『ごちそうさん』は正面から立ち向かっている。
(成馬零一)

渡鬼エッセンスがいい味出してるそうですぜ

しぃちゃん

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